(読み)ぎゃく(英語表記)inverse

翻訳|inverse

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


ぎゃく
inverse

条件文「p→q (pならばq) 」に対して,条件文「q→p (qならばp) 」をもとの条件文の逆という。たとえば「雨が降れば傘をさす」の逆は,「傘をさせば雨が降る」,「ある数が6の倍数ならばその数は偶数である」の逆は,「ある数が偶数ならばその数は6の倍数である」となる。また「 ab=0 ならば,a=0 または b=0 である」の逆は,「 a=0 または b=0 ならば,ab=0 である」となる。一般に,ある条件文が真であっても,その逆は必ずしも真ではない。

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デジタル大辞泉の解説

ぎゃく【逆】

[名・形動]
物事の順序・方向などが反対であること。また、そのさま。さかさま。「立場がになる」「コース」⇔
論理学で、ある命題の主語と述語を換位して得られる命題。「pならばqである」に対して「qならばpである」という形式の命題。最初の命題が真でも、逆命題は必ずしも真ではない。
柔道で、関節技のこと。逆手(ぎゃくて)。
道理や道徳に反すること。また、そのさま。
「朝廷の御為(おんため)には…―に与(くみ)する条理なし」〈染崎延房・近世紀聞〉

ぎゃく【逆】[漢字項目]

[音]ギャク(呉) ゲキ(漢) [訓]さか さからう
学習漢字]5年
〈ギャク〉
本来の方向・事態などと反対である。「逆境逆行逆転逆風逆流逆輸入可逆
支配や命令にさからう。正道にそむく。「逆心逆賊悪逆横逆弑逆(しいぎゃく)大逆反逆
さかのぼる。「逆上吃逆(きつぎゃく)
〈ゲキ〉
普通とは方向が反対である。「逆鱗(げきりん)
出迎える。「逆旅
前もって。「逆睹(げきと)
〈さか〉「逆子逆夢
[難読]吃逆(しゃっくり)逆上(のぼ)せる

げき【逆】[漢字項目]

ぎゃく

さか【逆/倒】

さかさま。ぎゃく。反対。
「開けた儘の一頁を―に三四郎の方へ向けた」〈漱石三四郎
名詞や動詞の上に付いて、さかさま、ぎゃく、反対の意を表す。「―波」「―うらみ」「―のぼる」

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世界大百科事典 第2版の解説

ぎゃく【逆 converse】

論理学の用語であるが数学でよく使われる。一つの命題AならばB〉に対して,ABとを入れかえたもの〈BならばA〉をもとの命題の逆という。例えば,〈実数xについて,x>2ならばx2>4〉という命題を考えると,〈実数xについて〉は前提条件として考え,Ax>2,Bx2>4であるが,この命題の逆は,〈実数xについて,x2>4ならばx>2〉である。もとの命題が正しくても,逆は正しいとは限らない(x2>4ならば,x>2またはx<-2が正しい命題)。

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大辞林 第三版の解説

ぎゃく【逆】

( 名 ・形動 ) [文] ナリ 
物事の順序・方向・位置関係などが反対であること。さかさま。 ⇔ 「順序を-にする」 「 -をつく」 「 -の方向」 「 -コース」
〘論〙 〔converse〕 命題「 p ならば q である」に対して、その前件と後件を入れ換えた命題をいう。もとの命題は真でも、逆は必ずしも真でない。 → うら対偶たいぐう
道にさからうこと。道理にそむいていること。また、そのさま。 「 -な弟に似ぬ心/浄瑠璃・油地獄
[句項目] 逆を取る

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


ぎゃく
converse

文章で表された一つの主張において、それが真であるか、または偽であるかが明確なものを命題propositionとよぶ。つまり、一つの命題は、それが真であり、かつ偽であるということはありえない。「AならばBである」という命題をpとするとき、pの仮設Aと終結Bとを交換して得られる命題「BならばAである」を、もとの命題pの逆という。「逆はかならずしも真ならず」といわれているように、一般に、真の命題の逆がいつも真であるとは限らない。たとえば、「6の倍数は偶数である」という命題は真であるが、その逆、「偶数は6の倍数である」は真でない。仮定や結論が複雑である命題の逆はただ1通りではない。また、「三角形の内角の和は180度である」という命題のように、その逆がつくりにくいものもある。[古藤 怜]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ぎゃく【逆】

