逆(読み)ギャク

デジタル大辞泉 「逆」の意味・読み・例文・類語

ぎゃく【逆】[漢字項目]

[音]ギャク(呉) ゲキ(漢) [訓]さか さからう
[学習漢字]5年
〈ギャク〉
1 本来の方向・事態などと反対である。「逆境・逆行・逆転・逆風・逆流・逆輸入/可逆」
2 支配や命令にさからう。正道にそむく。「逆心・逆賊/悪逆・横逆・弑逆しいぎゃく・大逆・反逆」
3 さかのぼる。「逆上/吃逆きつぎゃく」
〈ゲキ〉
1 普通とは方向が反対である。「逆鱗げきりん」
2 出迎える。「逆旅」
3 前もって。「逆睹げきと」
〈さか〉「逆子・逆夢」
[難読]吃逆しゃっくり・逆上のぼせる

ぎゃく【逆】

[名・形動]
1 物事の順序・方向などが反対であること。また、そのさま。さかさま。「立場が逆になる」「逆コース」⇔順。
2 論理学で、ある命題の主語と述語を換位して得られる命題。「pならばqである」に対して「qならばpである」という形式の命題。最初の命題が真でも、逆命題は必ずしも真ではない。
3 柔道で、関節技のこと。逆手ぎゃくて。
4 道理や道徳に反すること。また、そのさま。
「朝廷の御為おんためには…―に与くみする条理なし」〈染崎延房・近世紀聞〉
[類語]反対・あべこべ・かえって・逆様・裏腹・逆さ・裏返し・裏表うらおもて・右左みぎひだり・上下うえした・後ろ前・正反対・真逆・本末転倒・主客転倒

さか【逆/▽倒】

1 さかさま。ぎゃく。反対。
「開けた儘の一頁を―に三四郎の方へ向けた」〈漱石・三四郎〉
2 名詞や動詞の上に付いて、さかさま、ぎゃく、反対の意を表す。「―波」「―うらみ」「―のぼる」

げき【逆】[漢字項目]

⇒ぎゃく

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精選版 日本国語大辞典 「逆」の意味・読み・例文・類語

ぎゃく【逆】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① ( 形動 ) 順序、方向と反対であること。さかさまなこと。また、そのさま。反対。⇔順。
    1. [初出の実例]「逆にいはるる事は立春をはるたつひといへるがごとし」(出典:名語記(1275)九)
    2. [その他の文献]〔易経‐説卦〕
  3. ② ( 形動 ) 道理に反すること。道徳的な教えにそむくこと。また、上位の者にさからうこと。また、そのさま。反逆。⇔順。
    1. [初出の実例]「忽有二不慮之間、兇徒作一レ逆」(出典:続日本紀‐天平宝字元年(757)閏八月壬戌)
    2. 「ぎゃくな弟に似ぬ心、順慶町の兄河内屋太兵衛」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中)
    3. [その他の文献]〔易経‐比卦〕
  4. ③ 逆手(ぎゃくて)。→逆に取る・逆を取る。
  5. ④ 命題の仮定と結論とを入れ換えて得られる命題の、もとの命題に対する称。すなわち「AならばB」に対して「BならばA」をその逆という。もとの命題が真でも、逆は必ずしも真とは限らない。

さか【逆・倒】

  1. [ 1 ] さかさま。ぎゃく。反対。
    1. [初出の実例]「諫むる程猶さかになり、愈々(いよいよ)謀叛に募りしが」(出典:浄瑠璃・河内国姥火(1720頃か)二)
    2. 「大方田舎だから万事東京のさかに行くんだらう」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉六)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 名詞や動詞の上に付き、さかさま、ぎゃく、の意を添える。「さかはぎ」「さかなみ」「さかご」「さかのぼる」など。

さからいさからひ【逆】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「さからう(逆)」の連用形の名詞化 ) さからうこと。反対すること。てむかうこと。抵抗。
    1. [初出の実例]「その申告の時も、私は格式のある動作をして見せた。それが唯一の私の抗(サカラ)いの表現だった」(出典:小銃(1952)〈小島信夫〉四)

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普及版 字通 「逆」の読み・字形・画数・意味

逆
常用漢字 9画

(旧字)
10画

[字音] ギャク・ゲキ
[字訓] むかえる・さからう

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は(ぎゃく)。は向こうから人の来る形。人の正面形である大の倒形。これを道に迎えることを「逆(むか)う」という。〔説文〕二下に「ふるなり」とあり、(こう)は人の左右相対する形。周初の金文〔令〕に「用(もっ)て王の(げきざう)にす」とあり、逆造は出入・送迎のことをいう。は倒逆の形であるから、また順逆の意となる。

[訓義]
1. むかえる、まねく。
2. あらかじめ、はかる、前もって。
3. さからう、そむく、もとる、たがう。
4. さかさま、よこしま、悪逆。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕 サカシ・サカサニ・ムカフ・タガフ・アラカジメ・シリゾク・サカフ 〔字鏡集〕 サカフ・タガフ・カネテ・ワタル・ススル・モトル・サカサマ・シリゾク・アラカジメ・ムカフ

