山本作兵衛(読み)ヤマモトサクベエ

デジタル大辞泉 「山本作兵衛」の意味・読み・例文・類語

やまもと‐さくべえ〔‐サクベヱ〕【山本作兵衛】

[1892~1984]炭鉱労働者炭鉱記録画家福岡の生まれ。7歳ごろから筑豊炭田で働く。60歳過ぎより、明治末から昭和30年代の閉山に至るまでの炭鉱の様子を描き始める。平成23年(2011)、絵画日記など697点が世界の記憶に登録された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山本作兵衛」の意味・わかりやすい解説

山本作兵衛
やまもとさくべい

[生]1892.5.17. 福岡,笠松
[没]1984.12.19. 福岡,飯塚
炭鉱労働者,画家。石炭の産地である福岡県筑豊地域に生まれ,幼い頃から父や兄について炭坑に入り,小学校卒業後 14歳で山内炭鉱の坑内労働者となった。以降,位登炭鉱の閉山によって退職するまで約 50年間にわたり炭鉱労働者として働いた。引退し夜警宿直員となった 60代半ばに絵筆を取るようになり,自身が体験・見聞したことをもとに,明治・大正から昭和初期にいたる筑豊炭田生活を墨や水彩で描写し,余白に説明文を添えた記録画を描いた。92歳で没するまでに,炭鉱労働を経験した者にしか描くことができない正確で緻密な 1000点をこえる記録画を残した。そのうち 584点が福岡県の有形民俗文化財に指定されている。画文集として『炭鉱に生きる』(1967),『筑豊炭坑絵巻』(1973)などがある。1967年に勲六等瑞宝章を授与された。1981年福岡県教育文化功労者表彰受賞。2011年5月,福岡県田川市福岡県立大学共同で申請した絵画,日記,雑記帳原稿など計 697点からなる「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」が,一人の炭鉱労働者が作成した筑豊炭田の生活や風俗を伝える希少な記録として国際連合教育科学文化機関 UNESCO世界の記憶に日本で初めて国際登録された。

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20世紀日本人名事典 「山本作兵衛」の解説

山本 作兵衛
ヤマモト サクベエ

明治〜昭和期の炭鉱絵師



生年
明治25(1892)年5月17日

没年
昭和59(1984)年12月19日

出生地
福岡県嘉穂郡笠松村(現・飯塚市)

主な受賞名〔年〕
西日本文化賞〔昭和52年〕

経歴
8歳のころから採炭夫の父の仕事を手伝って坑内に入り、明治37年12歳で炭坑のツルハシ鍛冶に弟子入り。14歳で採炭夫となって以後60余年にわたって筑豊各地の中小炭鉱を転々。この間、明治、大正、昭和の3代にわたり、筑豊の炭坑と坑夫たちの働く姿の絵を描き続け、ヤマの絵師として知られた。著書に「明治大正炭坑絵巻」「画文集 炭坑に生きる」「王国と闇―山本作兵衛炭坑画集」「筑豊炭坑絵物語」など。平成4年記録絵約300点が遺族の手で田川市石炭資料館に寄贈された。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山本作兵衛」の意味・わかりやすい解説

山本作兵衛
やまもとさくべえ
(1892―1984)

福岡県出身の炭鉱記録画家。笠松(かさまつ)村(現、飯塚(いいづか)市)の遠賀(おんが)川の川舟船頭であった父の次男として生まれる。炭鉱夫に転業した父に従い、7歳ごろから炭鉱で働き始め、1955年(昭和30)まで中小炭鉱で採炭に従事した。65歳ごろから、炭坑での生活や労働者の人情を記録に残したいと考え、自らの経験や伝聞をもとに、明治中期から大正、昭和初期までの炭坑のようすを描いた。その作品数は2000点ともいわれる。2011年(平成23)5月、田川(たがわ)市と山本家が所有する絵画・日記・原稿など合計697点が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産(現、世界の記憶)に指定された。

[編集部]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山本作兵衛」の解説

山本作兵衛 やまもと-さくべえ

1892-1984 明治-昭和時代の炭鉱労働者,画家。
明治25年5月17日生まれ。少年時代から60年近く筑豊(ちくほう)炭鉱ではたらく。閉山後,明治から昭和にいたる炭鉱の様子をえがき,「ヤマの絵師」として知られた。昭和59年12月19日死去。92歳。平成23年絵画・日記・原稿など697点がユネスコの世界記憶遺産として認定された。福岡県出身。画文集に「炭鉱に生きる」「ヤマの暮らし」など。

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