〘名〙
① (形動) 順序、方向と反対であること。さかさまなこと。また、そのさま。反対。⇔
※名語記(1275)九「逆にいはるる事は立春をはるたつひといへるがごとし」 〔易経‐説卦〕
② (形動) 道理に反すること。道徳的な教えにそむくこと。また、上位の者にさからうこと。また、そのさま。反逆。⇔
※続日本紀‐天平宝字元年(757)閏八月壬戌「忽有不慮之間、兇徒作一レ逆」
浄瑠璃女殺油地獄(1721)中「ぎゃくな弟に似ぬ心、順慶町の兄河内屋太兵衛」 〔易経‐比卦〕
③ 逆手(ぎゃくて)。→逆に取る逆を取る
④ 命題の仮定と結論とを入れ換えて得られる命題の、もとの命題に対する称。すなわち「AならばB」に対して「BならばA」をその逆という。もとの命題が真でも、逆は必ずしも真とは限らない。

さか・う さかふ【逆】

[1] 〘自ハ四〙
① 相手に背を向ける。そむく。さからう。
※大日経義釈延久承保点(1074)一三「所行の事に著せるを以て、反りて背忤(サカフ)の心を生す」
② 敵対する。はむかう。また、風波などの勢いと反対の方に進もうとする。
※古今著聞集(1254)一〇「今一度さかうべしとて、あゆみよるに」
③ さかさまになる。逆になる。また、さかまく。
※海道記(1223頃)池田より菊川「天下風あれて海内波さかへりき」
④ へどを吐く。もどす。
⑤ 気にさわる。悪く感じる。抵抗感がある。
※徒然草(1331頃)一五五「ついで悪しき事は、人の耳にもさかひ、心にもたがひて」
[2] 〘自ハ下二〙 (一)に同じ。
※打聞集(1134頃)玄奘三蔵心経事「すふ間腹わた返て逆(サカフ)れども悲の心深きままに」
[3] 〘他ハ下二〙 さかさまにする。さかだたせる。さかだてる。
※法華義疏長保四年点(1002)一「身に鱗を逆(サカヘ)て、土石其の身の内に入ることあり」
[語誌]平安時代までは、漢文訓読系の文献を中心に四段・下二段とも例が見られる。中世に入って、下二段活用と併用されつつも、一般的には四段活用が用いられるようになり、下二段活用の方は堅苦しい語感を伴ったと考えられる。なお、同義語の「さからふ」は、室町期より例が見出される。

さからい さからひ【逆】

〘名〙 (動詞「さからう(逆)」の連用形の名詞化) さからうこと。反対すること。てむかうこと。抵抗。
※小銃(1952)〈小島信夫〉四「その申告の時も、私は格式のある動作をして見せた。それが唯一の私の抗(サカラ)いの表現だった」

さから・う さからふ【逆】

〘自ワ五(ハ四)〙
① 物事の勢いや、ある一定の方向へ働く力に反対する。逆の力を加える。逆の方向へ進む。
※浄瑠璃・平家女護島(1719)四「引く汐にさからふ千鳥が浮きくるしみ」
② 他人の意見や注意などに反抗する。てむかう。たてつく。抵抗する。反対する。
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中「それからはあきないも精を出し、親達へ孝行つくしさからふまいと誓文だて」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「母親に忤(サカラ)ひながら、何時しか其いふなりに成った」

さか・る【逆】

〘自ラ四〙 =さかう(逆)
書紀(720)神武即位前戊午年四月(北野本室町時代訓)「日(ひむかし)に向ひて虜(あた)を征(う)つは、此、天の道に逆(サカレ)り」

むか‐た・む【逆】

〘他マ四〙 吐き気をもよおし食物を吐く。
新訳華厳経音義私記(794)「不欬不逆 欬克代反、也、蘇豆反、欬逆気也、倭云牟世々受、不逆者牟可太末受」
[補注]用例の「牟可太末受」の「末(マ)」を、「未(ミ)」と見なすならば、活用はマ行上二段、またはマ行上一段となる。

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