中国最古の詩集『詩経(しきょう)』の詩の分類法で、内容別の分類である風(ふう)・雅(が)・頌(しょう)と、形式上の分類である賦(ふ)・比(ひ)・興(きょう)の六つをいう。初出は『詩経』大序と『周礼(しゅらい)』春官であるが、それぞれの意味するところについては古来問題が多い。通説によると、風は風土・風俗の意で、民間の歌謡のこと、雅は正の意で、中原(ちゅうげん)の王朝貴族の雅言(標準語)による歌声、頌は祖先の功徳の頌歌をいう。次に、賦は比喩(ひゆ)なしで事実を述べる文体、比は一般に比喩であるが、とくに諷喩(ふうゆ)(アレゴリー)のこと、興については定説がないが、自然の現象と人間の事象を並べる平行法により隠喩(いんゆ)を読み取らせる手法と考えられる。『詩経』がわが国に伝わると、六義は和歌の六種の表現形式に適用された。『古今集』の仮名序で、風・賦・比・興・雅・頌をそれぞれ、「そへ歌、かぞへ歌、なずらへ歌、たとへ歌、ただごと歌、いはひ歌」と言い換えている。そのほか、書道における六種の法(筆法、風情、字象、去病(きょへい)、骨目(こつもく)、感徳(かんとく))をさすこともある。
[加納喜光]
中国最古の詩集《詩経》における詩の六つの原理,あるいは分類法。毛詩の序(《詩経》の大序)に風・賦・比・興(きよう)・雅・頌(しよう)の順にならべて見えるが,実は二つの異なった基準による2種の分類法だとされる。その定義については諸説があるが,ふつう風・雅・頌は詩の内容・性質による分類をいい,風は各国の民謡,雅は宮廷の音楽,頌は宗廟祭祀の楽歌をさす。なお雅はさらに大雅と小雅に分かれる。また賦・比・興は修辞法の区別であり,賦は対象を直叙する方法,比は比喩によって表現する方法,興も比喩を用いるが,必ずあとに比喩された実体を示す表現法をいい,《詩経》の詩はすべてこの3修辞法のいずれかを用いているとされる。なお日本の《古今和歌集》序は,六義を和歌の理論にうつしかえ,風を〈そへうた〉,賦を〈かぞへうた〉,比を〈なずらへうた〉,興を〈たとへうた〉,雅を〈ただごとうた〉,頌を〈いはひうた〉と訳している。
→詩大序
執筆者:一海 知義
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…中国の《詩経》にいう六義(りくぎ)(風,賦,比,興,雅,頌)の〈風〉は,〈雅〉〈頌〉とともに内容上の分類を示し,国風(くにぶり)ともいわれ,諸国の風俗・習慣をうたった民謡をいう。日本では古く《古今和歌集》に中国の六義にならった和歌の六義ということが説かれ,連歌でも物によそえて言う〈そえ歌〉のことを〈風〉といった。…
※「六義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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