[ 二 ]は天平八年(七三六)に林邑(りんゆう)国(現在のベトナム)の僧、仏哲が伝えた林邑八楽の一つで、日本ではふつう「鳥」「鳥の舞」と呼ばれ、法会などの折に右舞の「胡蝶(こちょう)」と番(つが)えて舞われた。
雅楽,舞楽,管絃の曲名。迦婁賓,迦陵頻伽,伽陵頻とも書き,不言楽,鳥ともいう。唐楽,壱越(いちこつ)調,四人舞,童舞(どうぶ)。番舞(つがいまい)は《胡蝶》。童髪に天冠(てんがん),足に脚絆,背中に鳥の羽をかたどったものをつけた別装束で,両手に銅拍子を持って舞う。天竺の祇園寺の供養の日に,迦陵頻(極楽浄土の鳥)が舞い下りたのをみて,妙音天がこの曲を奏したといい,婆羅門僧正が日本に伝えたという記録があるが,確かではない。日本でも現在,仏供養の法会に《胡蝶》とともに舞う。古くは,序(2帖),破(3帖),急(1帖),詠詞とあったが,現在は急のみ伝わる。演奏次第は,《林邑乱声》(舞人登場),《迦陵頻音取》(三管音頭と羯鼓(かつこ)が同時に奏する合(あわせ)音取)-急(早八拍子,拍子8,当曲舞)。急の曲のうちに舞人退場。登・退場のとき,拍子に合わせて銅拍子を打ち合わせながら舞うが,これは迦陵頻の鳴声を模したものという。破の渡物《鳥》破が双調(そうぢよう)に,急の渡物《鳥》急が双調と黄鐘調にある。壱越調の曲は《迦陵頻》というが,双調や黄鐘調では必ず《鳥》と呼ぶ。
執筆者:加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
雅楽の曲名。「迦陵頻伽(かりょうびんが)」「不言楽(ふごんらく)」ともいう。雅楽の唐楽曲で、舞楽・管絃(かんげん)両方がある。林邑(りんゆう)八楽の一つ。壱越調(いちこつちょう)が原曲。双調(そうじょう)に破と急、黄鐘調(おうしきちょう)に急の渡物(わたしもの)(一種の移調曲)があり、これらは鳥破(とりのは)・急などとよぶ。舞は童舞(どうぶ)四人舞。迦陵頻伽は天来の妙音をさえずる極楽の霊鳥として平安時代より書物にみられるが、この楽曲では、祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の供養の日に極楽からその鳥が飛んできて舞い遊んだので、そのようすを妙音天が楽舞に仕立て阿難尊者(あなんそんじゃ)に伝えたという伝説がある。舞人の稚児(ちご)たちは、頭上には紅梅で飾った天冠(てんがん)、背には鳥をまねた極彩色の羽をつけ、両手に銅拍子(どびょうし)を持って打ち鳴らしつつ舞う。同じ童舞である番舞(つがいまい)の『胡蝶(こちょう)』とともにその可憐(かれん)な舞い姿が愛されている。
[橋本曜子]
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