広島湾の西南にあり、対岸と
地名はまず「日本後紀」弘仁二年(八一一)七月一七日条に「伊都岐島神」と神名としてみえ、島の名であると同時に神の名であったことが知られる。一方、厳島は宮島ともよばれるが、これは時代が下り、年代のはっきりしているものでは「高倉院厳島御幸記」の治承四年(一一八〇)三月二五日に「宮島ちかくなりにけりと、きよき心をおこす」とみえるのが早い。ほかに「伊津岐島」(長寛勘文)、「伊調島」(今昔物語集)、「伊津久島」(山槐記)などとも記される。
平清盛の厳島信仰にまず注目される。清盛は久安二年(一一四六)から途中一時期を除いて保元元年(一一五六)までの間安芸守に在任したが、その間に現地の在庁官人や社寺と関係が生じ、とりわけ安芸国一宮の実質を備えつつあった厳島と結ばれる端緒があったと思われる。永暦元年(一一六〇)八月、清盛は自ら厳島に参詣、この時すでに清盛にとって厳島神に対する帰敬は熱烈なものがあった。その後、治承四年一〇月までに文献で明らかなものだけで一〇回の厳島参詣をしており、異常なまでの信仰を寄せている。
中世の厳島で注目されるのは、神主職がそれまで一手に掌握していた地方豪族の佐伯氏を離れて鎌倉御家人の手に移ったことと、社家の厳島常住が始まったことである。根強い勢力をもつ佐伯氏一族のなかに承久の乱に際して京都方に味方したものがあったので、幕府は神主職を佐伯氏より没収して周防前司藤原親実に与えた。その後、天文一〇年(一五四一)までおよそ一六代三〇〇年余りの間、親実の子孫が世襲した。神主家は南北朝から室町初期にかけて、安芸国の屈指の勢力をもち、領地拡大を図ったが、結局大内氏の勢力圏に含まれて被官関係を結び、近隣の武田氏をはじめとする国人勢力に対抗した。しかし自ら在地に強力な領主権をうちたてることはできず、大内氏・武田氏の両勢力の間に介在し、さらに尼子・毛利・吉川・村上諸氏らの盛衰に応じて対応を強いられた。永正五年(一五〇八)一二月、神主興親は、大内義興に従って京都滞在中病没し、その正統が絶えた後、神主職を競望する神領衆の小方加賀守と友田上野介興藤の勢力が数年間対峙したが、大永三年(一五二三)興藤が武田氏の援助を得て神主職を得た。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
広島県南西部、広島湾西部にある島。厳島神社の所在地で宮島(みやじま)ともいう。廿日市(はつかいち)市に属す。面積30.39平方キロメートル。幅600メートルの大野瀬戸を隔てて本土と対する。地質は斑(はん)状黒雲母花崗(くろうんもかこう)岩で、全山原生林で覆われる。最高所は弥山(みせん)(529.8メートル)で、頂上からの展望はすばらしい。また付近一帯は「瀰山(みせん)原始林」として国の天然記念物に指定されている。弥山の北麓(ろく)に厳島神社が鎮座し、門前町を形成する。古来、「安芸の宮島(あきのみやじま)」として日本三景の一つに数えられる風光の地で、瀬戸内海国立公園の一部でもあり、特別史跡・特別名勝にも指定されている。厳島神社の建造物群と前面の海、背後の森林とは、1996年(平成8)、世界遺産の文化遺産として登録された(世界文化遺産)。
島全体が神霊の地とされ、神社に仕える者以外の居住が始まったのは戦国時代からである。しかし神聖な島に対する掟(おきて)は厳しく、島内で五穀をつくること、機(はた)織りなどは禁じられ、出産、葬式にもいろいろな規制があった。江戸時代にも特別地域として扱われた。島内に広島大学附属宮島自然植物実験所、歴史民俗資料館、水族館などがある。また、北東の海岸沿いに包ヶ浦(つつみがうら)自然公園がある。本土側の廿日市市宮島口から宮島桟橋まで連絡船で結ばれ、広島港にも高速船が通じる。特産品として杓子(しゃくし)や、ろくろ細工が知られる。人口2193(2000)。
[北川建次]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…宮城県の松島,京都府の天橋立(あまのはしだて),広島県の厳島(いつくしま)を日本三景と称している。松島や天橋立はすでに平安時代中期までに,京都の貴族たちには広く知られた名勝地で,歌や名所絵のよき題材とされていた。…
※「厳島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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