善水寺(読み)ぜんすいじ

精選版 日本国語大辞典 「善水寺」の意味・読み・例文・類語

ぜんすい‐じ【善水寺】

滋賀県湖南市にある天台宗の寺。山号は、岩根山。和銅年間(七〇八‐七一五元明天皇勅願により和銅寺として創建。延暦年間(七八二‐八〇六)最澄(さいちょう)薬師仏を感得し桓武天皇の病気平癒を祈願したとき境内から香水がわき出たので善水寺と号した。貞治三年(一三六四建立本堂薬師堂)は国宝

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日本歴史地名大系 「善水寺」の解説

善水寺
ぜんすいじ

[現在地名]甲西町岩根

岩根いわね山の中腹にある。岩根山と号し、天台宗。本尊薬師如来坐像(国指定重要文化財)は平安時代中期の作で、像内に正暦四年(九九三)の造像結縁交名一紙などが納められている。寺伝によれば、元明天皇が和銅年間(七〇八―七一五)国家鎮護の道場として草創した和銅わどう寺を前身とし、延暦年中(七八二―八〇六)桓武天皇不予に際し、最澄が同寺で法を修し香水を献じたところ平癒したので、善水寺と号し、比叡山延暦寺の別院になったという。岩根山麓には奈良時代創建と伝える正福しようふく寺、少菩提しようぼだい(現廃寺)が隣接し、野洲やす川対岸には大菩提だいぼだい(現滋賀県栗東町金勝寺)長寿ちようじゆ寺・常楽じようらく(現同県石部町)などがあり、当地域が早くから南都系寺院によって開発されたことが推察されるが、当寺の草創伝承もその動向を伝えるもので、興味深い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「善水寺」の意味・わかりやすい解説

善水寺
ぜんすいじ

滋賀県湖南(こなん)市岩根の岩根山中腹にある天台宗の寺。岩根山医王院と号する。本尊は薬師如来(にょらい)。和銅(わどう)年間(708~715)法相(ほっそう)宗の道場として開創され、和銅寺と称した。伝教(でんきょう)大師最澄(さいちょう)が入寺して諸堂宇を建て、延暦寺の別院としたという。桓武(かんむ)天皇の病を、最澄の献じた、薬師法による霊水によって癒(いや)したところから、寺名を善水寺と改めた。1571年(元亀2)、織田信長の兵火に焼かれた。このとき焼け残った、1364年(正平19・貞治3)建造の本堂は国宝、993年(正暦4)作の本尊薬師如来像はじめ、天平(てんぴょう)年間(729~749)作の金銅誕生釈迦(しゃか)仏立像、弘仁(こうにん)年間(810~824)作の不動明王坐像(ざぞう)など15体の仏像が国の重要文化財指定されている。近くの谷間の花崗(かこう)岩に1334年(建武1)作の不動尊像が刻まれている。

[田村晃祐]


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改訂新版 世界大百科事典 「善水寺」の意味・わかりやすい解説

善水寺 (ぜんすいじ)

滋賀県湖南市の旧甲西(こうせい)町にある天台宗の寺。岩根山医王院と号する。寺伝によると,和銅年間(708-715)元明天皇の勅願で創建され和銅寺と号したが,のち最澄が桓武天皇の病気平癒を祈って当寺から霊水を捧げ,790年(延暦9)善水寺の寺号を賜ったという。現在の本堂(薬師堂。国宝)は1364年(正平19・貞治3)延海の再建で,堂内には本尊薬師如来座像以下,藤原・鎌倉期の重要文化財指定の仏像が多く安置され,仏像の宝庫となっている。
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百科事典マイペディア 「善水寺」の意味・わかりやすい解説

善水寺【ぜんすいじ】

滋賀県甲賀郡甲西町(現・湖南市)岩根にある天台宗の寺。江戸時代は医王院とも。和銅年間(708年―715年)の創立と伝える。室町時代の建築の密教本堂に藤原時代の一木造の薬師三尊があり,ほかの諸仏とともに重要文化財となっている。
→関連項目甲西[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「善水寺」の意味・わかりやすい解説

善水寺
ぜんすいじ

滋賀県湖南市にある天台宗の寺。奈良時代の創立といわれるが明らかでない。本堂は貞治3 (1364) 年の造立。和様建築の密教本堂形式による建造で,堂内には十数体もの平安仏を安置し,国宝に指定されている。

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事典 日本の地域遺産 「善水寺」の解説

善水寺

(滋賀県湖南市岩根3518)
近江水の宝」指定の地域遺産。

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世界大百科事典(旧版)内の善水寺の言及

【甲西[町]】より

…国道1号線沿いも工場進出が著しく,さらに北東部の丘陵地では大規模な住宅地開発が行われ,人口が急増している。岩根の善水寺本堂は室町初期の建築で国宝,菩提寺の廃少菩提寺石多宝塔および石仏は国の史跡に指定されている。また平松には天然記念物のウツクシマツ自生地がある。…

※「善水寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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