(読み)ウラ

デジタル大辞泉 「裏」の意味・読み・例文・類語

うら【裏】


㋐二面ある物の、表面と反対側の面。裏面りめん。うしろ。「写真のに撮影年月日を記す」「紙の表とを間違える」⇔
㋑物体の、こちらからは見えない向こう側の面。「月の
㋒物体の、下になっている面。「足の」「靴のを張り替える」
物の正面と反対になる側。また、その陰になっているところ。「たんすの」「舞台の」⇔

㋐建物の後ろになる側。「昨夜でぼやがあった」⇔
㋑建物の後ろ側にある出入り口。裏口。「のドアにかぎをかける」「から入る」⇔
衣服の内側につける布。裏地。「がすりきれる」⇔

表向きでない面。人の目にふれない面。「表とでは態度が違う」「で何を考えているのかわからない」⇔
㋑公表をはばかるような事情。隠されている事柄。内情。「彼の言うことには何かがある」「芸能界の
㋒好ましくないことが表面に現れずに行われるところ。「で金を動かす」「で教唆している人物がいるに違いない」
普通と反対のこと。逆。「世間の考えそうなことのを行く」
主だっていないこと。中心でないこと。「作」「街道」「番組」
裏千家」の略。
二度あるものの、あとのほう。
㋐野球で、後攻チームが攻撃する時。「九回の攻撃」⇔
㋑同じ遊女と二度遊ぶこと。また、二度目に来た客。→裏を返す
10 裏づけ。証拠。
11 論理学で、「pならばqである」に対して、仮定と結論をともに否定した「pでなければqでない」という形式の命題。最初の命題が真でも、裏命題は必ずしも真ではない。
12 連歌・俳諧で、句を書きつける懐紙の裏の面。特に初折(1枚目)の裏をいう。
13 内部。奥。うち。
天地あめつちの底ひの―にがごとく君に恋ふらむ人はさねあらじ」〈・三七五〇〉
[下接語]上げ裏麻裏浅葱あさぎ足裏内裏襟裏表裏額裏楽屋裏変わり裏木裏口裏毛裏芸裏しょすそ総裏そで手の裏天井裏胴裏通し裏共裏名残の裏二の裏抜け裏・軒裏・・葉裏・舞台裏真裏まうらもみ屋根裏路地裏
[類語](1裏面背後背面後ろ裏手裏側搦め手/(5内実内情内幕実際内容内内うちうち内内ないない遠慮内部内密こっそり内輪内裏うちうら内緒内証内分内聞ひそか忍びやかそっと秘密内懐うちぶところ楽屋裏裏面

り【裏】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]うら うち
学習漢字]6年
〈リ〉
表の反対側。うら。「裏面表裏
物の内側。「胸裏禁裏庫裏くり心裏内裏だいり脳裏
その状態で。「暗暗裏成功裏秘密裏
〈うら〉「裏表裏口裏話裏腹胴裏どううら舞台裏屋根裏
[補説]「裡」は俗字で、主として23に使用。
[難読]紅裏もみうら

