命婦(読み)ミョウブ

デジタル大辞泉 「命婦」の意味・読み・例文・類語

みょう‐ぶ〔ミヤウ‐〕【命婦】

律令制で、五位以上の女官、また五位以上の官人の妻の称。前者を内命婦ないみょうぶ、後者を外命婦げみょうぶという。
平安中期以降、中級の女官や中﨟ちゅうろう女房の称。「靱負ゆげいの―」「威儀の―」
中世、稲荷いなり明神の使いとされるきつねの異称。
気比宮けひのみや白鷺稲荷山の―」〈太平記・三九〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「命婦」の意味・読み・例文・類語

みょう‐ぶ ミャウ‥【命婦】

〘名〙
① 女官の呼称の一つ。令制では五位以上の女官を内命婦、五位以上の官人の妻を外命婦と称し、ともに朝参を許された。平安時代以降、中級の女官の称となる。中臈女房。ひめとね。〔令義解(718)〕
源氏(1001‐14頃)桐壺「命婦かしこにまうでつきて」
稲荷(いなり)の神の使とされる狐(きつね)
※太平記(14C後)三九「気比宮の白鷺、稲荷山の名婦(ミャウフ)比叡山の猿、社々の仕者
③ 奥州、塩竈神社の女神職。
和歌童蒙抄(12C前)三「夫よりこの神の命婦は、宮司のかざらん限りは、親子たがひにみゆまじとちかへり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「命婦」の意味・わかりやすい解説

命婦
みょうぶ

令制下において一定地位をもつ女性の称。自らが五位以上を帯びる者を内命婦(ないみょうぶ)、夫が五位以上である者を外命婦(げみょうぶ)と称した。中国の制度を輸入したものであるが、その内容は異なる。日本の場合は五位以上と六位以下に画然たる差を設ける官人秩序のあり方を反映している。なかには後宮(こうきゅう)に勤仕しない者もいたが、朝会(ちょうえ)のときには朝参(ちょうさん)を許された。一方、平安中期以降には、後宮十二司(こうきゅうじゅうにし)の解体に伴って新しい女官(にょかん)秩序が形成されるが、そのなかで内侍(ないし)(掌侍(ないしのじょう))に次いで位置づけられる四、五位クラスの女房の称として「命婦」の語が使用される。内命婦の平安時代的な変身の姿としてよい。中世の、中臈(ちゅうろう)とされる女房に相当するようで、「侍臣の女(むすめ)」以下とされる(『禁秘抄』)。

玉井 力]

『吉川真司著「平安時代女房の存在形態」(『律令官僚制の研究』所収・1998・塙書房)』『角田文衛著『日本の後宮』(1973・学燈社)』『須田春子著『平安時代後宮及び女司の研究』(1982・千代田書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「命婦」の意味・わかりやすい解説

命婦 (みょうぶ)

古代における身分のある女性の称。後宮職員令によれば,五位以上の位を有する女性を内命婦と称し,五位以上の男官の妻を外命婦と称した。一般に命婦という場合は内命婦を指すことが多い。《続日本紀》には内親王,女王,内命婦という序列づけが行われた例があるが,無位の女王を内命婦と呼んだ例もある。彼女たちは必ずしも全員が後宮十二司に勤仕したわけではないが,朝会などの際には朝参を許された。内命婦,外命婦の制は中国のそれに範をとったものであるが,中国の内命婦は皇帝のキサキの一員を指し,日本のそれとは意味を異にする。また,平安中期以降には,五位クラスの女官の職名として命婦の称があらわれるが,その場合には内侍司の掌侍に次ぐ位置を与えられていたようである。《禁秘抄》には,命婦というのは中﨟女房の前身であると説明されている。
女房
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「命婦」の解説

命婦
みょうぶ

古代の身分ある女性の称。名称は中国に由来するが,日本では内命婦(ないみょうぶ)をキサキの称として使用しないなど,中国の制とは大きく異なる。後宮職員令によれば,自身が五位以上を帯する宮人を内命婦,夫が五位以上を帯する官人の妻を外(げ)命婦とする。いずれも朝参を許された。平安時代以降,命婦は五位クラスの中臈(ちゅうろう)のみをさした。内侍の補足的な役割をする褰帳(けんちょう)命婦・威儀命婦などもある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「命婦」の意味・わかりやすい解説

命婦【みょうぶ】

女官。(1)律令制で五位以上の女官を内(ない)命婦,五位以上の官人の妻を外(げ)命婦と呼ぶ。(2)平安中期以後,尚侍(ないしのかみ)・典侍(ないしのすけ)・掌侍(ないしのじょう)に次ぐ女官。昭和初期に廃止。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「命婦」の意味・わかりやすい解説

命婦
みょうぶ

大宝令における貴婦人の称。五位以上の婦人を内命婦,五位以上の官人の妻を外命婦 (げみょうぶ) という。命婦には一定の職掌はないが,朝廷に参入し,朝廷の儀式に参加した。のちには中臈 (ちゅうろう) の女房をも称した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「命婦」の読み・字形・画数・意味

【命婦】めいふ

宮中につかえる妃嬪の属。

字通「命」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android