和様建築(読み)ワヨウケンチク

デジタル大辞泉 「和様建築」の意味・読み・例文・類語

わよう‐けんちく〔ワヤウ‐〕【和様建築】

和様3」に同じ。

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改訂新版 世界大百科事典 「和様建築」の意味・わかりやすい解説

和様建築 (わようけんちく)

一般に〈和様〉という場合,日本の建築や書道その他の芸術などでわが国固有のものとして古代以来伝えられてきた様式をいう。〈やまとのかたち〉と信じられているものだが,実際には飛鳥・奈良時代に中国の唐から伝えられ,これを学び,平安時代を通じてしだいに日本人の感覚と風土に合うように変容した文化様式を指している。そして〈和様〉という用語は鎌倉時代以降新たに中国から摂取した唐様禅宗様)や天竺様大仏様)に対比し,それ以前から日本で広く用いられ,中国とは異なる表現となっていた様式を区別するために使われた言葉である。

 建築では鎌倉時代に宋・元の新技術や様式が伝わり禅宗様,大仏様建築が建てられると,和様にも部分的にとり入れられ,鎌倉中期以降純粋の和様はほとんどみられなくなる。そして禅宗様建築に特徴的な貫(ぬき),木鼻(きばな)や桟唐戸(さんからと)などの応用が一部にとどまるものと,全体のプロポーションや組物にも禅宗様などの影響が強いものとがみられるようになる。前者を新和様,後者折衷(せつちゆう)様と呼ぶことがある。また細部の特徴からみて平安時代以来の伝統的な要素を持っていても必ずしも和様とはいえないのは,禅宗様建築でも檜皮(ひわだ)葺きや杮(こけら)葺き,野屋根,板壁など日本で発達した技術を用いるようになるためである。和様を強調する細部としては亀腹(かめばら),回り縁(まわりぶち),長押(なげし),長押つき連子(れんじ)窓,蔀(しとみ)戸,斗栱(ときよう)を柱上にのみ置き中備は間斗束(けんとづか)または蟇股(かえるまた)とする,平行垂木(たるき),小組格天井(こぐみごうてんじよう),大棟の獅子口などをあげることができる(社寺建築構造)。しかし,必ずしもこの多くを備える必要はなく,形式上おおよそ奈良時代以来の要素が目だつ興福寺東金堂(1415),五重塔(1426)などは和様の代表である。これらの建築には長押が使用され,組物(建築組物)の形式が禅宗様でなく,平行垂木としている点などが,重要な構成要素として伝統的な和様の外観を与えているのである。

 和様建築の全体的構成の特徴は(1)古代の神社建築にみられるように建築装飾が少なく,簡明なまとまりを好むようになっていること,(2)内部空間では野屋根の発展に伴って天井や化粧屋根裏を,大仏様や禅宗様に比べやや低目にとり,落ち着いた生活空間をもつものが多いこと,(3)間仕切りや内・外陣の結界が発達し,大規模な堂であっても,天井の低さとともに小さい空間をつくり出すこと,などである。これは,中国で宋代以降発達した大規模な堂における背の高い室内空間構成が,大仏様や禅宗様の堂に影響しているのとは対蹠的である。前述のように和様建築にも新技術が吸収されたが,その表現は建築工匠の組織や個人によって差があり,一般に奈良から瀬戸内地域は鎌倉期の東大寺再興の影響で大仏様(天竺様)の細部がみえるものが多い。

 次に和様および折衷様の代表的例を示す。奈良では鎌倉時代の興福寺北円堂(1210),同三重塔(12世紀末),法隆寺聖霊院(1284),室町時代の興福寺東金堂,同五重塔などが古代的な和様で,元興寺極楽坊本堂(1244),長弓寺本堂(1279)などは大仏様の細部をとり入れている。京都の蓮華王院本堂(1266),大報恩寺本堂(1227),滋賀県の石山寺多宝塔(1194),西明寺三重塔(鎌倉中期)なども和様の代表作である。折衷様では広島明王院本堂(1321)は禅宗様とその他の大陸の影響があり,和歌山松生院本堂(1295。戦災焼失)は禅宗様の細部が目だつ。兵庫鶴林寺本堂(1397ころ)は軸部に大仏様と細部に禅宗様の影響がみられる。大阪観心寺金堂(1439ころ)は細部に大仏様や禅宗様の形があるが,全体としては和様のまとまりをもっている。桃山時代となると装飾的細部が多くなり,和様と折衷様の区別はしにくくなる。
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百科事典マイペディア 「和様建築」の意味・わかりやすい解説

和様建築【わようけんちく】

日本建築の一様式。鎌倉時代に中国から伝来した唐様大仏様に対し,従来の伝統に従って作られた建築様式一般をさす。石山寺多宝塔,三十三間堂興福寺五重塔等がその例。→寺院建築
→関連項目折衷様蓮華王院

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和様建築」の意味・わかりやすい解説

和様建築
わようけんちく

鎌倉時代に大陸の影響を受けてできた大仏様禅宗様に対し,鎌倉時代以前から日本で行われてきた建築様式をいう。元来は中国,唐の様式で,その和風化したものをさすが,基壇上に建ち,土間で大陸風の様式を残すものも含めていう。貫 (ぬき) を用いず,長押 (なげし) で軸部を固め,窓は連子窓,戸は板扉あるいは蔀戸 (しとみど) とし,蟇股 (かえるまた) を使って大瓶束は用いない。垂木は平行,木鼻 (きばな) などの装飾細部はない。主要遺構は三十三間堂本堂 (1266) ,興福寺東金堂 (1415) 。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「和様建築」の解説

和様建築
わようけんちく

鎌倉時代以降,中国の影響で大仏様・禅宗様が登場したのに対して,日本の伝統的建築様式をいう。和様は7~8世紀に断続的に輸入された中国建築の様式を基礎に,平安時代を通じて形成された。長押(なげし)を用いること,床を張ること,水平性の強いおだやかなデザインなどが特徴。中世以降,大仏様・禅宗様の貫(ぬき),虹梁(こうりょう),木鼻(きばな)など新しい構造材や細部のデザインが和様にとりいれられ,新しい展開を示した。鎌倉~南北朝期の様式を新和様あるいは折衷様とよぶことがあるが,いずれも和様建築の新展開である。

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