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精選版 日本国語大辞典 「裏」の意味・読み・例文・類語

うら【裏・裡】

  1. 〘 名詞 〙 物事において、人の目にふれない部分。また、二面ある物事のうちで、人目につかない側面。⇔おもて
  2. [ 一 ] おおわれたり囲まれたりしている、物事の内側や内面の部分。
    1. ある限られた範囲のうち。内部。うち。なか。
      1. [初出の実例]「天地のそこひの宇良(ウラ)に吾(あ)が如く君に恋ふらむ人は実(さね)あらじ」(出典:万葉集(8C後)一五・三七五〇)
    2. 物事の表面にあらわれないところ。隠れているところ。
      1. [初出の実例]「我が詞の裏にはなんでかあるらう」(出典:四河入海(17C前)一八)
    3. 外部からは簡単にうかがうことのできない部分。また、内に秘められた物事。
      1. (イ) 公表をはばかるような事情。内幕。内情。
        1. [初出の実例]「作事って、何が裏にあったんだらうか?」(出典:熊の出る開墾地(1929)〈佐左木俊郎〉)
      2. (ロ) 正式でない違法の手段。抜け道。
        1. [初出の実例]「あっちぢゃ検査は大へんゆるいんだ。ちょっと裏からうまくやればどうにでもなるからなあ」(出典:労働者誘拐(1918)〈江口渙〉)
    4. 表だたない、簡略にされた物事。本格的でない技術や方法。
      1. [初出の実例]「拍子に、本、末、上、中、下、裏、表、やこゑにも、うくると、うけざると、陰、陽、順、逆あり」(出典:わらんべ草(1660)一)
  3. [ 二 ] 一対をなすものの補助的な方。
    1. 物の正面の反対側。通常目に見える面の反対側。また、後ろ側、下部、背部、内側などの部分。
      1. [初出の実例]「右の方の足のうらに」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「点がちにて、うらには『まことや、くれにもまゐりこむと思う給へたつは、〈略〉』とてまた端(はし)にかくぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)
    2. 衣服の内側や重ねた衣服の下の方。
      1. (イ) 衣服などの内側につける布。裏地。
        1. [初出の実例]「針袋取り上げ前に置き反(かへ)さへばおのともおのや宇良(ウラ)も継ぎたり」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二九)
      2. (ロ)(かさね)の色目の下に重なっている方。
        1. [初出の実例]「桜の直衣のいみじくはなばなと、裏のつやなど、えもいはずきよらなるに」(出典:枕草子(10C終)八三)
      3. (ハ) 鎧などの内側。→裏をかく
    3. 草木の葉の裏面。
      1. [初出の実例]「神なびのみむろの山の葛かづらうら吹きかへす秋は来にけり」(出典:家持集(11C前か)秋)
    4. 連歌、俳諧で、二つに折った懐紙の裏面。また、そこに記した句。たとえば、一巻三六句のものでは、懐紙を二つ折りにして、第一面に六句書いて、これを「表」六句といい、七句から一八句までをその裏面に書いて「初裏」一二句という。次は「二の表」一二句、最後が「二の裏」または「名残の裏」六句である。特に「初裏」をさす場合もある。
      1. [初出の実例]「漸(やっ)と表丈(だけ)出来たが、裏の二句目がひどく附け悪(にく)くって」(出典:人情本・春色玉襷(1856‐57頃)二)
    5. 家屋の後ろの部分。
      1. (イ) 家屋の大通りに面していない部分。玄関と反対の側。また、家屋またはその敷地の後ろに続く地。〔日葡辞書(1603‐04)〕
        1. [初出の実例]「うらの広き家を買てもらひます」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)一)
      2. (ロ) 特に、便所をさしていう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
        1. [初出の実例]「大をくびゃうなる侍、夜うらへ行に気味わるく思ひ」(出典:咄本・鳥の町(1776)億病)
    6. 裏通り。露地。街の一角で、表通りに面しない部分。
      1. [初出の実例]「囲い者囲者産み古い裏(ウラ)」(出典:雑俳・扇の的(1716‐36))
    7. 身体の後部。
      1. (イ) 腹部と反対の方。背面。背中。
        1. [初出の実例]「一と寝入りしてこまそと裏(ウラ)へ転(こ)け込む」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油屋)
      2. (ロ) 肛門。転じて男色をいう。うらもん。
        1. [初出の実例]「弘法も只は居まひとうらを行き」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一〇)
    8. ( 富士谷成章の「脚結抄(あゆいしょう)」に見える術語 ) 言語主体が自分のことを述べること。〔あゆひ抄(1773)〕
    9. 遊里の語。
      1. (イ) 第二回目の登楼をいう。二会。二会目。江戸時代、初会のあと、「うらを返す」といって、間もなく二度目の登楼をすべきものとされていた。
        1. [初出の実例]「此裏を仕懸ける身代の器量があれば」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)二)
      2. (ロ) 深川の岡場所、裏櫓(うらやぐら)の略称。
        1. [初出の実例]「裏(ウラ)関口に清兵衛や忠公が居るゆへ」(出典:洒落本・辰巳之園(1770))
    10. 劇場で、舞台に向かって左側。また、おもて(舞台)に対して舞台の背後、楽屋。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
    11. 野球で、先攻のチームが守備にまわっている時をいう。
    12. ( 裏番組の意 ) テレビやラジオで、ある番組と同じ時刻に放送されている他局の番組。
      1. [初出の実例]「よし、裏(番組)は、どうだ?」(出典:大統領の密使(1971)〈小林信彦〉三)
  4. [ 三 ] 一方の側から見た正反対。相反するような物事。
    1. 逆。反対。「うらはら」「うらうえ」など。
      1. [初出の実例]「これ仁者のこころ也。不仁者は、このうらなり」(出典:寸鉄録(1606))
    2. 本心とはかけ離れたこと。多く「うらを言う」という表現をとる。
      1. [初出の実例]「Vrauo(ウラヲ) ユウ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. 相手の予想に反すること。多く「うらをかく」「うらへ回る」「うらを行く」などの表現をとる。
      1. [初出の実例]「彼の態度は明かに此予期の裏(ウラ)を行った」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉一三)
    4. 命題の仮定と結論とをともに否定して得られる命題。すなわち、「AであるならばBである」という命題に対して、「AでなければBでない」という形の命題をいう。裏命題。

