人形浄瑠璃。世話物。3巻。近松門左衛門作。1718年(享保3)11月20日,大坂竹本座初演。京の商人小町屋惣七は,下関から毛剃(けぞり)九右衛門の率いる海賊船に乗り合わせ,密輸の現場を見たため海中に投げこまれるが,運よく助かり博多柳町の奥田屋へ馴染みの遊女小女郎を訪ねる。そこへ大儲けをした毛剃一味も繰りこみ,無事な惣七の姿を見た毛剃は,その運の強さを見こんで仲間に入れようとする。惣七も小女郎身請けの金欲しさに同意する。惣七と小女郎は京に住居を構えるが,彼の行状を案じた父惣左衛門は彼らの留守中に家財を売り払ってしまう。戻った惣七はおどろくが,そこへ毛剃が訪れ,あずけた割符を返せとせまる。惣左衛門は隣家の壁から割符を投げ入れ,毛剃に戻す。父の意見によって惣七と小女郎はおちのびるが,やがて手がまわり,惣七は自害して果てる。
享保3年閏10月21日から3日間,高麗橋で密輸人が鼻をそがれてさらされた後,追放になった事件を題材にした作品。小女郎の役は,古くから言いはやされた名をかりてつくられたものであろう。海上の船,廓場,世話場と舞台面の変化がある。とくに〈奥田屋〉は,恋を貫くために悪の道へ入っていく惣七の人間像が,やつし事の手法をとり入れながらよく描かれている。惣七夫婦が父惣左衛門と別れる場は《冥途の飛脚》の換骨奪胎で,対面できない親子の別離が展開する。歌舞伎化されたものではまず,1776年(安永5)7月大坂小川吉太郎座(角の芝居)の並木十輔作《和訓(やまとことば)水滸伝》が知られるが,その系統をひく改作物が,近年では《恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし)》,ときには原題の《博多小女郎波枕》で上演されることが多い。元船を舞台いっぱいに飾る序幕が見もの。大体において惣七の流転を描く原作と異なり,毛剃中心の演出が幕末からとられ,元船の上での汐見の見得をはじめとして,廓場での剛胆でいて愛嬌のある演技が興味の中心となっている。
執筆者:近藤 瑞男
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