小倉山(読み)おぐらやま

精選版 日本国語大辞典 「小倉山」の意味・読み・例文・類語

おぐら‐やま をぐら‥【小倉山】

(「おぐらのやま」とも)
[一] 京都市右京区、保津川渓谷の出口付近の東岸にある山。嵐山と対する。紅葉の名所。標高二八四メートル。天龍寺二尊院がある。小椋山。雄蔵山。亀山。歌枕。
古今(905‐914)秋・三一二「夕月夜をぐらの山に鳴く鹿の声のうちにや秋はくるらん紀貫之〉」
[二] 嵐山のこと。
[三] (「巨椋山」とも書く) 奈良県桜井市にあった倉梯(くらはし)山(現在の音羽山)とも、忍坂(おさか)山・多武峰(とうのみね)の端山ともいわれる。歌枕。
万葉(8C後)八・一五一一「夕されば小倉乃山(をぐらノやま)に鳴く鹿は今宵は鳴かずい寝(ね)にけらしも」

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デジタル大辞泉 「小倉山」の意味・読み・例文・類語

おぐら‐やま〔をぐら‐〕【小倉山】

京都市右京区嵯峨にある山。保津川を隔てて嵐山あらしやまと対する。紅葉の名所。おぐらのやま。[歌枕]
「―峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびのみゆき待たなむ」〈拾遺・雑秋〉

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日本歴史地名大系 「小倉山」の解説

小倉山
おぐらやま

大堰おおい(桂川)北岸に位置し、標高二八三・七メートル。南岸の嵐山と相対する。東麓には嵯峨野さがのが広がり、東北麓には化野あだしのがある。雄蔵・小椋とも記される。

歌枕で、「能因歌枕」「五代集歌枕」「和歌初学抄」「八雲御抄」「和歌色葉」にあげられる。「初学抄」が「クラキニソフ」と注するように、樹木の繁茂して暗いことが名の起りという。

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改訂新版 世界大百科事典 「小倉山」の意味・わかりやすい解説

小倉山 (おぐらやま)

京都市右京区西部の山。標高295m。古生層からなり,南東に長くのびた標高70~80mの尾根を亀山(亀の尾山)という。嵯峨野の西端を画し,西側と南側は保津川が深い峡谷(保津峡)を形成している。もとは対岸嵐山と合わせて小倉山と呼ばれ,平安時代以来の紅葉の名所である。清凉寺(釈迦堂),二尊院は嵯峨上皇,天竜寺は後嵯峨上皇ゆかりの地であり,清凉寺南西にはかつて嵯峨上皇の后檀林皇后が営んだ檀林寺があった。このほか,東麓一帯には平安時代以降の史跡や名刹が多い。現在,北麓を嵐山・高尾パークウェー(有料道路)が通じている。
執筆者:

古今集》巻五の紀貫之の歌〈夕月夜小倉の山になく鹿の声のうちにや秋は暮るらむ〉や《小倉百人一首》所収の藤原忠平の歌〈小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびのみゆき待たなむ〉など,古来多くの歌に詠まれている。東麓に藤原定家の山荘時雨(しぐれ)亭の跡という厭離(おんり)庵がある。同庵近くの落柿舎(らくししや)は向井去来の別荘であり,芭蕉はここで《嵯峨日記》を書いた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小倉山」の意味・わかりやすい解説

小倉山
おぐらやま

京都市右京区嵯峨(さが)にある山。標高295メートル。保津(ほづ)川の京都盆地への出口に近い北岸に位置し、南岸の嵐山(あらしやま)と相対する。山頂からは保津川の峡谷美を見下ろし、古来、サクラ、紅葉の名所として知られ、歌枕(うたまくら)としても名高い。東麓(とうろく)の嵯峨野から、北東麓の仇野(あだしの)にかけては史跡が多い。東麓の天竜寺は臨済(りんざい)宗天竜寺派の大本山で、夢窓国師(むそうこくし)作庭と伝える庭園は史跡・特別名勝に指定されている。背後の小倉山の一部は、亀山とよばれる。天竜寺の北には、俳人向井去来(むかいきょらい)が閑居したという落柿舎(らくししゃ)をはじめ、二尊院(にそんいん)、祇王寺(ぎおうじ)などがある。

[織田武雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小倉山」の意味・わかりやすい解説

小倉山
おぐらやま

京都市西部,保津川の出口付近の北東岸に位置する山。標高 293m。古生層からなる。紅葉の名所で,古くから歌枕として有名。南岸の嵐山と相対し,東麓には二尊院,祇王寺,落柿舎 (らくししゃ) など名刹,史跡があり,観光地として知られる。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「小倉山」の解説

小倉山
(通称)
おぐらやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
猿若瓢軍配
初演
文政3.11(江戸・中村座)

小倉山
おぐらやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
寛文11.7(江戸・松平大和守邸)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「小倉山」の解説

小倉山 (オグラヤマ)

植物。カエデ科の落葉高木,高山植物。ハウチワカエデの別称

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