り【裏・裡】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 物のうらがわ。うら。また、内部。うち。
      1. [初出の実例]「以賞為表以罰為(り)」(出典:文明本節用集(室町中))
      2. [その他の文献]〔詩経‐邶風・緑衣〕
    2. 特に、体の奥。古く医学の用語で、「理」「利」の字をあてて用いることもある。
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 状態を表わす漢語に付いて、その状態のうちに物事が行なわれることを表わす。「秘密裏に事件を処理する」
    1. [初出の実例]「真に生きる実践的な力を得、不退の安心裡に住し得る底の現実力となって来なくては嘘だと」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観)
    2. [その他の文献]〔無門関〕

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普及版 字通 「裏」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

(異体字)裡
人名用漢字 12画

[字音]
[字訓] うら・うち

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 形声
声符は里(り)。〔説文〕八上に「衣のなり」とあり、〔詩、風、緑衣〕に「裏」のようにいう。衣の裏地である。金文の車服の賜与に「虎(こべき)熏裏(くんり)」のように、虎皮に赤地の裏をつけたものを多く用いた。里をそのまま裏に用いている例もある。裡は俗字。

[訓義]
1. うら、衣のうら。
2. うち、なか、奥。
3. はら、むね、こころ
4. 理と通じ、おさめる。

[古辞書の訓]
名義抄〕裏 ウラ・ウチ・フトコロ・ウダク・カハ

[熟語]
裏衣・裏謁・裏外・裏棺・裏監・裏裘・裏言・裏肚・裏表・裏辺・裏面・裏列
[下接語]
庵裏・院裏・屋裏・懐裏・客裏・宮裏・峡裏・胸裏・禁裏・閨裏・庫裏・箇裏・匣裏・山裏・裏・手裏・袖裏・笑裏・場裏・心裏・酔裏・睡裏・内裏・竹裏・肚裏・脳裏・裏・表裏・腹裏・夢裏・霧裏・夜裏

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裏」の意味・わかりやすい解説


うら
converse of contrapositive

記号論理学において与えられた条件文 p→q (p ならばq である) に対し,条件文 ~p→~q (p でないならばq でない) をその裏という。与えられた条件文が真であっても,その裏は一般に真とはならない。これと並んで条件文には,その対偶がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「裏」の意味・わかりやすい解説

裏 (うら)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【逆】より

…もとの命題が正しくても,逆は正しいとは限らない(x2>4ならば,x>2またはx<-2が正しい命題)。また,もとの命題および逆のA,Bを,A,Bの否定におきかえたもの〈AでないならばBでない〉〈BでないならばAでない〉(前の例なら,〈実数xについて,x≦2ならばx2≦4〉および〈実数xについて,x2≦4ならばx≦2〉)を,それぞれもとの命題の裏obverse,対偶contrapositionという。もとの命題が正しければ対偶も正しく,対偶の対偶はもとの命題であるから,ある命題とその対偶とは同値であり,ある命題を証明するのに対偶を証明してもよい。…

※「裏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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