地質学的には,剛体的な挙動をするとみなすことのできる地殻の一部であって,多くの場合,隣接部分とは断層によって境されている。地殻は,大小さまざまな規模の地塊から成ると考えられるが,安定地塊,大陸地塊などと呼ばれるものは,なかでも最も大規模なものである。
地塊の運動を地塊運動block movementといい,その性質は地塊の境界となっている断層の運動様式で特徴づけられる。断層の運動様式には,断層面の走向に平行な移動成分の大きい〈横すべり〉型のものと,断層面の傾斜方向に沿う移動成分の大きい〈縦すべり〉型のものとがあり,さらにこのほかに回転を伴う型の運動もある。これらによって,相対的な隆起,沈降,水平移動,傾動など各種の地塊運動が発生するのである。
地塊には種々な形態のものがある。地塁や地溝は細長い地塊であり,ドームや盆地構造には円形に近い地塊に由来するものがある。大きな地塊の境界断層は単一ではなく,複数のものの組合せである場合が多い。東アフリカ大地溝帯のように長さ4000kmにも及ぶ最大規模のものでは,両側に複雑な断層群が発達し,内部には火山や浅発地震が分布し,単純な地塊と考えることはできない。
地塊運動で形成された山地や盆地の断面図をつくってみると,かつてほぼ水平であったはずの地形面や地質境界面が,一定の方向に傾斜していることがある。このことは,これらの山地や盆地をつくっている地塊が全体として均等に隆起・沈降を行ったのではなく,垂直運動の量にこう配があったこと,つまりこの地塊が水平方向の軸のまわりに回転しつつ隆起・沈降したことを意味する。このような運動を傾動といい,傾動運動を行った地塊を傾動地塊という。断層でかこまれた地塊が沈降してできた盆地を断層盆地というが,この地塊が傾動している場合には特に,傾動盆地または断層角盆地という。地塊は個々に独立の運動を行うこともあるが,隣接する一連の地塊群が一定の傾向を持った運動を行った結果,規則的な地質構造を形成する場合がある。実際には,地塊山地,断層盆地,地塁,地溝などはこのような複合地塊である場合が多い。
地塊運動の根本原因については未解決の問題が少なくないが,垂直方向の運動を主体とするものは造山運動末期の造山帯や,安定陸塊内部の地塊などに特徴的な地殻運動で,地塊内部が変形を受けたり乱されたりすることはほとんどない。これに対して,造山運動の最盛期(造山期)に形成される地塊は,横臥(おうが)褶曲の進行に伴って発生する褶曲体下底の低角衝上断層による水平方向の大きな移動を特徴とする。ナップ(横移地塊)やクリッペ(根無し地塊)といわれる地塊がこれに当たり,大きな褶曲山脈はこれらの積み重なりでできていることが多い。
執筆者:植村 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)礫(れき)の粒径の一区分として、角礫状の巨礫(ボールダーboulderともいい、粒径256ミリメートル以上)をさしていう場合と、(2)断層で限られた地殻の断片、すなわち断層地塊の同義語として用いられる場合がある。(2)の場合、測地学的地塊、地質学的地塊、地形学的地塊の三つの型の地塊が考えられる。
断層で限られた大小さまざまな地塊(ブロックblock)は、時代的に異なった断層運動(地塊運動)で形成される。測地学的地塊は、精度の高い水準測量の改測資料から判明する地殻表面部の断層地塊をさしている。日本では1920年代~1930年代に水準測量の改測資料によって、肉眼では観察できない地塊の微細な差別運動が明らかにされた。このことから詳しくみると、寄木細工のような複雑な地塊構造の一部が、新しい地塊運動の影響を受けていることが推定されるようになった。
地質学的地塊には、海洋地塊、大陸地塊、楯状地(たてじょうち)地塊などのように地質学的大構造単元、不整合面下にある断層地塊や侵食で平坦(へいたん)化された断層地塊などがある。また、地形学的地塊は、断層山地や断層盆地などのように、地形の起伏に現れた断層地塊をいう。このタイプの地塊の発達は、カレドニア造山運動やバリスカン造山運動などが行われた地帯や、アルプス‐ヒマラヤ造山帯や環太平洋造山帯などに顕著にみられる。
[有井琢磨]
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