嫦娥(読み)ジョウガ(英語表記)Cháng é

デジタル大辞泉 「嫦娥」の意味・読み・例文・類語

じょう‐が〔ジヤウ‐〕【嫦娥】

中国古代伝説上の人物で、月に住む仙女羿げいの妻で、夫が西王母からもらい受けた不死の薬を盗んで飲み、月に入ったといわれる。姮娥こうが。転じて、異称
嫦娥計画

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精選版 日本国語大辞典 「嫦娥」の意味・読み・例文・類語

じょう‐がジャウ‥【嫦娥】

  1. 〘 名詞 〙 月の世界に住むといわれる仙女。転じて、月の異称。姮娥(こうが)
    1. [初出の実例]「嫦娥如有意、応照妾汎瀾」(出典:経国集(827)一〇・奉和関山月〈滋野貞主〉)
    2. 「桂の都を逃れた月界の嫦娥が」(出典:草枕(1906)〈夏目漱石〉七)
    3. [その他の文献]〔李商隠‐常娥詩〕

嫦娥の補助注記

もと「姮娥(こうが)」といわれており、「淮南子‐覧冥訓」やその高誘注によると、羿(げい)の妻であったが、羿が西王母から得た不死の薬を盗んで飲み、月に逃げたという。漢の文帝の諱「桓」を避けて「姮」を「嫦(こう)」と書いたが、後にこの字が「ジョウ」と読まれるようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「嫦娥」の意味・わかりやすい解説

嫦娥 (じょうが)
Cháng é

中国神話みえ月神常娥常羲(じようぎ)などとも書く。《山海経(せんがいきよう)》大荒西経に,帝俊の妻常羲が月十二を生み,大荒の日月山で浴することがみえる。帝俊は文献にいう舜で,もと太陽神。《淮南子(えなんじ)》覧冥訓に,羿(げい)が不死の薬を西王母に求めたところ,嫦娥がこれを窃(ぬす)んで月に奔(はし)ったことがみえ,そこでは嫦娥は羿の妻と解されている。月に奔った嫦娥は月中蟾蜍(せんじよ)(がま)となり,月の精となった。そのことは《楚辞》天問にも歌われていて兎となったとされ,晋の傅玄ふげん)の〈擬天問〉には,兎が薬を擣(つ)く話となっている。これらの説話は,西王母が神仙化され,その神仙譚とともに発展し,月中に桂樹(かつら))があり,仙人が住む話となった。さらに天帝の罰を受けたものが一時下界に降(くだ)り,その期が終わると再び昇天するという〈かぐや姫〉型の説話となる。その形式の説話の分布はきわめて広く,南アジア一帯に及んでおり,説話の構成もかなり流動的なものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「嫦娥」の意味・わかりやすい解説

嫦娥
じょうが

中国古代の伝説に登場する女性。姮娥(こうが)ともいい、弓の名人羿(げい)の妻。嫦娥は、夫の羿が崑崙(こんろん)山に住む女仙の西王母(せいおうぼ)からもらい受けた不死の薬を盗み出し、それを服用したのち、月世界へ昇ってガマガエルに化したと伝えられる。嫦娥を仲立ちとして不死の薬と月が結び付いたのは、人々が永遠に変わることなく満ち欠けを繰り返す月に不死性を感じ取ったためと思われる。またガマガエルに変身したというのも、月影をカエルに見立てた古代の中国人の観念によるものであろう。しかしのちになると、醜いカエルに化したという伝承は消失し、嫦娥はただ1人で月中に孤独をかこつ憂愁の美女と考えられるようになった。そうした嫦娥の姿を唐代の詩人たちは、しばしば詩に月を読み込むときの素材としている。

[桐本東太]

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百科事典マイペディア 「嫦娥」の意味・わかりやすい解説

嫦娥【じょうが】

中国神話の月神。常娥,【こう】娥とも書く。夫の【げい】西王母から得た不死の薬を盗み,月へ逃げた。そのまま月に住み蟾蜍(せんしょ)(ガマ)になったという。転じて月の異名。月兎譚,桂樹伝説,〈かぐや姫〉伝説の祖。

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