国家安全保障会議(読み)コッカアンゼンホショウカイギ

デジタル大辞泉 「国家安全保障会議」の意味・読み・例文・類語

こっかあんぜんほしょう‐かいぎ〔コクカアンゼンホシヤウクワイギ〕【国家安全保障会議】

国の安全保障政策について審議・立案・調整・意思決定などを行う機関。米国・英国・ロシア・韓国など各国にある。

外交安全保障に関する諸課題について内閣総理大臣を中心に日常的・機動的に審議する場として、内閣に設置された機関。平成25年(2013)、安全保障会議の機能を強化・拡充して創設された。日本版NSC
米国政府の最高国防会議。1947年、国家安全保障法により設置。外交政策と軍事政策とを統合し、高度の国防政策を立案・審議して大統領に勧告する機関。NSC(National Security Council)。

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共同通信ニュース用語解説 「国家安全保障会議」の解説

国家安全保障会議(NSC)

米国家安全保障会議(NSC) 米政府の外交・安全保障政策に関する最高意思決定機関。1947年の国家安全保障法で創設された。大統領が議長を務め、副大統領、国務、国防の各長官、統合参謀本部議長、国家情報長官らで構成される。各省庁から出向する官僚や政治任用の専門家らがNSCスタッフとなり、大統領らの政策立案を支える。国家安全保障問題担当の大統領補佐官が事務方スタッフを統率する。米NSCをモデルにした日本版NSCが2013年末に発足した。

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国家安全保障会議(NSC)

安全保障に関する課題を審議する政府機関。第2次安倍政権が米国のNSCをモデルに発足させた。首相が議長となり、外相、防衛相、官房長官の4大臣会合で中長期の戦略や、北朝鮮のミサイル発射などの対応を議論する。重要事項を審議する際は、財務相らも参加する9大臣会合を開く。会議の内容は、ほとんど公表されない。内閣官房に事務局の国家安全保障局(NSS)があり、外務、防衛両省などの出向組を中心に構成されている。

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精選版 日本国語大辞典 「国家安全保障会議」の意味・読み・例文・類語

こっかあんぜんほしょう‐かいぎコクカアンゼンホシャウクヮイギ【国家安全保障会議】

  1. ( [英語] National Security Council の訳語 ) アメリカ合衆国政府最高の国防会議。一九四七年設置。外交政策と軍事政策の統合、政府各機関の活動と国防政策との統合に関して大統領に勧告する。中央情報局(CIA)の上部組織。略称NSC。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国家安全保障会議」の意味・わかりやすい解説

国家安全保障会議(日本)
こっかあんぜんほしょうかいぎ

日本の安全保障に関する重要事項を審議する機関。日本政府における行政機関の一つ。2013年(平成25)12月、「国家安全保障会議設置法」(旧法律名は安全保障会議設置法(昭和61年法律第71号)。平成25年法律第89号による改正で改称)に基づき、それまでの安全保障会議にかわり内閣に設置された。アメリカ政府における国家安全保障会議(NSC(エヌエスシー):National Security Council)を参考に設置され、「日本版NSC」とよばれることもある。

 第二次世界大戦後の日本においては、政治レベルにおける安全保障の基本方針を審議する機関として、1956年(昭和31)に国防会議、1986年には国防会議を改組した安全保障会議が設置された。これらは安全保障政策の基本方針を策定するとともに、自衛隊に対する文民統制シビリアン・コントロール)という機能も担ってきた。国家安全保障会議は、安全保障会議を直接の前身とし、それを拡大・強化するかたちで設置された。国家安全保障会議の設置に際し重視されたことは、(1)日本の安全保障にかかわる諸課題について、政治レベルで日常的に審議し方針を定めること、(2)安全保障会議から「9大臣会合」を継承し文民統制機能を維持すること、(3)想定外の緊急事態が起きた場合も、国家安全保障会議が迅速に対処できること、(4)事務局となる強化された国家安全保障局を新設し、恒常的に国家安全保障会議をサポートするとともに、安全保障に関する企画立案・総合調整に専従させること、などである。

