17世紀末から18世紀初めを盛期とする,浮世草子好色物を中心とした性に関連する書物。1682年(天和2)の井原西鶴の《好色一代男》の人気が流行を生み,〈好色〉を冠した題の書物が続出し,〈好色本〉の称を生じた。男色女色を扱う浮世草子好色物を中核として,題材・表現に通じるところのある遊女評判記,野郎評判記など,また男色女色に関した即物的な知識や実際的な技巧を伝授する書物,春本などをも含むのが当時の理解であった。浮世草子作者に西鶴のほか西村市郎右衛門,夜食時分,雲風子林鴻(うんぷうしりんこう),小説以外には,好色諸風俗の紹介と性知識を盛る,浮世絵師吉田半兵衛の《好色訓蒙図彙(きんもうずい)》,好若処士の男色指南書《男色十寸鏡(ますかがみ)》,性的知識伝授書に西村の《好色注能毒》,山八(やまのやつ)の《好色床談義》などがある。浮世草子が小説として方法を確立した時期以後,1720年代ころよりは,好色本は春本を主とするものと理解されるようになっていったらしい。
執筆者:長谷川 強
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸時代を通じて、男女の秘戯を描いた春画・枕絵及び男女の交情を煽情的に描いた春本・艶本の類は、出版禁制の目をくぐって流通していた。当時はそうした春本を含めて性愛を取り上げた著作一般を好色本と称していた。文学史的には井原西鶴(いはらさいかく)以後、元禄・宝永・正徳頃(17世紀末~18世紀初頭)に流行した浮世草子(うきよぞうし)の中で性愛をテーマとする作品をいう。西鶴が奔放な愛欲の人生を描いた『好色一代男』、素人女の悲恋を中心とする『好色五人女』、性愛に翻弄された女の一生を描いた『好色一代女』で大成功を収め、遊里その他を舞台とする多くの追随作が生まれた。夜食時分(やしょくじぶん)作『好色万金丹(こうしょくまんきんたん)』、西沢一風(にしざわいっぷう)作『新色五巻書(しんしきごかんしょ)』、江島其磧(えじまきせき)作『傾城禁短気(けいせいきんたんき)』等はその代表作であるが、多くの場合『好色何々』と称するそれらの作品の中には、文学史的に価値の低いものや春本同然のものも多数見出される。
[矢野公和]
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