米国家安全保障会議(NSC) 米政府の外交・安全保障政策に関する最高意思決定機関。1947年の国家安全保障法で創設された。大統領が議長を務め、副大統領、国務、国防の各長官、統合参謀本部議長、国家情報長官らで構成される。各省庁から出向する官僚や政治任用の専門家らがNSCスタッフとなり、大統領らの政策立案を支える。国家安全保障問題担当の大統領補佐官が事務方スタッフを統率する。米NSCをモデルにした日本版NSCが2013年末に発足した。
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安全保障に関する課題を審議する政府機関。第2次安倍政権が米国のNSCをモデルに発足させた。首相が議長となり、外相、防衛相、官房長官の4大臣会合で中長期の戦略や、北朝鮮のミサイル発射などの対応を議論する。重要事項を審議する際は、財務相らも参加する9大臣会合を開く。会議の内容は、ほとんど公表されない。内閣官房に事務局の国家安全保障局(NSS)があり、外務、防衛両省などの出向組を中心に構成されている。
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日本の安全保障に関する重要事項を審議する機関。日本政府における行政機関の一つ。2013年(平成25)12月、「国家安全保障会議設置法」(旧法律名は安全保障会議設置法(昭和61年法律第71号)。平成25年法律第89号による改正で改称)に基づき、それまでの安全保障会議にかわり内閣に設置された。アメリカ政府における国家安全保障会議(NSC(エヌエスシー):National Security Council)を参考に設置され、「日本版NSC」とよばれることもある。
第二次世界大戦後の日本においては、政治レベルにおける安全保障の基本方針を審議する機関として、1956年(昭和31)に国防会議、1986年には国防会議を改組した安全保障会議が設置された。これらは安全保障政策の基本方針を策定するとともに、自衛隊に対する文民統制(シビリアン・コントロール)という機能も担ってきた。国家安全保障会議は、安全保障会議を直接の前身とし、それを拡大・強化するかたちで設置された。国家安全保障会議の設置に際し重視されたことは、(1)日本の安全保障にかかわる諸課題について、政治レベルで日常的に審議し方針を定めること、(2)安全保障会議から「9大臣会合」を継承し文民統制機能を維持すること、(3)想定外の緊急事態が起きた場合も、国家安全保障会議が迅速に対処できること、(4)事務局となる強化された国家安全保障局を新設し、恒常的に国家安全保障会議をサポートするとともに、安全保障に関する企画立案・総合調整に専従させること、などである。
安全保障会議から継承された「9大臣会合」に加えて、新たに「4大臣会合」と「緊急事態大臣会合」が創設された。「4大臣会合」は、内閣総理大臣を議長とし、官房長官、外務大臣、防衛大臣の4人で構成され、「外交・防衛政策の司令塔」として随時、開催され、安全保障政策の基本的な方向性を定める。設置以来、毎月、1~2回の頻度で開催されており、北朝鮮による核実験、長距離弾道ミサイルの発射など緊張を高める事態が発生した場合は、1か月に6回開かれたこともある。「9大臣会合」は、「4大臣会合」のメンバーに、副総理、総務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、国家公安委員長が加わる(副総理を加えると10人のようであるが、副総理は、ほとんどの場合、総理大臣を除く8人の大臣のうちのいずれかが指定されているので「9大臣会合」となる)。文民統制の機能を担う「9大臣会合」は、防衛計画の大綱をはじめとする防衛力整備について、国連平和維持活動への参加、ソマリア海域における海賊対処行動など自衛隊の運用について、防衛技術・装備品の海外への移転にかかわる原則について、日本に対する武力攻撃事態が発生した場合の対処方針について、など「国防に関する重要事項」について審議を行う。「9大臣会合」は、必要に応じて開催され、一年に4~10回の頻度で開かれている。「緊急事態大臣会合」は、「4大臣会合」、「9大臣会合」が想定しきれない重大かつ緊急に対処が必要な事態が発生した場合にも、迅速・適切に対処できるよう新たに設置された。たとえば、領海侵入・不法上陸など軍事衝突とはいえないが軍事衝突一歩手前の事態、放射性物質によるテロ攻撃など攻撃を行った国が不明か国以外のテロ組織などによる場合や、大量の難民が日本に押し寄せ国内の治安が一気に悪化するような事態が考えられていた。想定外の事態に対処する必要上、総理大臣と官房長官以外は、参加者は固定されず、会合の趣旨にあう各省大臣が招集される。「緊急事態大臣会合」は、一種の保険であり、この会合が開催される事態には至らないのではないかという意見もあったが、2020年(令和2)1月、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行に対処するため「緊急事態大臣会合」が、初めて開かれた。
