墨俣(読み)すのまた

精選版 日本国語大辞典 「墨俣」の意味・読み・例文・類語

すのまた【墨俣】

  1. 岐阜県南西部の地名長良川河港として発達し、江戸時代美濃路宿駅が置かれた交通、戦略上の要地豊臣秀吉築城の一夜城墨俣城)跡がある。木曾川・長良川・揖斐(いび)川などの合流点につくられた州にあるために呼ばれたもので、洲俣、墨股などとも書かれる。

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日本歴史地名大系 「墨俣」の解説

墨俣
すのまた

洲俣・須俣・洲股などとも記す。天正一四年(一五八六)頃より以前、木曾川は現町域の東(現境川筋付近)で長良川に合流し、北部の本巣もとす郡・大野郡の河川も合流して、あたかも洲の俣の形状を呈していたという。往古、墨俣から南の長良川は墨俣川ともよばれた(墨俣町史)。そのため古代・中世における墨俣は、現町域およびその付近の広域地名とも考えられ、水陸交通の結節点であった。承和二年(八三五)六月二九日の太政官符(類聚三代格)によると「尾張美濃両国堺墨俣河」などは「東海東山両道之要路」とみえ、渡船が二艘から四艘に加増され、両岸に布施屋二ヵ所が造立されている。「宇治拾遺物語」によると、壬申の乱に際し、大友皇子軍に追われた大海人皇子は「すのまたのわたり」において、某女の機転によって湯船に隠れ、難を逃れたという。「更級日記」にも「美濃の国になる境に、墨俣といふ渡りして」とみえ、古代からの渡場であったことが知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「墨俣」の意味・わかりやすい解説

墨俣
すのまた

岐阜県南西部、安八郡(あんぱちぐん)にあった旧町名(墨俣町(ちょう))。現在は大垣(おおがき)市の飛び地で、安八町を挟んで東方に位置する。旧墨俣町は1894年(明治27)町制施行。1897年西橋、下宿(しもじゅく)、二ツ木村と合併。2006年(平成18)大垣市編入。旧町の中心地区は長良川(ながらがわ)の西岸で、支流の五六(ごろく)川、犀(さい)川などの合流点の南側にある。長良川の東岸では、かつて旧木曽(きそ)川(現境(さかい)川)が合流していたこともあり、一帯は「洲(す)の俣(また)」とよばれた。古くから交通の要衝として源平の合戦、承久(じょうきゅう)の乱、南北朝の内乱など、しばしば戦場となった。江戸時代には美濃路(みのじ)の宿駅でもあった関係で、現在も飲食店の多い商業町である。旧国道21号(県道岐阜垂井(たるい)線)に沿っており、岐阜・大垣中心市街地との交通が便利で、通勤者も多い。旧町域の北東部、長良川沿いに、木下藤吉郎(とうきちろう)(豊臣(とよとみ)秀吉)が井ノ口(岐阜)の稲葉山(いなばやま)城攻略のために築いた一夜(いちや)城(墨俣城)跡がある。

[上島正徳]

『『墨俣町史』(1956・墨俣町)』

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百科事典マイペディア 「墨俣」の意味・わかりやすい解説

墨俣[町]【すのまた】

岐阜県南西部,安八(あんぱち)郡の旧町。揖斐(いび)川長良川に囲まれた輪中(わじゅう)地帯にあり,美濃路の宿場町として発達。岐阜・大垣両市への通勤者が多い。繊維工業も行われる。2006年3月養老郡上石津町と大垣市へ編入。3.39km2。4678人(2003)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「墨俣」の意味・わかりやすい解説

墨俣
すのまた

岐阜県南西部,大垣市東部の飛び地で旧町域。 1894年町制施行。 1974年穂積町の一部を編入。 2006年大垣市に編入。中心集落は揖斐川長良川に囲まれた輪中集落で,美濃路の宿場町として発展。戦国時代には戦略上の要地にあたり,豊臣秀吉の一夜城 (墨俣城 ) もここに築かれた。城跡はサクラの名所として知られる。商工業が中心で,岐阜市などへの通勤者が増加し,住宅地化が著しい。

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改訂新版 世界大百科事典 「墨俣」の意味・わかりやすい解説

墨俣 (すのまた)

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世界大百科事典(旧版)内の墨俣の言及

【木曾川】より

…木曾川西岸河口部には深層地下水を汲み上げて成立した長島温泉があり,名古屋大都市圏の保養地,遊園地としてにぎわっている。【溝口 常俊】
[歴史]
 古くは吉蘇川,岐蘇川とも書き,所によって,広野川,鵜沼川,境川,墨俣(すのまた)川とも称された。水源地の木曾は森林資源が豊かで,信濃・美濃両国が帰属をめぐって争い,879年(元慶3)美濃に所属することに定められた。…

※「墨俣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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