天香久山(読み)あめのかぐやま

日本歴史地名大系 「天香久山」の解説

天香久山
あめのかぐやま

古くは天之香具あめのかぐ山・天之香来山・天之芳来山・天之芳山(万葉集)、天香山(古事記、日本書紀)、天加具山(「伊予国風土記」逸文)と書き、「古事記」景行天皇段の歌謡に「阿米能迦具夜麻あめのかぐやま」とあり、天平三年(七三一)の住吉大社司解(住吉神社所蔵)に「天香个山」とみえるが、アメノカガヤマとも読んだものか。単にカグヤマとも称し、香山(日本書紀)・賀久山(続日本紀)・高山(万葉集)と書いた。近世には指山とも記され(南浦町の上田家文書)、天指山ともよばれたようである(磯城郡誌)

「伊予国風土記」逸文に、天上から降り下ってきた神聖な山としての伝説を載せ、この山にかかる枕詞が「天降あもりつく」である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天香久山」の意味・わかりやすい解説

天香久山(あめのかぐやま)
あめのかぐやま

奈良県中西部、橿原(かしはら)市東部にある小丘陵。標高152メートル。「あまのかぐやま」ともいう。また天香具山とも書かれ、単に香久山、賀久山とも称される。竜門(りゅうもん)山地の多武峰(とうのみね)から北西に延びる尾根の末端に位置し、おもに堅い斑糲(はんれい)岩からなる残丘である。山容はなだらかで樹木に覆われ、山頂からの展望に優れる。畝傍(うねび)山、耳成(みみなし)山とともに大和三山(やまとさんざん)とよばれるが、この山だけが火山性ではない。藤原京の東方を鎮護する神山として古代人の崇敬を集めた。舒明(じょめい)天皇の国見の歌が『万葉集』にあり、また持統(じとう)天皇の歌「春すぎて夏来たるらし白たへの衣(ころも)干したり天(あめ)の香具山」(『万葉集』巻1)は有名。

[菊地一郎]



天香久山(あまのかぐやま)
あまのかぐやま

天香久山

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改訂新版 世界大百科事典 「天香久山」の意味・わかりやすい解説

天香久山 (あまのかぐやま)

大和三山の一つ。奈良県橿原市と桜井市にまたがり,花コウ岩よりなる標高152mの小山。日本神話によると,同名の山が高天原にもそびえると伝承されている。また,《伊予国風土記》逸文には,天から天降った山ともみえている。天香久山の埴土は呪力を有する土で,倭国(やまとのくに)支配の象徴と観念されていた。西麓の橿原市木之本町には,埴土を神格化した畝尾坐健土安(うねおにいますたけはにやす)神社があり,かつて周辺に埴安(はにやす)池も広がっていた。《万葉集》などにもうたわれ歌枕としても著名
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百科事典マイペディア 「天香久山」の意味・わかりやすい解説

天香久山【あまのかぐやま】

奈良県飛鳥(あすか)地方にある小丘で大和三山の一つ。標高152m。花コウ岩からなる。古来名山として,《万葉集》などにうたわれている。

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世界大百科事典(旧版)内の天香久山の言及

【埴安池】より

…大和の天香久山の西麓にあった池。《万葉集》にみえる,柿本人麻呂が高市皇子の死に際して作った挽歌に〈埴安の池の堤〉とあり,〈藤原宮の御井の歌〉にも〈埴安の堤〉が歌われている。…

【大和三山】より

…奈良盆地南東部の畝傍(うねび)山(慈明寺山とも。標高199m),耳成(みみなし)山(140m),天香久(あまのかぐ)山(152m)をいう。三山のうち北に位置する耳成山と南西の畝傍山は火山であるが,南東にある天香久山は堅い岩石が浸食から残ったもの。…

※「天香久山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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