国家安全保障会議の運営を支援するスタッフ機能の強化も行われた。国家安全保障担当の総理補佐官が常設とされ、事務局となる国家安全保障局が内閣官房に新設された。国家安全保障局は、外務省と防衛省の出身者を中心に約90名の人員で構成されており、トップである国家安全保障局長は、内閣危機管理監と密接に協力しながら職務にあたる。国家安全保障局は、国家安全保障会議を恒常的にサポートし、緊急事態に際しては必要な提言を行い、外交・防衛政策の基本方針・重要事項の企画立案・総合調整に専従する。また、内閣レベルにおける情報機関をもたない日本において、外務省、防衛省、法務省(公安調査庁)、国土交通省(海上保安庁)、経済産業省、警察庁、内閣情報調査室などの省庁が、個別に収集した安全保障に関する情報を、内閣レベルで集約する機能も果たしている。さらに、官房長官を長とし、各省庁の局長レベルで構成される「事態対処専門委員会」が設置されており、緊急事態が発生した場合には、調査・分析を行い、国家安全保障会議に対し必要な進言を行う。
[山本一寛 2020年6月23日]
略称NSC。アメリカの安全保障政策決定過程における最高諮問機関。1947年の国家安全保障法に基づき設置され、大統領に対し国の安全保障に関する内政、外交および軍事政策の統合、調整についての助言を行い、軍隊と各省庁間の協力体制をより確かなものにすることを任務とする。49年修正法で大統領府に置かれている。同会議の法定構成員は、大統領(議長)、副大統領、国務長官、国防長官であり、統合参謀本部議長および中央情報局(CIA)長官がそれぞれ法定の軍事顧問、情報顧問である。大統領補佐官、大統領補佐官代理および事務局長で事務局を構成する。会議は定期的に開かれるが、会議の運営方法(付属委員会の名称など)や会議の助言を尊重する度合いはそのときの大統領により異なる。大統領の命令で構成員、顧問以外の関係者が出席することも多い。下部組織として中央情報局が置かれている。
[亀野邁夫]
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(大迫秀樹 フリー編集者 / 2013年)
(細谷正宏 同志社大学大学院アメリカ研究科教授 / 2007年)
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…しかし,20世紀に入り,国家機能の拡大に伴い行政業務も増大し,ことにF.D.ローズベルト大統領時代に,内にニューディール,外に第2次大戦と,政府の機能は飛躍的に拡大し,大統領の強い政治指導が要請されるにいたった。ここに多忙な,強力であるべき大統領にとってその分身ともいうべき側近が必要とされ,ローズベルトの時代にはブレーン・トラストとしてスタッフが強化されたが,1939年には大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,今日ではホワイト・ハウス事務局,管理予算局,国家安全保障会議,中央情報局(CIA)など強力な機関が各省と別に大統領に直属している。ことに,ホワイト・ハウス事務局の補佐官は,大統領の政策決定に大きな影響力をもち,大統領とこれらのスタッフに広範な権限が集中され,ついにはニクソン大統領時代の〈帝王的大統領〉制との批判をうけるまでにいたる。…
…国防の基本方針,防衛計画の大綱,防衛計画に関連する産業などの調整計画の大綱,防衛出動の可否などについてはこの会議にはからなければならないとされ,これに加えて〈通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な〉国家の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事態への対処について,総理大臣がこの会議にはかる,としている。先進民主主義国家においては,安全保障会議と類似の組織を有する例が多く,アメリカでは国家安全保障会議がこれに相当する。文民統制の観点から,これらの国々において,軍人はメンバーに含まれないのが通例である。…
…OSSは45年9月にいったん解散されたが,46年1月中央情報本部(CIG)として復活,47年9月にCIGに代えCIAが発足,ダレスA.Dullesが長官となり,CIAの名が世界中に知られるようになった。 アメリカの情報機構は大統領の下にある国家安全保障会議(NSC)を頂点とする膨大な組織からなっている。NSCはアメリカ国家政策の方針決定の最高機関で,大統領,副大統領,国務長官,国防長官,緊急計画局長,財務長官が常任のメンバーで,これに国家安全保障問題担当大統領特別補佐官と統合参謀本部議長が加わる。…
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