日本大百科全書(ニッポニカ) 「富合」の意味・わかりやすい解説
富合
とみあい
熊本県中部、下益城(しもましき)郡にあった旧町名(富合町(まち))。現在は熊本市南区の北西部を占める。1955年(昭和30)守富(もりどみ)、杉合の2村が合併して新たに富合村を設置。村名は住民からの公募に基づき合併両村名の組合せとなった。1971年町制施行。2008年(平成20)熊本市へ編入。南東隅の豊田(とよだ)分丘山地に属する雁回山(がんかいやま)(314メートル)周縁地区を除けば、全域、島原湾に流れ込む緑川ならびに支流の浜戸川の運んだ土砂の堆積(たいせき)地からなる。広い水田地帯には、米の生産調整以降、さらに圃場(ほじょう)整備事業、浜戸川地区湛水(たんすい)防除事業の遂行とともに蔬菜(そさい)・花卉(かき)畑が多くみられるようになり、富合プリンスメロンや富合菊は京阪神市場で確固たる地位を得ている。旧町域の中央をほぼ南北に走る国道3号はまさに当地域にとっては脊梁(せきりょう)的な役割を演じている。JR鹿児島本線とともにこの国道にほぼ併走する旧国道であった道はかつての薩摩(さつま)街道で、昔日のおもかげはないが、沿道にみられるいくつかの工場は、富合町が熊本都市計画区域内で市街化調整区域に指定(1968)される以前に進出をみたもので、純農業地帯に違和感を与えている。熊本中心市街に通勤する者も多い。県民憩いの森に指定されている雁回山(木原(きわら)山)の麓(ふもと)にある木原不動は日本三不動の一つで、春季大祭での護摩祈祷(ごまきとう)・火渡り荒行はよく知られている。六殿神社(ろくでんじんじゃ)の楼門は国の重要文化財。
[山口守人]