デジタル大辞泉 「厳し」の意味・読み・例文・類語
いつく・し【▽厳し/▽美し/▽慈し】
1 神や天皇または貴人の威力が強く激しいさま。いかめしくおごそかである。
「そらみつ大和の国は
2 容姿に気品があるさま。端正であるさま。
「―・しき男子をまうけけり」〈伽・一寸法師〉
3 《室町時代ごろから「うつくし」と混同して用いられて》美しい。きれい。
「卯の花の…垣根に咲き乱れたるは、―・しうおもしろければ」〈仮・露殿・下〉
いか・し【▽厳し】


「
[補説]確実な用例が、上記のほか「厳し
( 1 )「いつ(厳)」の派生語で、本来は神や天皇の威厳を示し、平安朝においても皇族に用いられる例が多い。元来は美麗の意味はなく、「源氏物語」においても基本的にはそれが守られているが、端麗な女性美としても通用する一面も生じている。
( 2 )室町時代以降、大切にする「いつく」や慈愛の「うつくし」との混同が生じ、更にそれが進むと「いつくしむ」という動詞まで派生し、逆に本来的な霊威の概念は後退する。
( 1 )形容詞シク活用「きびし」の古い活用。→「きぶい」の補注。
( 2 )「書陵部本名義抄」に「キビウシテ」の「ビ」の右に、「ビシウシ」の書き込みが見られる。