地蔵峠(読み)じぞうとうげ

日本歴史地名大系 「地蔵峠」の解説

地蔵峠
じぞうとうげ

[現在地名]長野市松代町豊栄、小県郡真田町傍陽

松代城下から関屋せきや村・赤柴あかしば村を経て、小県ちいさがた郡軽井沢(現真田さなだ町)に至る郡境の峠。標高一一〇〇メートル。峠は古くより小県郡と北信濃を結ぶ最短距離の道として、近世には上田城下と松代城下を結ぶ松代道として、また北国脇往還裏道でもあった。

「千曲之真砂」に宝暦年中(一七五一―六四)禰津ねつ(現小県郡東部町)より地蔵峠を越して松代へ出ル道」として、

<資料は省略されています>

海津城築城以前よりあったと伝える松代町日蓮蓮乗れんじよう寺の寺伝によれば、その開山久竜源吉は文永八年(一二七一)一〇月、日蓮が佐渡流罪の時地蔵峠に日蓮を迎え、戒を受けて帰依し蓮乗院日縁と号したといい、同一一年二月、日蓮赦免後鎌倉に帰る際またこれを迎え、蓮乗院海津寺を建立したという(松代町史)


地蔵峠
じぞうとうげ

現本城村と現小県ちいさがた青木あおき村を結ぶ峠。筑摩郡と小県郡を結ぶ諸峠のうちでも、松本上田をつなぐ中世からの重要な峠である。峠の辺りは第三紀層の水成岩地帯で、険しい山容をなしている。

峠への道は二つある。筑北地方(現本城村方面)からは、江戸時代の北国西脇往還(善光寺道)の通る西条にしじよう(現本城村)から東へ東条ひがしじよう川をさかのぼり、立川たちかわ番所を経て大沢新田おおさわしんでんから登る。一方、明科あかしな(現明科町)からは、嶺間れいかん盆地の会田あいだ宿(現四賀しが村)を通ってなか川をさかのぼり、横川よこかわ番所・会吉新田あいよししんでんを経て峠にのぼる。


地蔵峠
じぞうとうげ

小県郡禰津ねつ村(現東部とうぶ町)と上野国吾妻あがつま大笹おおざさ村(現群馬県吾妻郡嬬恋つまこい村)との境にある峠。標高一七三三メートル。この峠一帯は上代の御牧、新治にいはり牧(のち新張みはり牧)の放牧地と推定されている。禰津村新張(現東部町)から峠を越えて山の湯(現鹿沢かざわ温泉)までの間に、天明年間(一七八一―八九)一〇〇体の石造観音像が湯治客の旅の安全と道標をかねて立てられたと伝える。新張の入口に一番、峠の中腹に五十番、峠の峰に八十番、山の湯の入口に百番の観音像、そのほか多くの像が現在も道筋に立つ。この峠を越え上野国側にある山の湯一帯辺りまでが古くは禰津村分であったが、明暦二年(一六五六)上野国吾妻郡大笹村と、信濃国小県郡禰津村との間に境界論争が起こり、元禄一四年(一七〇一)六月二三日、幕府の裁断により、峠の峰筋が信濃・上野両国の国境と定められた(「幕府裁許絵図」小県郡史)


地蔵峠
じぞうとうげ

[現在地名]開田村大字末川・木曾福島町新開 黒川

木曾福島きそふくしま町から岐阜県の高山たかやま市へ抜ける、江戸時代は飛騨往還高山ひだおうかんたかやま道といった街道の黒川くろかわ(現木曾福島町新開黒川)から末川すえかわ(現開田村大字末川)へ越す標高一二三五メートルの峠が地蔵峠である。

宝暦七年(一七五七)の「吉蘇志略」に「(駕疲嶺)末川路也、山径嶮阻輿隷大疲、因以為名」とある「駕疲かごつかれ嶺」が現在の地蔵峠のことである。当時駕疲峠といい、「地蔵峠」とはよんでいなかったことがわかる。

天保九年(一八三八)の「木曾巡行記」には「二本木・一の萱といふ人家を過て辛沢峠といふけはしき坂を登り此の間壱里ばかり、檜・椹の茂山多し、(中略)頂上より南を望めば福島・宮越眼下にみえ、駒嶽よき景なり。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地蔵峠」の意味・わかりやすい解説

地蔵峠
じぞうとうげ

長野県西部、木曽(きそ)郡木曽町福島地区と開田(かいだ)地区の境にある峠。標高1335メートル。木曽川の支流黒川の原流部にあたる。江戸時代には飛騨往還(ひだおうかん)高山(たかやま)道が通じていた。また、かつて国道361号が通ったが、3.2キロメートル北東の山腹に新地蔵トンネルが開かれ迂回ルートに変わったことにより旧道となった。峠には旅人の安全を祈る地蔵が安置され、開田地区方向に少し下った展望台からは御嶽山(おんたけさん)の全容を望む。眼下には標高1200メートルの開田地区が広がり、右手には乗鞍岳(のりくらだけ)を望む。なお、長野県には地蔵峠とよばれる峠がこのほかに5か所ある。

[小林寛義]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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