国税についての基本的な事項および共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、税務行政の公正な運営を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする法律である(1条)。その立法の際には、わが国税制の全般にわたって検討がなされ、1961年(昭和36)の税制調査会の答申を経て、1962年に同法が制定された(昭和37年法律第66号)。これに伴い、国税徴収法の一般的・通則的な規定は国税通則法に移された。
国税通則法制定前においては、(1)租税債権の成立や確定に関する通則的規定がない、(2)租税の賦課および徴収に関するそれぞれの期間制限に関し、両者の性質上の区別が明確にされていない、(3)申告納税方式、賦課課税方式のそれぞれの意義について明文の規定がない、(4)申告、修正申告および更正決定の相互間における法律効果が明らかでない、などの問題が存在した。1962年(昭和37)の国税通則法の制定は、このような問題を解決するとともに、税法の簡易平明化、税制の改善合理化を図ろうとするものであった。その後、数多くの改正を経ている。
国税通則法は、10章128条からなる。その内容は、総則、国税の納付義務の確定、国税の納付および徴収、納税の猶予および担保、附帯税、国税の更正、決定、徴収、還付などの期間制限、行政手続法との関係、不服審査および訴訟、雑則、罰則、である。
租税の納付が正しく行われている通常の場合には、所得税法、法人税法などの各税法の諸規定の範囲で処理が可能であって、国税通則法に拠(よ)るところはそれほどないといってよい。しかし、たとえば、納税義務が不完全にしか履行されない場合には、それを是正するために、期限後申告、修正申告、更正の請求、更正決定などの手続が必要となり、また更正決定などの課税処分を不服とする納税者に対する救済制度が必要となる。国税通則法は、各税法に共通するこのような要請を受けて、統一的な規定を定めたものである。国税通則法はこの意味において、各税法の一般法という地位にあるが、各税法において別段の定め(特別法)がある場合には、その定めが優先する。
一般行政領域に適用される行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法に対する国税通則法の関係は、それぞれ一般法と特別法との関係にある。また、国税通則法には、更正決定などの課税処分(不利益処分)に対する行政手続法の適用除外、裁判所に提訴する前に行政上の不服申立てを経ていなければならないとの不服申立前置主義の強制、などの特別の定めがあり、これらの規定が優先的に適用される。
[田中 治]
国税(本法では,国税のうち,関税・とん税・特別とん税を除いたもの--内国税--をさす)に関する基本的な事項および共通的な事項を定める法律。1961年の税制調査会の〈国税通則法の制定に関する答申〉(税制調査会第二次答申)を受けて,日本の税法の体系的な整備を図るために,62年に初めて制定された。このような租税に関する独立の通則的法律を有する国としては,ドイツが代表的である。日本において通則的事項を定める租税法律には,このほかに滞納処分等に関し規定する国税徴収法,租税犯則事件の処理に関する国税犯則取締法がある。
この法律は,租税手続を中心にして,国税の納付義務の確定,納付・徴収,納税の猶予・担保,国税の還付・還付加算金,付帯税,徴収権の消滅時効,不服審査・訴訟などについて定めている。納付義務の確定方式は,ほとんどの国税について申告納税制度とし,それを担保するための加算税に関する規定を置いている。不服審査については,70年の改正により,審査請求の審理・裁決を行うための機関として国税不服審判所が設けられた。また国税に関する処分の取消訴訟については,審査請求前置主義を採用している(115条1項)。制定時に議論された〈実質課税の原則〉は,異論もあったため明文化されるに至らなかった。
執筆者:碓井 光明
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…租税【林 正寿】
[国税に関する法律]
所得税法,法人税法,相続税法,消費税法というように,税目ごとに単独の法律があって,それぞれの納税義務者,課税物件,課税標準,税率等について定めており,さらに,それぞれの法律の定めを補充するため政令(施行令),省令(施行規則)が制定されている。また,各国税に関する基本的な事項ないし共通的な事項について定める法律として,国税通則法,国税徴収法,国税犯則取締法および災害減免法(〈災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律〉の略称)がある。国税通則法は,日本の国税に関する法律が多数の単独法からなり,規定が重複したり,不備・不統一であったうえ,租税法律関係について種々の疑義が生じていたため,租税法の体系的整備と租税法律関係の明確化を目的として制定されたものである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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