(読み)タイ

デジタル大辞泉 「対」の意味・読み・例文・類語

たい【対】

対照をなすこと。また、反対の関係にあること。「男のは女」
互いに相手関係にあること。「巨人中日戦」
数を表す語の間に入れて、数量の比例・割合を表す語。「三二の割でまぜる」
同等の力量・資格であること。「で碁を打つ」
二つで一組みとなるもの。つい。
「ある時宣宗が一句を得て―を挙人きょじん中に求めると」〈鴎外魚玄機
対の屋」の略。
「ひんがしの―の西の廂」〈・八〉
名詞などの上に付けて、比較・交渉・戦いなどの相手であることを表す。「前年比」「欧州貿易」
[類語]相対あいたい差し向かい差し真向かい反対もろにもろ直接的正面真ん前前方向かい真向き真っ向真正面真面まおもてじかじか直直じきじき直接ちょく単刀直入率直露骨ずばりざっくばらんずけずけあけすけストレートダイレクト歯にきぬ着せぬてきめんまとも矢面やおもてあからさまあらわむき出し赤裸赤裸裸公然ずばずば遠慮えげつないフランク遠慮会釈もないきっぱり断固毅然きぜん開けっ放し開けっ広げ不躾ぶしつけ身もふたもない

たい【対〔對〕】[漢字項目]

[音]タイ(呉)(漢) ツイ(唐) [訓]むかう こたえる
学習漢字]3年
〈タイ〉
向かい合う。二つが向き合う。「対岸対決対抗対座対策対象対比対面対立絶対相対敵対反対
相手になって受け答えする。「応対接対
二つで一組のもの。「対偶
対島つしま国。「対州
〈ツイ〉3に同じ。「対句一対

つい【対】

[名]

㋐二つそろって一組みとなること。また、そのもの。「になっている置き物」
㋑素材や模様・形などを同じに作って、そろえること。また、そのもの。「の着物」
対句ついく」に同じ。
[接尾]助数詞
二つで一組みになっているものを数えるのに用いる。「一夫婦茶碗めおとぢゃわん
衣服・調度など、ひとそろいのものを数えるのに用いる。「三幅さんぷく
「竜虎梅竹唐絵一―」〈庭訓往来
[類語]ペア組みそろ一揃い一対いっついつが一式セット

つい【対/堆】[漢字項目]

〈対〉⇒たい
〈堆〉⇒たい

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精選版 日本国語大辞典 「対」の意味・読み・例文・類語

たい【対】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 向かい合うこと。相手になること。
    1. (イ) 対比すること。比較すること。
      1. [初出の実例]「大人対(タイ)子供としての関係の方が、深く私の頭に浸み込んでゐる」(出典:硝子戸の中(1915)〈夏目漱石〉三六)
    2. (ロ) 試合や勝負などの組み合わせや点数の対照を表わすことば。vs.
      1. [初出の実例]「あれでもやはりお客さまよ。しかも向うは三人で送るといふのよ、三対一よ」(出典:残夢(1939)〈井上友一郎〉)
    3. (ハ) 相対すること。また、反対のもの。
    4. (ニ) ( 接頭語的に用いる ) 働きかけ、交渉、対抗などの相手であることを示すことば。
      1. [初出の実例]「却って『毎日』の如き無勢力な新聞を生さず殺さずして置く方が〈略〉最良の手段であると云ふのが此人の対『毎日』観であった」(出典:菊池君(1908)〈石川啄木〉四)
  3. 数量などの比率、割合を表わすことば。「三対二の比率」
  4. 双方に優劣、高下の差がないこと。また、その差をつけないこと。対等であること。
    1. [初出の実例]「実(まこと)には御製と文時が詩と対(たい)に御座(おはします)」(出典:今昔物語集(1120頃か)二四)
  5. 二つそろって一組となるもの。ペア。つい。
    1. [初出の実例]「詞の林、筆の海など、対(タイ)にたとへたり」(出典:諷謌鈔(1600頃)七)
  6. たいのや(対屋)」の略。
    1. [初出の実例]「東の五条に大后の宮おはしける、西のたいに住む人有りけり」(出典:伊勢物語(10C前)四)
  7. に住む人、その屋敷のあるじの夫人
    1. [初出の実例]「たいに聞き置きて常にゆかしがるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)

