反る（読み）ソル

デジタル大辞泉

そ・る【反る】

［動ラ五（四）］
１ まっすぐな物、平らな物が弓なりに曲がる。「表紙が―・る」「板が―・る」
２ からだ、またはその一部が後ろの方へ弓なりに曲がる。のけぞる。また、弓なりに曲げる。「指が―・る」「―・って歩く」「背中を―・らせる」
[可能]それる
[類語]曲がる・たわむ・しなう・たわわ・折れ曲がる・屈曲する・屈折する・曲折する・湾曲する

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

かえ・るかへる【反・返・帰・還】

1. 〘 自動詞 ラ行五（四） 〙
2. [ 一 ] ( 反・返 ) 事物や事柄の位置が逆になる。また、物事の状態が変わる。
   1. ① ひるがえって裏が表側に出る。
      1. [初出の実例]「天の河霧立ち上るたなばたの雲の衣の飄(かへる)袖かも」(出典：万葉集（８Ｃ後）一〇・二〇六三)
      2. 「雲かへる風はげしううちふきて」(出典：更級日記（1059頃）)
   2. ② ひっくりかえって上が下側になる。また、横倒しになる。くつがえる。
      1. [初出の実例]「大船を漕ぎのまにまに磐(いは)に触れ覆(かへら)ば覆(かへれ)妹によりては」(出典：万葉集（８Ｃ後）四・五五七)
      2. 「山もひびきて地もかへりぬべし」(出典：宇治拾遺物語（1221頃）一〇)
   3. ③ 物の形や質などが変わる。
      1. [初出の実例]「茨 田池の水変(カヘリ)て藍の汁の如く」(出典：日本書紀（720）皇極二年八月（岩崎本訓）)
   4. ④ 染色などがうすくなる。色があせる。
      1. [初出の実例]「菊の花うつる心をおく霜にかへりぬべくもおもほゆる哉〈よみ人しらず〉」(出典：後撰和歌集（951‐953頃）恋四・八五二)
      2. 「うす色の、裏いと濃くて、上はすこしかへりたるならずは」(出典：枕草子（１０Ｃ終）三六)
   5. ⑤ 鷹が成長して、羽の斑点のさまが変わる。〔藻塩草（1513頃）〕
   6. ⑥ 反切(はんせつ)によって漢字の音があらわされる。
      1. [初出の実例]「嬴ここのかえしはりなり。るいは又りとかえるぞ」(出典：玉塵抄（1563）六)
3. [ 二 ] ( 返・帰・還 ) 事物や事柄が、もとの場所、状態などにもどる。
   1. ① もとの場所や持主にもどる。
      1. [初出の実例]「ひさかたの天路は遠しなほなほに家に可弊利(カヘリ)て業(なり)をしまさに」(出典：万葉集（８Ｃ後）五・八〇一)
      2. 「年経つるとまやも荒れてうき波のかへる方にや身をたぐへまし」(出典：源氏物語（1001‐14頃）明石)
   2. ② もとの状態にもどる。復元する。
      1. [初出の実例]「さかさまに年もゆかなんとりもあへず過ぐるよはひやともにかへると〈よみ人しらず〉」(出典：古今和歌集（905‐914）雑上・八九六)
      2. 「若々しくいにしへにかへりて語らひ給ふ」(出典：源氏物語（1001‐14頃）若菜上)
   3. ③ 特に、本来そうあるべきところ、状態などにもどる。
      1. [初出の実例]「歌のさま世々によみ古されにける事を知りて、更に古風にかへりて幽玄の体を学ぶ事のいで来る也」(出典：無名抄（1211頃）)
   4. ④ まわって、もとにもどる。一年がめぐって、季節がまた新しくはじまる。
      1. [初出の実例]「あらたまの年可敝流(カヘル)まで相見ねば心もしのに思ほゆるかも」(出典：万葉集（８Ｃ後）一七・三九七九)
   5. ⑤ 野球で、走者が、各塁を回り、本塁にもどって得点になる。生還する。
      1. [初出の実例]「河野の飛球が敵の虚に落て泉谷は還(カヘ)った」(出典：日本野球史（1929）〈国民新聞社運動部〉忍苦の一高又も早慶に敗る)
4. [ 三 ] ( 動詞の連用形に付けて補助動詞的に用いる ) 上の動詞の表わす動作、状態が繰り返されるさま、また、はなはだしいさまを表わす。繰り返し…する。はなはだしく…する。すっかり…する。
   1. [初出の実例]「思ふにし死(しに)するものにあらませば千たびそわれは死に変(かへら)まし」(出典：万葉集（８Ｃ後）四・六〇三)
   2. 「はかばかしうものたまはせやらず、むせかへらせ給ひつつ」(出典：源氏物語（1001‐14頃）桐壺)

そ・る【反】

1. 〘 自動詞 ラ行五（四） 〙
2. ① まっすぐなものがしなって曲がる。
   1. (イ) 人が、背中を後ろへ曲げる。のけぞる。のけざまになる。特に驚くさまにいうことがある。
      1. [初出の実例]「腰の刀を抜んと、一反(ひとそ)り反(ソ)りけるが、真倒(まっさかさま)に成て落にけり」(出典：太平記（１４Ｃ後）一六)
   2. (ロ) 細長いものが弓なりに曲がる。曲がり返る。
      1. [初出の実例]「うら山し安達の峰のそりま弓そりはてましを引かへしけむ」(出典：五社百首（1190）)
3. ② ( 後ろへそる表情からか ) 驚いたり、あきれたりする。心が動揺する。
   1. [初出の実例]「『女夫ながらそる事ぢゃ、是と』懐より金百両包を取出し」(出典：歌舞伎・傾城浅間嶽（1698）中)

せ・る【反】

1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 「そる（反）」の上代東国方言。
   1. [初出の実例]「陸奥(みちのく)の安太多良(あだたら)真弓(まゆみ)弾(はじ)き置きて西良(セラ)しめきなば弦(つら)着(は)かめかも」(出典：万葉集（８Ｃ後）一四・三四三七)

反るの補助注記

「万葉」例は一説に、「競(せ)る」の意ともいう。

かや・る【反・返・帰・覆】

1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「かえる（反）」の変化した語 )
2. ① もとの所へもどる。
   1. [初出の実例]「日もくれぬればかやり給はんとするに」(出典：あさぢが露（１３Ｃ後）)
3. ② ひっくりかえる。
   1. [初出の実例]「『奥さん雑巾は？』と三蔵は覆(カヤ)った糊皿を見て心配さうに細君の顔を見る」(出典：俳諧師（1908）〈高浜虚子〉二五)

出典　精選版 日本国語大辞典