厳島神社の裏山、島の中で最も高く、山頂は五二九・八メートル。山名は鐘撞堂の釣鐘銘に「伊都岐島弥山水精寺奉施入、治承元年丁酉二月日」とあるのが古いが、この銘は後刻ともいわれる。今川了俊の「道ゆきぶり」は「御仙」と記す。「厳島道芝記」は
弥山は原始林に覆われており、「弥山原始林」として国の天然記念物に指定されている。山頂近くは巨岩が連なり、古くから山岳信仰の対象とされ、山間に苦行を積み神霊に交わる修験や聖の道場となった。「平家物語」や「沙石集」に空海と厳島の関係が語られているが、空海が厳島に詣でたことや弥山を開いたなどの伝承は確かめえない。前記の治承元年(一一七七)とか「弥山水精寺」などの銘文をもつ釣鐘もそのまま信ずることができず、鎌倉期の「沙石集」、一遍聖絵、「とはずがたり」などに弥山や島内の僧坊について一言も言及していないことは、この頃はまだ注目されるような寺堂・建物が山頂付近になかったことを示すものと考えられる。もっとも頂上付近に弘安六年(一二八三)以前、磐境をきりひらいて霊坊が設けられ、三口の比丘僧が置かれたらしいことが、年不詳の等身白檀大日如来像立願文(野坂文書)にみえる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
仏教の宇宙観にもとづく想像上の山岳である須弥山(しゆみせん)の略称であり,仏教では須弥山は宇宙の中心にそびえる高山とされるが,この仏教的宇宙観にもとづいて命名された大峰山(おおみねさん)の弥山,厳島(いつくしま)の弥山などがよく知られている。なかでも厳島の弥山は,今日では厳島神社の信仰に圧倒されてその影が薄くなっているが,本来は神の島とされた厳島の中心的な存在であった。また新潟県と長野県の境にある妙高山(みようこうさん)も,古くは名香山と呼ばれていたものが,須弥山の影響によって妙高山と呼ばれるようになったという。山岳を世界の中心とする考え方はキリスト教のゴルゴタの丘,イスラムのカーフ山などにもうかがうことができる。
→須弥山
執筆者:宮本 袈裟雄
奈良県吉野郡にあり,紀伊山地の中央部を南北に走る大峰山脈中の一峰。標高1895m。近畿地方の最高峰八剣(はつけん)山のすぐ北にあたり,山体は中生層に貫入した大峰酸性岩からなる。山腹はシラビソやトウヒの原生林で覆われ,八剣山に至る稜線の南東側は仏経ヶ岳原始林として,付近のオオヤマレンゲ自生地とともに国の天然記念物に指定されている。山麓を北西に流れる弥山川は,高さ60mの大滝がかかる双門(そうもん)峡谷を形成している。信仰の霊峰とされ,山頂に天河(てんかわ)弁財天社の奥社があるほか,修験道の〈奥駆け〉の修行場でもあり,古くから宿泊のための小屋(弥山小屋)が設けられていた。吉野熊野国立公園に属する。
執筆者:水山 高幸+清水 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広島県南西部にある厳島(いつくしま)の最高峰(530メートル)。モミ、ツガなどの樹林に覆われ、原始林は国指定天然記念物。また、厳島神社とともに世界文化遺産に登録されている。古くから山岳宗教の地で、山頂付近には大日堂、三鬼(さんき)堂、御山(みやま)神社、求聞持(ぐもんじ)堂などの建物がある。紅葉(もみじ)谷、大元(おおもと)公園からの登山道のほか、紅葉谷から獅子(しし)岩までロープウェーが通じている。山頂には展望台があり眺望がよい。
[北川建次]
奈良県中央部、吉野郡天川(てんかわ)村と上北山(かみきたやま)村の境界にある山。標高1895メートル。大峰(おおみね)山脈の中央部にあり、古くより山上(さんじょう)ヶ岳から前鬼(ぜんき)に至る奥馳道(おくがけみち)にあたり、南西に八剣山(はっけんざん)、明星(みょうじょう)ヶ岳が続く。山頂付近は深い針葉樹林に覆われた平坦(へいたん)地で、弥山神社と弥山小屋がある。南東端の国見八方睨(くにみはっぽうにらみ)の展望は雄大である。
[菊地一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…鳥取県西部の火山。標高1729mの剣ヶ峰(けんがみね)は中国地方の最高峰(主峰弥山(みせん)は1711m)。日本海に近くそびえ,山容はきわめて雄大で伯耆(ほうき)富士の名がある。…
…広島県佐伯郡に属する厳島町であったが,1950年に現町名に改めた。島の大部分は弥山(みせん)(530m)を主峰とする険しい花コウ岩山地で,海岸には〈安芸の宮島まわれば七里,浦は七浦七恵比寿〉と謡われる小規模な砂浜がある。厳島神社の門前町として発達した中心集落は弥山北麓の海岸にある。…
…御(お)岳ともいい,南東方の華(げ)山(713m)とともに豊田県立自然公園の一部で,国の名勝に指定されている。頂上を弥山(みせん)と呼び,古くから霊山として信仰の対象となっていた。樹林がうっそうと茂る南側の中腹に十一面観音を本尊とする真言宗の名刹(めいさつ)修禅寺があり,夏は渓流にカジカの声を聞き,秋は紅葉が美しい。…
…山口県北東端,玖珂(くが)郡の町。人口5442(1995)。広島県に接し,県境を小瀬川が,中央を錦川の支流生見(いきみ)川などが流れる。北端に羅漢山(1109m)がそびえ,町域のほとんどが山林である。江戸時代には岩国城下から玖珂郡北部を通り,石見(いわみ)国を抜けて萩城下に至る石州街道が通じており,街道沿いの渋前(しぶくま)には享保期(1716‐36)ころまで市が開かれていた。山林が多いため農家の経営規模は小さく,米作を中心に畜産,シイタケ栽培が行われ,特産に岸根(がんね)栗,茶がある。…
※「弥山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...
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