 安全保障会議から継承された「9大臣会合」に加えて、新たに「4大臣会合」と「緊急事態大臣会合」が創設された。「4大臣会合」は、内閣総理大臣を議長とし、官房長官、外務大臣防衛大臣の4人で構成され、「外交・防衛政策の司令塔」として随時、開催され、安全保障政策の基本的な方向性を定める。設置以来、毎月、1~2回の頻度で開催されており、北朝鮮による核実験、長距離弾道ミサイルの発射など緊張を高める事態が発生した場合は、1か月に6回開かれたこともある。「9大臣会合」は、「4大臣会合」のメンバーに、副総理、総務大臣財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、国家公安委員長が加わる(副総理を加えると10人のようであるが、副総理は、ほとんどの場合、総理大臣を除く8人の大臣のうちのいずれかが指定されているので「9大臣会合」となる)。文民統制の機能を担う「9大臣会合」は、防衛計画の大綱をはじめとする防衛力整備について、国連平和維持活動への参加、ソマリア海域における海賊対処行動など自衛隊の運用について、防衛技術・装備品の海外への移転にかかわる原則について、日本に対する武力攻撃事態が発生した場合の対処方針について、など「国防に関する重要事項」について審議を行う。「9大臣会合」は、必要に応じて開催され、一年に4~10回の頻度で開かれている。「緊急事態大臣会合」は、「4大臣会合」、「9大臣会合」が想定しきれない重大かつ緊急に対処が必要な事態が発生した場合にも、迅速・適切に対処できるよう新たに設置された。たとえば、領海侵入・不法上陸など軍事衝突とはいえないが軍事衝突一歩手前の事態、放射性物質によるテロ攻撃など攻撃を行った国が不明か国以外のテロ組織などによる場合や、大量の難民が日本に押し寄せ国内の治安が一気に悪化するような事態が考えられていた。想定外の事態に対処する必要上、総理大臣と官房長官以外は、参加者は固定されず、会合の趣旨にあう各省大臣が招集される。「緊急事態大臣会合」は、一種の保険であり、この会合が開催される事態には至らないのではないかという意見もあったが、2020年(令和2)1月、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行に対処するため「緊急事態大臣会合」が、初めて開かれた。

 国家安全保障会議の運営を支援するスタッフ機能の強化も行われた。国家安全保障担当の総理補佐官が常設とされ、事務局となる国家安全保障局が内閣官房に新設された。国家安全保障局は、外務省と防衛省の出身者を中心に約90名の人員で構成されており、トップである国家安全保障局長は、内閣危機管理監と密接に協力しながら職務にあたる。国家安全保障局は、国家安全保障会議を恒常的にサポートし、緊急事態に際しては必要な提言を行い、外交・防衛政策の基本方針・重要事項の企画立案・総合調整に専従する。また、内閣レベルにおける情報機関をもたない日本において、外務省、防衛省、法務省(公安調査庁)、国土交通省海上保安庁)、経済産業省、警察庁、内閣情報調査室などの省庁が、個別に収集した安全保障に関する情報を、内閣レベルで集約する機能も果たしている。さらに、官房長官を長とし、各省庁の局長レベルで構成される「事態対処専門委員会」が設置されており、緊急事態が発生した場合には、調査・分析を行い、国家安全保障会議に対し必要な進言を行う。

[山本一寛 2020年6月23日]


国家安全保障会議(米国)
こっかあんぜんほしょうかいぎ
National Security Council

略称NSC。アメリカの安全保障政策決定過程における最高諮問機関。1947年の国家安全保障法に基づき設置され、大統領に対し国の安全保障に関する内政、外交および軍事政策の統合、調整についての助言を行い、軍隊と各省庁間の協力体制をより確かなものにすることを任務とする。49年修正法で大統領府に置かれている。同会議の法定構成員は、大統領(議長)、副大統領、国務長官、国防長官であり、統合参謀本部議長および中央情報局(CIA)長官がそれぞれ法定の軍事顧問、情報顧問である。大統領補佐官、大統領補佐官代理および事務局長で事務局を構成する。会議は定期的に開かれるが、会議の運営方法(付属委員会の名称など)や会議の助言を尊重する度合いはそのときの大統領により異なる。大統領の命令で構成員、顧問以外の関係者が出席することも多い。下部組織として中央情報局が置かれている。

[亀野邁夫]

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百科事典マイペディア 「国家安全保障会議」の意味・わかりやすい解説

