デジタル大辞泉 「行政不服審査法」の意味・読み・例文・類語
ぎょうせいふふくしんさ‐ほう〔ギヤウセイフフクシンサハフ〕【行政不服審査法】
[補説]本来、行政機関の行為に対して、国民が不服を申し立てる手続きを定めたものだが、国が地方公共団体の行政措置を不服として申し立てた事例もある。平成27年(2015)および平成30年(2018)に、沖縄県が、米軍普天間飛行場の移転先となる
行政上の不服申立てに関する一般法。昭和37年法律第160号。行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為について簡易迅速な救済手続を定める。行政不服審査は行政庁に対する不服申立てである点で、裁判所に救済を求める行政訴訟と区別され、また、行政処分がなされた後の事後救済手続である点で、処分前に被処分者等の言い分を聴く告知、聴聞等の事前手続と区別される。不服申立て事項はいわゆる一般概括主義で、国民の法律上の利益を直接に侵害する行政処分その他の公権力活動はすべて不服審査の対象となるのが原則である。不服申立ての種類は、処分庁または不作為庁に対する異議申立てと、それ以外の行政庁に対する審査請求があり、処分庁に上級行政庁があるときには後者を原則とする。さらに再審査請求ができる場合がある。審査請求や異議申立ては処分を知ってから60日以内にしなければならないのが原則である。審理手続は書面審理主義を原則としつつ、不服申立人からの請求があれば、かならず口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。また、不服申立人には処分庁の弁明書をみて、これに対し反論書を提出する権利が認められ、さらに、証拠書類、証拠物を提出する権利がある。審理の進行については、当事者進行主義をとる民事訴訟と異なり職権主義的色彩が濃い。不服審査の裁決では不服申立人の不利益に当該処分を変更することはできない(不利益変更禁止の原則)。本法の不服申立てルールは複雑で例外も多く、ルールを見誤って救済の機会を失う者が少なくない。そこで行政庁は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てをすることができる期間を教示しなければならないとされている。
[阿部泰隆]
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…さらに,行政裁判法(1890公布)および行政事件訴訟特例法(1948公布)のもとでは,訴願に対する裁決を経た後でなければ訴訟を提起することができないという〈訴願前置主義〉が原則とされていたため,このような訴願制度は,国民の権利利益の迅速な救済を阻んでいた。しかし,訴願法は,その欠陥を指摘されながらも,行政不服審査に関する現在の一般法である行政不服審査法(1962公布)の成立によって廃止されるまで,一度も改正されることがなかった。
[現行制度]
これに対して,行政不服審査法は,簡易迅速な手続により国民の権利利益の救済を図ることと,行政の適正な運営を確保することとをその目的としているが(1条1項),前者を主たる目的としている点で,訴願法に比べれば格段の改善を図っている。…
…なお,裁決のこのような性質から,裁決をした行政庁は,後において裁決に誤りがあることを発見しても,これを取り消したり変更したりすることは許されない。(1)行政不服審査法は,行政不服審査を求める不服申立ての一種である審査請求または再審査請求に対して,審査請求または再審査請求をうけた行政庁が行う判断を,裁決と呼んでいる。この裁決には,却下の裁決,棄却の裁決,および認容の裁決がある。…
※「行政不服審査法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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