唐櫃(読み)カラビツ

デジタル大辞泉 「唐櫃」の意味・読み・例文・類語

から‐びつ【唐×櫃】

《「からひつ」とも》脚が4本または6本の、かぶせぶたのついた方形で大形の箱。衣服や、図書甲冑かっちゅうなどを入れた。なが唐櫃・にない唐櫃などがある。からうど。からと。からうず。かろうと。

かろうと〔からうと〕【×櫃】

《「かろうず」の音変化。「かろうど」とも》「からびつ」に同じ。
内侍所の御―をもって、海へ入らんとし給ひけるが」〈平家一一

から‐と【唐×櫃】

からびつ」に同じ。
「―、米櫃灰俵、打ち返してぞ捜しける」〈浄・冥途の飛脚

かろうず〔からうづ〕【唐×櫃】

からひつ(唐櫃)」の音変化。
「包、袋、―などもて来騒ぐ」〈栄花初花

からうと【唐×櫃】

かろうと(唐櫃)

からうず〔からうづ〕【唐×櫃】

かろうず

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精選版 日本国語大辞典 「唐櫃」の意味・読み・例文・類語

から‐びつ【唐櫃・屍櫃・辛櫃】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「からひつ」 )
  2. ( 唐櫃 ) 足のついたひつ。外反りの足が各面に一本ずつの四本、または、前後に二本ずつ、左右に一本ずつの六本あるのが普通。衣類・調度品などを入れるのに用い、長唐櫃、荷(にない)唐櫃、小唐櫃、記録入唐櫃などがある。かろうと。かろうず。からと。
    1. 唐櫃<b>①</b>〈平治物語絵巻〉
      唐櫃平治物語絵巻
    2. [初出の実例]「送節度使祿料納絹韓櫃弐合領状」(出典:正倉院文書‐天平六年(734)出雲国計会帳)
    3. 「おほひしたるからびつ二よろひ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  3. ( 屍櫃・辛櫃 ) 遺体を入れる棺。
    1. [初出の実例]「『石のからひつに入るるぞかし』右大弁『壁の中にをさめさせ給へとにやあらん』」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)

かろうとからうと【唐櫃】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「からひつ」の変化した語。「かろうど」とも )
  2. からびつ(唐櫃)
    1. [初出の実例]「大納言の佐殿(すけどの)は、内侍所の御からうとをもって、海へいらんとし給ひけるが」(出典平家物語(13C前)一一)
  3. からびつ(屍櫃)
    1. [初出の実例]「くろかねしゃうをおろしゐむはむをもってふうしたる石のからうとの中よりも」(出典:幸若・大織冠(室町末‐近世初))
  4. 墓石の下に設けた遺骨を納める石室。

からと【唐櫃】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「からうと(唐櫃)」の変化した語 )
  2. からびつ(唐櫃)
    1. [初出の実例]「からと・こめびつ・はひだはら」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)下)
  3. 米櫃(こめびつ)をいう。
    1. [初出の実例]「浮世に米といふ虫あり〈略〉しかはあれど家家にかひとられ、唐櫃(カラト)の中の辛(からき)め見しより」(出典:俳諧・本朝文選(1706)八・伝類・霊虫伝〈去来〉)

かろうずからうづ【唐櫃】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「からひつ」の変化した語 ) =からびつ(唐櫃)
    1. [初出の実例]「と書きて、かたはらなるからうづにゐざりよりて入れつ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)

からうずからうづ【唐櫃】

  1. 〘 名詞 〙かろうず(唐櫃)

からうと【唐櫃】

  1. 〘 名詞 〙かろうと(唐櫃)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐櫃」の意味・わかりやすい解説

唐櫃
からびつ

物品、とくに比較的貴重な物や、重要な物を収めるための用具長方形で、4本ないし6本の脚がついており、経巻(きょうかん)、衣類、調度品などを入れ、蓋(ふた)をかぶせて施錠できるようになっている。紐(ひも)が取り付けられるようになっていて、ここへ棒を通せば担いで歩ける。その名のとおり、中国から伝えられたものといわれる。これに対し、倭櫃(わびつ)とよばれるものもある。木製であるが、木地のもの、朱塗りのもの、漆塗りのものなど、仕上げはさまざまである。なかには、かなり豪華なものもあって、蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)が施されたものもある。正倉院金剛峯寺(こんごうぶじ)、厳島(いつくしま)神社などに伝えられるものが代表例としてあげられる。このように唐櫃は古くから使用された用具であるが、宮中などで使われるものは、貢納品として諸国に数を割り当ててつくらせていた。実用品として製作されたものではあるが、のちにはそれ自体が一つの装飾品とみなされることもあった。

[胡桃沢勘司]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐櫃」の意味・わかりやすい解説

唐櫃
からびつ

辛櫃,韓櫃とも書く。衣服,経巻などを収納する唐風の覆蓋造りの櫃。4脚または6脚で,その脚の上部の穴に紐を通してかつぐようにしたもの。木地のままのもの,朱塗りのもの,漆塗りのもの,蒔絵または螺鈿 (らでん) を施したものなどがある。現存するものでは奈良時代の正倉院蔵の密陀絵唐櫃,平安時代の『鳳凰円文螺鈿唐櫃』 (東京国立博物館) などが著名。なお櫃の長側の両面に手掛けの穴をうがった桟を1本ずつ打ったものは倭櫃 (やまとびつ) という。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「唐櫃」の解説

からびつ【唐櫃】

中国から伝来した、4本または6本の脚がついた蓋つきの箱。家具として衣類・調度品などを収納するほか、食料や武具の運搬などにも用いた。奈良時代のものが多く現存する。◇「からうず」「かろうと」などともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の唐櫃の言及

【ひつ(櫃)】より

…櫃は中国語の櫃子からきている。脚付きの唐(韓)櫃(イラスト)と脚の付かない和(倭)櫃(やまとびつ)(イラスト)とがある。唐櫃の脚は通常長側面に各2本,短側面に各1本の6本だが,正方形の小櫃などはだいたい4本脚である。…

※「唐櫃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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