令制下において一定の地位をもつ女性の称。自らが五位以上を帯びる者を内命婦(ないみょうぶ)、夫が五位以上である者を外命婦(げみょうぶ)と称した。中国の制度を輸入したものであるが、その内容は異なる。日本の場合は五位以上と六位以下に画然たる差を設ける官人秩序のあり方を反映している。なかには後宮(こうきゅう)に勤仕しない者もいたが、朝会(ちょうえ)のときには朝参(ちょうさん)を許された。一方、平安中期以降には、後宮十二司(こうきゅうじゅうにし)の解体に伴って新しい女官(にょかん)秩序が形成されるが、そのなかで内侍(ないし)(掌侍(ないしのじょう))に次いで位置づけられる四、五位クラスの女房の称として「命婦」の語が使用される。内命婦の平安時代的な変身の姿としてよい。中世の、中臈(ちゅうろう)とされる女房に相当するようで、「侍臣の女(むすめ)」以下とされる(『禁秘抄』)。
[玉井 力]
『吉川真司著「平安時代女房の存在形態」(『律令官僚制の研究』所収・1998・塙書房)』▽『角田文衛著『日本の後宮』(1973・学燈社)』▽『須田春子著『平安時代後宮及び女司の研究』(1982・千代田書房)』
古代における身分のある女性の称。後宮職員令によれば,五位以上の位を有する女性を内命婦と称し,五位以上の男官の妻を外命婦と称した。一般に命婦という場合は内命婦を指すことが多い。《続日本紀》には内親王,女王,内命婦という序列づけが行われた例があるが,無位の女王を内命婦と呼んだ例もある。彼女たちは必ずしも全員が後宮十二司に勤仕したわけではないが,朝会などの際には朝参を許された。内命婦,外命婦の制は中国のそれに範をとったものであるが,中国の内命婦は皇帝のキサキの一員を指し,日本のそれとは意味を異にする。また,平安中期以降には,五位クラスの女官の職名として命婦の称があらわれるが,その場合には内侍司の掌侍に次ぐ位置を与えられていたようである。《禁秘抄》には,命婦というのは中﨟女房の前身であると説明されている。
→女房
執筆者:玉井 力
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古代の身分ある女性の称。名称は中国に由来するが,日本では内命婦(ないみょうぶ)をキサキの称として使用しないなど,中国の制とは大きく異なる。後宮職員令によれば,自身が五位以上を帯する宮人を内命婦,夫が五位以上を帯する官人の妻を外(げ)命婦とする。いずれも朝参を許された。平安時代以降,命婦は五位クラスの中臈(ちゅうろう)のみをさした。内侍の補足的な役割をする褰帳(けんちょう)命婦・威儀命婦などもある。
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