六義(読み)リクギ

デジタル大辞泉 「六義」の意味・読み・例文・類語

りく‐ぎ【六義】

詩経」における詩の六種の分類。内容上の分類にあたるしょうと、表現上の分類にあたるきょう
和歌の六種の風体紀貫之きのつらゆき1を転用して古今集仮名序で述べた、そえ歌かぞえ歌なずらえ歌たとえ歌ただごと歌いわい歌
書道の六種の法。筆法風情ふぜい・字象・去病きょへい骨目こつもく・感徳。
六書りくしょ1
物事の道理
「物の筋道―をたて」〈浄・生玉心中

ろく‐ぎ【六義】

りくぎ(六義)

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精選版 日本国語大辞典 「六義」の意味・読み・例文・類語

りく‐ぎ【六義】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 「詩経」における六種の体。内容上の分類である風・雅・頌と、表現方法上の分類である賦・比・興の総称。また転じて、中国古代詩の諸形式。また、詩の真髄、詩において追求されるべき理想をいう。
    1. [初出の実例]「請分一句於古篇、写六義於新什」(出典:本朝文粋(1060頃)九・遠念賢士風詩序〈菅原文時〉)
    2. [その他の文献]〔詩経大序〕
  3. 和歌における六種の体。そえ歌・かぞえ歌・なずらえ歌・たとえ歌・ただごと歌・いわい歌の総称。「古今集」での「詩経」の六義を和歌に適用していったもの。連歌・俳諧・能楽にもいう。
    1. [初出の実例]「和歌有六義、一曰風、二曰賦、三曰比、四曰興、五曰雅、六曰頌」(出典:古今和歌集(905‐914)真名序)
  4. 和歌。
    1. [初出の実例]「吉野山之春風、従仙駕而献寿、明石浦之秋霧、思扁舟而瀝詞。誠是六義之秀逸、万代之美談者歟」(出典:本朝続文粋(1142‐55頃)一一・柿下人麿画讚〈藤原敦光〉)
    2. 「詩歌は朝廷の翫(もてあそ)ぶ処、弓馬は武家の嗜む道なれば、其慣(ならはし)未だ必しも、六義(リクギ)数寄の道に携らねども」(出典:太平記(14C後)二)
  5. りくしょ(六書)〔晉書‐衛恒伝〕
  6. 書道における六種の法。筆法・風情・字象・去病・骨目・感徳の総称。〔金玉積伝集(近世初か)〕
  7. 狂言和泉流で、狂言の台本のこと。
    1. [初出の実例]「此狂言は昔より六義はなきなり」(出典:天理本狂言・木実論(室町末‐近世初))
  8. さまざまの法式。また、道理。
    1. [初出の実例]「血気盛んにして、後前のりくぎ立たず」(出典:仮名草子・都風俗鑑(1681)一)

ろく‐ぎ【六義】

  1. 〘 名詞 〙りくぎ(六義)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「六義」の意味・わかりやすい解説

六義
りくぎ

中国最古の詩集『詩経(しきょう)』の詩の分類法で、内容別の分類である風(ふう)・雅(が)・頌(しょう)と、形式上の分類である賦(ふ)・比(ひ)・興(きょう)の六つをいう。初出は『詩経』大序と『周礼(しゅらい)』春官であるが、それぞれの意味するところについては古来問題が多い。通説によると、風は風土・風俗の意で、民間の歌謡のこと、雅は正の意で、中原(ちゅうげん)の王朝貴族の雅言(標準語)による歌声、頌は祖先功徳の頌歌をいう。次に、賦は比喩(ひゆ)なしで事実を述べる文体、比は一般に比喩であるが、とくに諷喩(ふうゆ)(アレゴリー)のこと、興については定説がないが、自然の現象と人間の事象を並べる平行法により隠喩(いんゆ)を読み取らせる手法と考えられる。『詩経』がわが国に伝わると、六義は和歌の六種の表現形式に適用された。『古今集』の仮名序で、風・賦・比・興・雅・頌をそれぞれ、「そへ歌、かぞへ歌、なずらへ歌、たとへ歌、ただごと歌、いはひ歌」と言い換えている。そのほか、書道における六種の法(筆法、風情、字象、去病(きょへい)、骨目(こつもく)、感徳(かんとく))をさすこともある。

[加納喜光]

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改訂新版 世界大百科事典 「六義」の意味・わかりやすい解説

六義 (りくぎ)
liù yì

中国最古の詩集《詩経》における詩の六つの原理,あるいは分類法。毛詩の序(《詩経》の大序)に風・賦・比・興(きよう)・雅・頌(しよう)の順にならべて見えるが,実は二つの異なった基準による2種の分類法だとされる。その定義については諸説があるが,ふつう風・雅・頌は詩の内容・性質による分類をいい,風は各国の民謡,雅は宮廷の音楽,頌は宗廟祭祀の楽歌をさす。なお雅はさらに大雅と小雅に分かれる。また賦・比・興は修辞法の区別であり,賦は対象を直叙する方法,比は比喩によって表現する方法,興も比喩を用いるが,必ずあとに比喩された実体を示す表現法をいい,《詩経》の詩はすべてこの3修辞法のいずれかを用いているとされる。なお日本の《古今和歌集》序は,六義を和歌の理論にうつしかえ,風を〈そへうた〉,賦を〈かぞへうた〉,比を〈なずらへうた〉,興を〈たとへうた〉,雅を〈ただごとうた〉,頌を〈いはひうた〉と訳している。
詩大序
執筆者:

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普及版 字通 「六義」の読み・字形・画数・意味

【六義】りくぎ

詩の六義。風・雅・頌と賦・比・興。〔詩、大序〕詩に六義り。〔〕風・は詩の異體なり。賦・比・興は詩の異辭のみ。

字通「六」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「六義」の意味・わかりやすい解説

六義【りくぎ】

古代中国で成立した《詩経》の詩型と表現法による分類。《毛詩》の序(《詩経》の大序)に六義の語があり,風・雅・頌(しょう)・賦(ふ)・比・興(きょう)の6。風は民謡,雅は朝廷の音楽のための詩,頌は宗廟祭祀のとき帝の徳をたたえる楽歌,賦は直叙,比は比喩(ひゆ),興はまず初めに或ることをいい,それによって主題をひき興す法。また主題と逆のことをいって,主題をきわ立たせる反興もある。日本でも《古今和歌集》の序に引用され,和歌を6分類している。
→関連項目奥義抄六義園

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六義」の意味・わかりやすい解説

六義
りくぎ

詩経』大序にみえる中国古代詩の6分類「風」「賦」「比」「興」「雅」「頌」をいう。『古今集』真名序では,これを移して「和歌に六義あり」としている。

六義
りくぎ

狂言の台本。和泉流だけがこの称を用いる。「狂言六義」ともいう。宗家和泉元秀蔵のものは「六議」の字をあてている。

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世界大百科事典(旧版)内の六義の言及

【風】より

…中国の《詩経》にいう六義(りくぎ)(風,賦,比,興,雅,頌)の〈風〉は,〈雅〉〈頌〉とともに内容上の分類を示し,国風(くにぶり)ともいわれ,諸国の風俗・習慣をうたった民謡をいう。日本では古く《古今和歌集》に中国の六義にならった和歌の六義ということが説かれ,連歌でも物によそえて言う〈そえ歌〉のことを〈風〉といった。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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