多血症(読み)タケツショウ(その他表記)polycythemia

デジタル大辞泉 「多血症」の意味・読み・例文・類語

たけつ‐しょう〔‐シヤウ〕【多血症】

血液の絶対量、特に赤血球が多い状態。赤血球増加症

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精選版 日本国語大辞典 「多血症」の意味・読み・例文・類語

たけつ‐しょう‥シャウ【多血症】

  1. 〘 名詞 〙 血液中の赤血球の量が異常に増加する症状。中年の男子に多く見られ、慢性化する場合が多い。〔医語類聚(1872)〕

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家庭医学館 「多血症」の解説

たけつしょうせっけっきゅうぞうたしょう【多血症(赤血球増多症) Polycythemia】

[どんな病気か]
 血液中の赤血球数ヘモグロビンの量が基準値(「Hb(ヘモグロビン)/Ht(ヘマトクリット」)よりも多くなる病気を、多血症または赤血球増多症といいます。正確には、体内をめぐっている赤血球の量が体重1kgあたり男性は36mℓ、女性は32mℓ以上になった場合を多血症と呼んでいます。
 多血症には、骨髄(こつずい)の造血細胞(ぞうけつさいぼう)が腫瘍(しゅよう)性に増殖しておこる真性多血症(しんせいたけつしょう)と、造血の量を調整するホルモン(エリスロポエチン)の分泌(ぶんぴつ)が増えておこる二次性多血症(にじせいたけつしょう)があります。血液が濃縮されて見かけ上、多血症のようになることもあります(ストレス多血症(たけつしょう))が、これはとくに治療の必要はありません。
[症状]
 頭痛、皮膚のかゆみ、視力障害、顔面や結膜(けつまく)(白目(しろめ))の充血脾臓ひぞう)の腫(は)れなどがおこります。
 血栓(けっせん)ができやすくなって脳梗塞(のうこうそく)などがおこったり、高血圧をともなうことがあります。また、痛風(つうふう)、消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)などもおこりやすくなります。
[検査と診断]
 採血して調べると、ヘモグロビン、赤血球、ヘマトクリットが増加しています。循環赤血球量を調べる検査をすると、増加しています。
 血液のねばりけが増し、血中の尿酸値も、しばしば増加します。
 二次性多血症では、エリスロポエチンの増加がみられますが、その原因を調べるには、血漿中(けっしょうちゅう)のエリスロポエチンの活性測定をします。
[治療]
 真性多血症か二次性多血症かで、治療法はちがいます。
●真性多血症の治療
 循環赤血球量を基準値まで減らすことを目標にしますが、実際はヘマトクリット値を45~50%にするよう治療するのがふつうです。その方法として、瀉血(しゃけつ)、化学療法放射線療法の3つがあります。
 瀉血は血液を抜くことで、週1~2回、300~400mℓの血液を抜きとります。この効果は一時的で、緊急時に行なわれます。
 化学療法は、抗白血病薬(こうはっけつびょうやく)であるブスルファンやヒドロキシカルバミドを使用し、骨髄で赤血球がつくられるのを抑えますが、抑えすぎないように気をつけます。また、この化学療法の副作用で、出血傾向や骨髄線維症(こつずいせんいしょう)がおこることがあるので、その検査のためにも、定期的な血液検査が必要です。
 放射線療法は、32Pというリンの放射性同位元素を服用し、その放射線で骨髄の造血を抑える方法ですが、日本ではあまり行なわれていません。
●二次性多血症の治療
 エリスロポエチンの分泌を促進している原因を取り除きます。
 たとえば、エリスロポエチンを分泌する腫瘍(しゅよう)があれば摘出し、先天性の心臓病があれば、できれば手術します。
 また、高所での生活や喫煙も原因となりますので、注意します。
 脳梗塞などの脳血管障害をおこす危険があるときは、まず瀉血を行ない、つぎに化学療法を行ないます。

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改訂新版 世界大百科事典 「多血症」の意味・わかりやすい解説

多血症 (たけつしょう)
polycythemia

末梢の血液に赤血球が増加し,ヘマトクリット値が上昇している状態をいい,赤血球増加症と同じ意味で用いられる。多血症には,全血液中の赤血球数は正常であるが,なんらかの原因で末梢血液で増加する相対的多血症と,総赤血球数が増加する絶対的多血症がある。相対的多血症は,激しい嘔吐や下痢,やけどなどによる脱水や腎臓障害によって体液が失われた結果,見かけ上,赤血球数が増える場合と,本態は不明であるが血液の分布状態に変化が起こって,末梢血液のみに赤血球数が増える場合とがある。後者は,やや肥満して血圧の高い中年の男子で,ストレスの多い状態にあるときによくみられることから,ストレス多血症といわれる。症状としては頭痛やめまいがみられる。絶対的多血症には,赤血球系細胞の異常増殖による真性多血症と,高所滞在や心肺機能の低下,腎臓のエリトロポエチンの産生亢進などによる二次性多血症がある。高所滞在など酸素分圧の低いところで起こる場合は生理的な代償作用なので,普通の状態に戻ればほどなく正常となるが,その他の例では頭痛,赤ら顔,循環障害,出血,血栓などがみられる。
血液 →血球
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多血症」の意味・わかりやすい解説

多血症
たけつしょう

赤血球増加症」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の多血症の言及

【血液】より

…最も多い原因はヘモグロビンの原料となる鉄分が不足するもので,月経過多,痔や胃潰瘍などによる長期に及ぶ出血が先行していることが多い。貧血に対して赤血球数が増加する病気を赤血球増加症(多血症)といい,腫瘍性増殖によるものと,心臓や肺疾患のために生ずる続発性のものがある。(2)白血球の異常による病気 癌のように白血球が無秩序に増殖し,そのため役にたつ正常の白血球や赤血球,血小板の産生が妨げられるのが白血病である。…

※「多血症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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