つい【対】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 二つの物が同類であること。あるいは、一組のものとして対応すること。同じ材料・模様・性質・形などを持っていること。また、そのもの。
      1. [初出の実例]「コレワ tçuigia(ツイヂャ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「二個の湯呑は、夫婦別々の好みにて、対(ツヰ)にあらず」(出典:化銀杏(1896)〈泉鏡花〉一)
    2. ついく(対句)
      1. [初出の実例]「又、ことばの飾りを求めて対を好み書くべからず」(出典:無名抄(1211頃))
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 衣服・調度などの一そろいを数える場合に用いる。また、絵などのそろいになるものを数える場合にもいう。
      1. [初出の実例]「龍虎梅竹唐絵一対」(出典:庭訓往来(1394‐1428頃))
      2. [その他の文献]〔白居易‐酔中得上都親友書詠而報之詩〕
    2. 二つで一組になるものを数える場合に用いる。〔コリャード日本文典(1632)〕
      1. [初出の実例]「仲の好い夫婦の一対(ツヰ)であった」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「対」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(旧字)對
14画

[字音] タイ・ツイ
[字訓] うつ・むかう・こたえる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
旧字は對に作り、(さく)+土+寸。は掘鑿などに用いる器。これで土を撲(う)ち堅めることを對という。版築の作業は、両版の間に土を入れ、これを撲ち堅めて造成するもので、撲もその器を手にもつ形。州の殷の都城の城壁の一部が遺存するが、その版築は一層ごとに土を撲ち堅めたもので、その撲った杵(きね)状の痕迹が残されている。〔説文〕三上に正字を口に従う形とし、「(こた)ふること方無きなり。~以爲(おも)へらく、責對して面(ま)のあたり言ふは、多くは對に非ず。故に其の口を去りて、以て士に從ふなり」(段注本)とするが、卜文・金文の字はみな土に従う。金文に多く「對揚(こたえる)」の意に用いるのは、版築のとき、両者相対して土を撲つことからの転義であろう。その恩・休賜に奉答する意の語である。

[訓義]
1. うつ、あげる、土をうつ。
2. むかう、あたる、あう、あいて、つい。
3. こたえる、あわせる、たぐえる、むかえる。

[古辞書の訓]
名義抄〕對 トグ・コタフ・ムカフ・タグヒ・カサヌ・カタキ・アタル・オモフ・アフ/一對 ヒトクサリ・ヒトカサネ 〔立〕對 アタル・サハリ・マウス・カサヌ・モノフク・コタフ・サカリ・ホガラカ・ムカフ・キラフ・アフ・アダ・カタキ

[声系]
〔説文〕に對声としてなど三字を収める。は怨む。と声義が通じる。敦にも撲つ意がある。

[熟語]
対飲・対雨・対・対越・対応・対勘対捍・対岸・対眼・対顔対碁対局・対偶・対対景・対月対向・対講・対坐・対策対峙・対膝・対質対酌・対酒対称・対象・対照対牀・対審・対待・対談・対敵・対当・対等対答・対頭・対匹・対面・対揚・対立・対論・対話・対句対聯
[下接語]
一対・応対・佳対・対・偶対・作対・辞対・酬対・召対・条対・正対・静対・接対・絶対・専対・善対・奏対・相対・属対・待対・置対・敵対・反対・名対・面対・問対

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【寝殿造】より

…完成形または典型をどのようにとらえるかは異論もあるが,現在までは次のような説が有力である。まず敷地は方一町(約120m四方)で,主屋である寝殿を中心に,東および西,場合によっては北,北西,北東などに副屋である対(たい)(対屋(たいのや))を置き,これを廊(渡殿(わたどの))で結ぶ。東西対からは南に細長い中門廊が延び,その南端には釣殿を建てる。…

【数】より

…とくにヨーロッパでは,三平方の定理に関連して,ピタゴラスはという無理数の存在を知ったが,当時線分の長さは,それに含まれる点の数に比例するという信仰があり,が分数で表せないことの意味がわからなくて苦しんだという。〈ゼノンのパラドックス〉(二つあり,一つはアキレウスはカメを追いぬくことができない,他は矢は飛ばないというもの)も,上記信仰に対するパラドックスであるという。ユークリッド(エウクレイデス)が整数でない実数をあまり扱わず,整数と図形とに力を注いだのも,ピタゴラスと同じ悩みをもち,それに明確な答えが得られなかったからであるという説もある。…

※「対」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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