吹上・噴上・吹揚(読み)ふきあげる

精選版 日本国語大辞典 「吹上・噴上・吹揚」の意味・読み・例文・類語

ふき‐あ・げる【吹上・噴上・吹揚】

[1] 〘他ガ下一〙 ふきあ・ぐ 〘他ガ下二〙
① 風が吹いてきて、物を持ち上げたり、舞い上がらせたりする。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「風はげしくて、おほんまくふきあげたるよりみいるれば」
② 水や蒸気などが、勢いよく上がってきて、上にある物を押し上げたり、軽い物を舞い上がらせたりする。
※尋常小学読本(明治三六年)(1903)五「水をわかすと、じょーきといふものができて、ふたをふきあげる」
上方に吹き出させる。水や煙などを高くのぼらせる。
※勇魚取絵詞(1829)上「長須は〈略〉潮を一筋にいといと高く吹切やうに吹上(フキアグ)るなり」
④ 笛などを音高く鳴らす。
源氏(1001‐14頃)末摘花「大ひちりき、尺八の笛などの大声を、ふきあげつつ」
⑤ 江戸時代、遊興などに夢中になったりして、惜しげもなく大金を使う。
※評判記・吉原すずめ(1667)上「男の方に、すきとふきあげ、引おひをして、主人をたをし」
⑥ 人をおだてて持ちあげる。
※俳諧・篇突(1698)「山鳩が逸物(いちもつ)の鷹と吹上たるも心ぐるしく」
[2] 〘自ガ下一〙 ふきあ・ぐ 〘自ガ下二〙
① 風が低い所から吹きのぼってくる。
古事記(712)下・歌謡大和へに 西風(にし)布岐阿宜(フキアゲ)て 雲離れ 退き居りとも 我忘れめや」
② 激しい感情がわき上がってくる。
※ある女(1973)〈中村光夫〉一「このわづらはしいつながりから、どんな価を払っても解放されたい気持が〈略〉吹きあげてきた」
③ 取引市場で、突然大きく値が上がる。
※脂のしたたり(1962)〈黒岩重吾リングの女「明昭興業は七月に入ると、百五十円まで、吹きあげた」

ふき‐あげ【吹上・噴上・吹揚】

[1] 〘名〙
① 海、谷など低い所からの風が吹き上がってくる所。しばしば地名となる。
※天延三年庚申朝光歌合(975)「谷川のふきあげに立てるたに柳枝のいとまもみえぬ春かな」
② 温泉、水などが勢いよくほとばしり上がること。また、その場所。特に、噴水をさすこともある。《季・夏》
※宇津保(970‐999頃)国譲上「ふきあげのつぼ造りみがきて、よろづの調度は、片山に積みたるやうにておはす」
咄本・私可多咄(1671)四「女のかみのゆひやうは、みな名所の名におふといふ〈略〉さる者聞て、まだ有、吹上(フキアケ)といふは紀伊の国の名所といふ」
④ 取引相場で、相場が急に上がること。〔取引所用語字彙(1917)〕
[2]
古今(905‐914)秋下・二七二「秋風のふきあげにたてるしらぎくは花かあらぬか浪のよするか〈菅原道真〉」
[二] 江戸時代、江戸小石川一帯呼称。現在の東京都文京区小石川三~五丁目、大塚三丁目の一帯にあたり、古くは奥州街道が通じていて榎並木があった。
[三] 岡山県倉敷市下津井地区の地名。

ふき‐あが・る【吹上・噴上・吹揚】

〘自ラ五(四)〙
空気が低い所から高い所へ勢いよく移動する。下から上へ向かって風が吹く。また、その風によってものが空高くのぼる。
※山の鍛冶屋(1926)〈宮嶋資夫〉一「然しそこにはもう火の気もたえだえで、吹き上るほこりさへもなくなってゐる」
② 水や蒸気などがわき上がったり空中にほとばしり出たりする。また、その力によって上にのっていたものが持ち上がる。転じて、激しい感情などがわき上がる。
※浮世草子・好色五人女(1686)五「牛とらの角に七つの壺あり、蓋ふきあかる程、今極め一歩銭などは砂のごとくにしてむさし」
※休暇(1974)〈吉村昭〉一「感情が抑えきれぬほどの激しさでふき上るのを意識した」

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