[語系]
ngyak、(迎)ngyang、(遇)ngio、・(御)ngeaは声近く、みな人を迎え、遇うことをいう。また忤・ngaは人に逆らう意。・午・は声近く、一系の語をなしている。

[熟語]
逆悪▶・逆意▶・逆違▶・逆奄▶・逆閹▶・逆億▶・逆気▶・逆境▶・逆計▶・逆撃▶・逆言▶・逆▶・逆行▶・逆子▶・逆死▶・逆耳▶・逆事▶・逆邪▶・逆順▶・逆心▶・逆臣▶・逆数▶・逆斥▶・逆折▶・逆接▶・逆節▶・逆戦▶・逆賊▶・逆探▶・逆知▶・逆徒▶・逆睹▶・逆覩▶・逆党▶・逆道▶・逆徳▶・逆悖▶・逆坂▶・逆▶・逆風▶・逆氛▶・逆法▶・逆謀▶・逆暴▶・逆命▶・逆乱▶・逆流▶・逆虜▶・逆料▶・逆倫▶・逆▶・逆旅▶・逆▶
[下接語]
悪逆・意逆・違逆・横逆・気逆・凶逆・敬逆・五逆・忤逆・降逆・寇逆・逆・詐逆・讒逆・肆逆・弑逆・讐逆・順逆・親逆・僭逆・送逆・大逆・忠逆・誅逆・討逆・拝逆・背逆・悖逆・逆・伐逆・反逆・犯逆・風逆・払逆・暴逆・目逆・来逆・乱逆・六逆・凌逆

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改訂新版 世界大百科事典 「逆」の意味・わかりやすい解説

逆 (ぎゃく)
converse

論理学の用語であるが数学でよく使われる。一つの命題〈AならばB〉に対して,AとBとを入れかえたもの〈BならばA〉をもとの命題の逆という。例えば,〈実数xについて,x>2ならばx2>4〉という命題を考えると,〈実数xについて〉は前提条件として考え,Aがx>2,Bがx2>4であるが,この命題の逆は,〈実数xについて,x2>4ならばx>2〉である。もとの命題が正しくても,逆は正しいとは限らない(x2>4ならば,x>2またはx<-2が正しい命題)。また,もとの命題および逆のA,Bを,A,Bの否定におきかえたもの〈AでないならばBでない〉〈BでないならばAでない〉(前の例なら,〈実数xについて,x≦2ならばx2≦4〉および〈実数xについて,x2≦4ならばx≦2〉)を,それぞれもとの命題の裏obverse,対偶contrapositionという。もとの命題が正しければ対偶も正しく,対偶の対偶はもとの命題であるから,ある命題とその対偶とは同値であり,ある命題を証明するのに対偶を証明してもよい。裏は逆の対偶であるから,逆が正しくないときは裏も正しくない。

 上の例ではAの否定,Bの否定はやさしかったが,一般には否定を作るときはまちがいやすいので注意を要する。例えば,一つの関数f(x,y)についての命題,〈どんな実数x0に対しても適当に実数y0をとれば,f(x0,y0)=0〉の否定は,〈適当な実数x0に対しては,どんな実数y0をとってもf(x0,y0)≠0〉であり,〈どんな〉と〈適当な〉の入れかえが起こっている。

 なお,数学的命題でなく,例えばAとBとに原因と結果というような関係があって,時間的差のある場合,単に形式的に対偶を作ったのでは正しい対偶にはならない。例えば〈食事をしないとおなかがすく〉と,形式的対偶〈おなかがすかないと食事をする〉は大違いである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「逆」の意味・わかりやすい解説

逆
ぎゃく
converse

文章で表された一つの主張において、それが真であるか、または偽であるかが明確なものを命題propositionとよぶ。つまり、一つの命題は、それが真であり、かつ偽であるということはありえない。「AならばBである」という命題をpとするとき、pの仮設Aと終結Bとを交換して得られる命題「BならばAである」を、もとの命題pの逆という。「逆はかならずしも真ならず」といわれているように、一般に、真の命題の逆がいつも真であるとは限らない。たとえば、「6の倍数は偶数である」という命題は真であるが、その逆、「偶数は6の倍数である」は真でない。仮定や結論が複雑である命題の逆はただ1通りではない。また、「三角形の内角の和は180度である」という命題のように、その逆がつくりにくいものもある。

[古藤 怜]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「逆」の意味・わかりやすい解説

逆
ぎゃく
inverse

条件文「p→q (pならばq) 」に対して,条件文「q→p (qならばp) 」をもとの条件文の逆という。たとえば「雨が降れば傘をさす」の逆は,「傘をさせば雨が降る」,「ある数が6の倍数ならばその数は偶数である」の逆は,「ある数が偶数ならばその数は6の倍数である」となる。また「 ab=0 ならば,a=0 または b=0 である」の逆は,「 a=0 または b=0 ならば,ab=0 である」となる。一般に,ある条件文が真であっても,その逆は必ずしも真ではない。

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