尺素往来(読み)せきそおうらい

精選版 日本国語大辞典 「尺素往来」の意味・読み・例文・類語

せきそおうらい セキソワウライ【尺素往来】

室町中期の往来物一巻一条兼良の著とされる。室町中期の成立往復書簡形式の中に、年中行事・各種事物話題を盛り、消息文書き方や百科的教養を習得するのに便利なようにしたもの。

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デジタル大辞泉 「尺素往来」の意味・読み・例文・類語

せきそおうらい〔セキソワウライ〕【尺素往来】

室町中期の往来物。1巻。一条兼良著といわれる。文明13年(1481)以前の成立。年中行事や各種事物の話題を集めて、往復書簡の形式にまとめたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尺素往来」の意味・わかりやすい解説

尺素往来
せきそおうらい

室町期の教科書古往来(こおうらい)の一つ。一巻。作者については「後成恩寺関白兼良(のちのじょうおんじかんぱくかねら)公」と掲げられており、一条兼良の撰(せん)と伝える。成立年代は不明。尺素とは手紙のことで、書状の形式をとって、社会生活に必要な多彩な知識・教養を広範囲に提供しているが、公家(くげ)の生活に限定せずに武家社会の生活にも触れているので、室町期の社会相を知る材料となる。本書前段には小朝拝(こぢょうはい)、三節会(せちえ)、御所的(ごしょまと)、聖廟法楽(せいびょうほうらく)などの年中行事とそれに関する各種事物、馬、弓、甲冑(かっちゅう)、鍛冶(かじ)などの武家の職能にかかわる事物が収められている。また後段には神訴(しんそ)、薬種(やくしゅ)、地震、祈祷(きとう)、本領事、相論、半済(はんぜい)事、難渋対捍(なんじゅうたいかん)之土民百姓、成敗、武官、僧官、二十二社、四箇大寺(よんかたいじ)、八宗(はっしゅう)、仏説法次第、三国五山などから、名筆掛絵、書院置物、屏風(びょうぶ)障子、絵具、粥(かゆ)、点心(てんじん)、諸食物、茶、菓子、布施物、さらに荼毘(だび)、忌日などまでを載せている。『群書類従消息部所収。

[新井孝重]

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改訂新版 世界大百科事典 「尺素往来」の意味・わかりやすい解説

尺素往来 (せきそおうらい)

室町時代の教科書。1巻。一条兼良の作と伝えられる。尺素とは1尺ばかりの絹布の意で,転じて手紙をいう。本書は往復2通の書簡から成っているが,書簡文例というよりも,書簡の形を借りて主要年中行事とそれに関係のある事物を列挙したもので,植物の名,室内を飾るための高価な品々の名,禅宗関係の仏画その他の用語,食料品の名など,室町時代の日常生活に必要な事物が網羅されている。
往来物
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「尺素往来」の解説

尺素往来
せきそおうらい

往来物の一つ。作者は一条兼良(かねよし)と推定。室町中期成立。素眼の「新札往来」をうけ,これを増補した。上下2巻からなり,全編1通の消息で構成される。衣食住・教養・遊芸・仏事・神事・施政・裁判など68条に関する語彙を収める。中世の公家や武家の文化を知るうえで屈指の資料。最古写本は内閣文庫蔵の1522年(大永2)橋本公夏筆本。ほかに1668年(寛文8)京都石田治兵衛刊本などがある。「群書類従」「日本教科書大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「尺素往来」の解説

尺素往来
せきそおうらい

室町中期の往来物
成立年不詳。1巻。一条兼良 (かねよし) の著と伝える。「往来」の原義は書簡の意らしいが,のちには模範文例集の意。子弟の教育のために四季の風物や,年中行事風の記事を書簡体で記し,各方面に使用する語の文例を示す。

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