国家安全保障会議【こっかあんぜんほしょうかいぎ】

米国大統領の安全保障政策に関する諮問機関。通称NSC。1947年に制定された国家安全保障法および1951年の相互安全保障法に基づいて設置。大統領のほか,副大統領,国務長官,国防長官がその構成メンバー。事務局はホワイト・ハウス内にある。米国の外交政策と国防政策の統合・調整や,政府各機関と国防政策の調整等について,大統領に助言を与えるのがその任務。会議の統括は安全保障担当の大統領補佐官が行う。また大統領は,必要に応じてその他の長官や次官を構成メンバーに任命することができる。ただし,シビリアン・コントロールの原則から制服の軍人は会議で報告をすることはあっても,構成メンバーとなることはできない。日本でも,第2次安倍晋三内閣が〈安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(安保会議設置法改正案)〉を国会に提出し,同年11月に成立,12月に安全保障会議設置法が改正され(法律の表題も〈国家安全保障会議設置法〉に変更),従来の安全保障会議は国家安全保障会議に再編された。国家安全保障に関する重要事項および重大緊急事態への対処を審議する目的で,内閣に置かれる。主任の大臣および議長は内閣総理大臣。中核となる4大臣会合は,内閣総理大臣,官房長官,外相,防衛相によって構成,この会合は平素から開催され,安全保障に関する政策を協議して対外政策の基本的な方向性を決定する。必要に応じて,9大臣会合,緊急大臣会合が置かれる。日本版NSCと呼ばれる。安倍内閣はこれとセットと位置づける,〈特定秘密保護法〉を国会で採決・可決した。また国家安全保障会議を恒常的にサポートする組織として国家安全保障局を設置した。内閣官房の総合調整権限を用い,国家安全保障に関する外交・防衛政策の基本方針・重要事項に関する企画立案・総合調整に専従する。国家安全保障に関する外交・防衛政策の観点から必要な提言を実施,関係行政機関等に対し,適時に情報を発信する。また会議に提供された情報を政策立案等のために活用する権限と機能を持つ。国家安全保障局が,内閣で安全保障に関するセンター的な役割を担うことになる。初代局長には,安倍首相の外交ブレーンで外務省出身の谷内正太郎。→国家経済会議
→関連項目アメリカ合衆国国家安全保障局

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知恵蔵 「国家安全保障会議」の解説

国家安全保障会議

自民党第2次安倍内閣が創設を目指している新しい安全保障機関。国防・外交・安全保障に関する重大問題について、情報収集・情勢分析から、中長期の戦略立案、緊急時の政策決定までを行う。大統領の権限が強いアメリカの国家安全保障会議(NSC)をモデルとしており、通称「日本版NSC」と呼ばれる。2013年6月7日、安倍内閣は設立に向けた関連法案を閣議決定し、次の国会での成立を見こんでいる。
法案によると、日本版NSCの中核となるのは、首相・内閣官房長官・外務大臣・防衛大臣からなる「4大臣会合」である。意思決定の最高機関・司令塔として、定期的に会合を持つ。現在、国防政策に関する議論の場として「安全保障会議」があるが、閣僚9人体制で意思決定の迅速性に欠けるという批判があった。首相を中心とした「4大臣会合」に権限を集中させることで、政策決定までのスピードアップを図るのが狙い。また、国家安全保障専任の首相補佐官も設置される。加えて、大量の避難民が日本に流入するといった緊急事態の初動には、「4大臣会合」とは別に、首相が指定した閣僚からなる「緊急事態大臣会合」が当たる。
この手の組織は、省庁間の対立がしばしば足枷(あしかせ)になってきたと批判される。こうした縦割り行政の弊害を解消するため、内閣官房に「4大臣会合」を補佐する「国家安全保障局」が新設される。100人規模の事務局で、情報収集の他、関連省庁の調整・連携促進に当たるもよう。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2013年)


国家安全保障会議

1947年の国家安全保障法により設置された大統領の諮問機関。49年の機構改革以来、事務局はホワイトハウスにある。大統領、副大統領、国務長官、財務長官、国防長官で構成され、安全保障に関する外交、軍事、国内政策を総合的に検討、大統領に助言する。統合参謀本部議長とCIA長官は軍事及び情報に関する助言を行い、ほかの閣僚なども必要に応じて出席する。国家安全保障担当の大統領補佐官が統括する。

