デジタル大辞泉
「屈」の意味・読み・例文・類語
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くっ‐・する【屈・】
[1] 〘自サ変〙 くっ・す 〘自サ変〙
① 折れ曲がる。かがまる。
※
四河入海(17C前)八「主人の子華が意を知て、ここでは屈してよからう、あそこではすぐでよからうと思て」
②
気持がくじける。
気力を失う。また、気がめいる。心が沈む。くんず。くす。
※枕(10C終)
九九「此の事に宿世なき日なめりとくっして」
③ 自分の考えをまげて他人の意見や主張に従う。服従する。折れ従う。
※和英語林集成(
初版)(1867)「シバラク kussh'te
(クッシテ) ジセツヲ マツ」
[2] 〘他サ変〙 くっ・す 〘他サ変〙
① 折り曲げる。かがめる。「指を屈する」は、数え上げる意。
※
太平記(14C後)二〇「膝を屈
(クッ)し手をつかねて」
※
落葉(1889‐90)〈
内田魯庵〉「三馬作中の五指に屈
(クッ)すべきものなるべし」
② 自分の考えや望みを外部からの
圧力などのためにおさえつける。
※太平記(14C後)一七「些も気を屈(クッ)す可き」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四「その志を屈せずして、後つひにその説の世に行はるるを
生前に見ることを得たり」
③ 服従させる。従わせる。
※
史記抄(1477)一五「礼で人を屈せいでは
天下のものがをぢまいと思ぞ」
※久遠寺蔵本朝文粋(1060頃)一四・為謙徳公報恩修善願文〈
菅原文時〉「仰
二天人師於其際
一、巻
二風幌
一以屈
二龍象衆於其前
一」
⑤ 卑下させる。へりくだらせる。
く‐・す【屈】
① 心を暗くするようなことがあって、気持が沈み込む。めいる。気がふさぐ。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「あれまくは君をぞ惜しむ
菅原や
伏見の里のあまたなければ『身こそよそなれ』と
かいふ。おもほしくせざらめ」
② 不幸、不遇な
境涯に、いじけて卑屈になる。心理的に屈服する。
※
落窪(10C後)一「少しうれしと思ふぞ、心ちのくし過ぎたるにや」
③ 気分的にのびのびとした感じを受けない。不景気な感じである。
※落窪(10C後)一「『何の名ぞ、落窪は』〈略〉『人の名にいかにつけたるぞ。論なうくしたる人の名ならん』」
くん‐・ず【屈】
〘自サ変〙 (もと「くっす」と促音で発音されたものを、
撥音で表記したもの) くよくよと思いなやむ。心が沈む。気がふさぐ。くっす。くす。
※三巻本一本枕(10C終)九五「此事にすくせなき日なめりとくんして」
※
更級日記(1059頃)「
面影におぼえて悲しければ、月の興もおぼえず、くんじ臥しぬ」
[語誌]古く促音の表記が一定でなかったことから生じた
語形。特に、促音とn音とは、もともと表記上区別されず促音は、仮名文献では、古くは無表記であるのが一般的であり、同じくn音も無表記であるのが一般的であった。また、tとnの音は、
調音点が近く、それぞれ「レ」という同じ
符号で示されることがあった。このような促音とn音との表記上の
混同を背景として、「くす」「くんず」の両表記が生じたものと考えられる。
くぐ・む【屈】
[1] 〘自マ四〙
① からだをおりまげた状態になる。かがむ。くぐまる。こごむ。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
② 折れ曲がる。〔羅葡日辞書(1595)〕
[補注]「くぐせ」や「くぐる」と同根か。また、「かがむ(屈)」「かがまる(屈)」などや、後世の「こごむ」「かごむ」とも関係があると思われる。ただ「かがむ」が手や足などを折り曲げて背を低くするのに対して、「くぐむ」は「せくぐむ」のように背を折り曲げることにいうようである。
かが・める【屈】
〘他マ下一〙 かが・む 〘他マ下二〙 折り曲げる。かがむようにする。かがませる。こごめる。
※聖語蔵本願経四分律平安初期点(810頃)「仏の前に没して、
力士の臂を屈申
(カカメノフル)が頃の如く、石の上に勇出しぬ」
※源氏(1001‐14頃)帚木「此のおよびをかがめてまかでぬ」
くぐ・める【屈】
〘他マ下一〙 くぐ・む 〘他マ下二〙 からだをかがませる。
※夫木(1310頃)一九「久方のあまつみ空は高けれどせをくくめてぞわれは世にすむ〈宗尊親王〉」
くつ【屈】
〘名〙 かがむこと。転じて、服従すること。不当に屈辱的な立場に置かれること。
※作法故実(1383頃)「揖事 〈略〉屈時遅起、揚之時聊早也」
こが・む【屈】
〘自マ四〙 「かがむ(屈)」または「こごむ(屈)」の変化した語。
※平家(13C前)八「車にこがみのんぬ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
屈 (コゴミ・コゴメ)
植物。オシダ科の落葉多年草,園芸植物。クサソテツの別称
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報