(細谷正宏 同志社大学大学院アメリカ研究科教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国家安全保障会議」の意味・わかりやすい解説

国家安全保障会議[日本]
こっかあんぜんほしょうかいぎ[にほん]

日本の安全保障について審議する内閣官房の機関。2013年12月,国家安全保障会議設置法など関連法が成立し,設立された。アメリカ合衆国の国家安全保障会議 NSCを範としており,日本版NSCとも呼ばれる。外交や安全保障の重要課題を,戦略的観点から日常的,機動的に議論し,政治の強力なリーダーシップによって迅速に対応することを目的とする。2週に 1度開かれる内閣総理大臣内閣官房長官,外務大臣,防衛大臣出席の 4大臣会合で基本方針を決定し,必要に応じて副総理,総務大臣,財務大臣,経済産業大臣,国土交通大臣,国家公安委員会委員長(→公安委員会)を加えた 9大臣会合や,緊急事態大臣会合を招集する。また,国家安全保障担当の首相補佐官が常設され,事務局として約 70人体制の国家安全保障局が内閣官房に設置されている。関係省庁には,国家安全保障会議への安全保障にかかわる情報の提供が義務づけられている。

国家安全保障会議[アメリカ合衆国]
こっかあんぜんほしょうかいぎ[アメリカがっしゅうこく]
National Security Council; NSC

アメリカ合衆国の安全保障にかかわる国防・外交政策全般について大統領に助言する大統領府の機関。1947年,冷戦を背景に国家安全保障法によって設置された。同法はまた,それまでの陸軍省と海軍省を統合して国防省を発足させている。国家安全保障会議の議長は大統領が務め,会議には大統領のほか副大統領,国務長官,国防長官および法規上のアドバイザーとして中央情報局 CIA長官,統合参謀本部議長が出席する。実際に立案,提言を行なうのは国家安全保障会議事務局長,すなわち国家安全保障問題担当の大統領補佐官であり,ヘンリー・A.キッシンジャーが事務局長時代,リチャード・M.ニクソン大統領の事実上の国務長官といわれたことは有名である。国務省,国防省との関係は長官,事務局長によって変化する。

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世界大百科事典(旧版)内の国家安全保障会議の言及

【アメリカ合衆国】より

…しかし,20世紀に入り,国家機能の拡大に伴い行政業務も増大し,ことにF.D.ローズベルト大統領時代に,内にニューディール,外に第2次大戦と,政府の機能は飛躍的に拡大し,大統領の強い政治指導が要請されるにいたった。ここに多忙な,強力であるべき大統領にとってその分身ともいうべき側近が必要とされ,ローズベルトの時代にはブレーン・トラストとしてスタッフが強化されたが,1939年には大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,今日ではホワイト・ハウス事務局,管理予算局,国家安全保障会議,中央情報局(CIA)など強力な機関が各省と別に大統領に直属している。ことに,ホワイト・ハウス事務局の補佐官は,大統領の政策決定に大きな影響力をもち,大統領とこれらのスタッフに広範な権限が集中され,ついにはニクソン大統領時代の〈帝王的大統領〉制との批判をうけるまでにいたる。…

【安全保障会議】より

…国防の基本方針,防衛計画の大綱,防衛計画に関連する産業などの調整計画の大綱,防衛出動の可否などについてはこの会議にはからなければならないとされ,これに加えて〈通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な〉国家の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事態への対処について,総理大臣がこの会議にはかる,としている。先進民主主義国家においては,安全保障会議と類似の組織を有する例が多く,アメリカでは国家安全保障会議がこれに相当する。文民統制の観点から,これらの国々において,軍人はメンバーに含まれないのが通例である。…

【情報機関】より

…OSSは45年9月にいったん解散されたが,46年1月中央情報本部(CIG)として復活,47年9月にCIGに代えCIAが発足,ダレスA.Dullesが長官となり,CIAの名が世界中に知られるようになった。 アメリカの情報機構は大統領の下にある国家安全保障会議(NSC)を頂点とする膨大な組織からなっている。NSCはアメリカ国家政策の方針決定の最高機関で,大統領,副大統領,国務長官,国防長官,緊急計画局長,財務長官が常任のメンバーで,これに国家安全保障問題担当大統領特別補佐官と統合参謀本部議長が加わる。…

※「国家安全保障会議」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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