山猫(読み)ヤマネコ(英語表記)Il gattopardo

デジタル大辞泉 「山猫」の意味・読み・例文・類語

やま‐ねこ【山猫】

山野にすむ猫。野生化した猫。のらねこ。
ネコ科哺乳類のうち、小形の野生種の総称。リビアヤマネコオオヤマネコオセロットなど。日本ではツシマヤマネコイリオモテヤマネコがすむ。
鎌やのこぎりなど山仕事に必要な道具を入れた袋のようなもの。
江戸時代、寺社の境内にいた私娼。化けて出るの意という。
「―は二階にひそむ」〈根無草
[類語]子猫飼い猫野良猫どら猫日本猫・和猫・洋猫・三毛猫虎猫

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精選版 日本国語大辞典 「山猫」の意味・読み・例文・類語

やま‐ねこ【山猫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ネコ科の哺乳類のうち小形の種類の総称。体長およそ四〇~八〇センチメートル。家畜の家ネコに似るが、頭はやや細長く、尾は太く、耳は丸みを帯びて裏面は黒地に一個の白斑(はくはん)がある。ベンガルヤマネコ、オオヤマネコなど世界中に約三〇種がいる。日本では対馬にツシマヤマネコ、西表島にイリオモテヤマネコが見られる。森林などに単独ですみ、ウサギ・ネズミ・鳥などを捕食する。
  3. 山野にすむ猫。野猫。
    1. [初出の実例]「山猫(ヤマネコ)〈略〉常は深山幽谷の中にかくれて人の眼にかからず、飢(うゆる)ときは人家に入りて食を竊(ぬす)み」(出典読本・椿説弓張月(1807‐11)後)
  4. 京都祇園円山近辺の舞妓
    1. [初出の実例]「偖亦舞妓にも、よしあし曳の山猫(ヤマネコ)といふ、化物有、山は円山双林寺霊山、猫は三絃の皮にたとへたれど」(出典:洒落本・戯言浮世瓢箪(1797)四)
  5. 江戸時代、寺社の境内にいた私娼。江戸の本所回向院前、牛込赤城神社境内のものが有名。
    1. [初出の実例]「傾城流をうしなって山猫(ヤマネコ)を生じ」(出典:洒落本・跖婦人伝(1753))
  6. やまねこまわし(山猫廻)」の略。
    1. [初出の実例]「傀儡師を江戸の方言に山ねこといふ、人形まはし也」(出典:随筆・塵塚談(1814)上)
  7. 毛皮で猫や猿のような小動物の姿に作った人形。山猫廻し見物の子どもたちに見せて、戯れにおどして喜ばせたもの。
    1. [初出の実例]「鈴稚丸には頭巾戴らし、項には山猫(ヤマネコ)舞はす箱を懸けさして」(出典:読本・頼豪阿闍梨怪鼠伝(1808)八)
  8. 田舎から都会に出てきた者。田舎出の者をののしっていう語。山猿。
    1. [初出の実例]「伊豆や房州から出て来た山猫(ヤマネコ)だものを、何が碌に出来るもんか」(出典:人情本・春色雪の梅(1838‐42頃か)初)
  9. 鎌・鋸(のこぎり)など山仕事に使用する道具類を入れる袋。
    1. [初出の実例]「遠く行く時には、必ず昼飯(ひる)を用意して、例の『山猫』(鎌、鉈、鋸などの入物)に入れて背負って出掛ける」(出典:破戒(1906)〈島崎藤村〉七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山猫」の意味・わかりやすい解説

山猫
やまねこ
Il gattopardo

イタリアの作家トマージ・ディ・ランペドゥーザ長編小説。1958年没後刊。物語は1860年、ガリバルディシチリア上陸に始まり、イタリア統一戦争の動乱期における貴族社会の没落と新興ブルジョアジーの台頭を背景としながら、変わりゆく時代の流れに静かな諦観(ていかん)とともに身をゆだねるシチリアの一貴族の生き方と、その一族の行く末とを、半世紀後の1910年に至るまで描いている。作品は刊行当初からイタリアの国内外で異例の評判をよび、ベストセラーとなったが、一方で、この小説の発刊に際し、現代イタリアの最良の作家であり編集者であったシチリア生まれのE・ビットリーニが、文学的責務に欠ける作品として出版拒否の姿勢を貫いた点も、見過ごせない。1963年ビスコンティによって映画化されて評判をよんだ。

[鷲平京子]

映画

1963年製作のイタリア・フランス合作映画。シチリア生まれの作家トマージ・ディ・ランペドゥーザの同名小説に基づき、ルキーノ・ビスコンティが監督した。1960年ガリバルディのシチリア上陸を背景に、山猫の紋章をもつサリーナ公爵(バート・ランカスター)が時代に取り残されるのを静かに受け容れ、公爵の甥(アラン・ドロン)と新興階級の娘(クラウディア・カルディナーレClaudia Cardinale、1938― )との結婚を祝福する。貴族の没落を描いたため、ミラノ貴族の末裔(まつえい)であるビスコンティ本人の心情が主人公に投影されたものと理解されることが多いが、ネオレアリズモ映画の系譜のなかで歴史劇を成立させたことの意義も見逃せない。カンヌ国際映画祭グランプリに輝くなど高く評価されたものの、テクニラマ(1フレームあたり通常の2倍の面積のネガを用いながら、水平方向にのみ圧縮をかける方式)という特殊な撮影方式を採用したうえに、配給の20世紀フォックス社が英語の短縮版を作成したため、2003年に大がかりな修復作業を経てオリジナル版が復元された。

[西村安弘]

『佐藤朔訳『山猫』(河出文庫)』『小林惺訳『山猫』(岩波文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「山猫」の解説

山猫

1963年製作のイタリア・フランス合作映画。原題《Il gattopardo》。イタリア統一戦争を背景に、貴族社会の没落を描く。監督:ルキノ・ビスコンティ、出演:バート・ランカスター、クラウディア・カルディナーレ、アラン・ドロンほか。第16回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「山猫」の解説

山猫 (ヤマネコ)

動物。野生ネコ類の俗称

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世界大百科事典(旧版)内の山猫の言及

【シチリア[島]】より

…シチリア島の日常会話語を母体とするベルガの詩的散文は,長・短編小説群となって結実し,同じくカターニア市出身の評論家L.カプアーナによって〈ベリズモ(真実主義)〉と規定され,イタリア各地とくに南部諸地域に,リアリズム文学を勃興させ,地方主義文学と呼ばれるにいたった。デ・ロベルトFederico De Reberto(1861‐1926)やL.ピランデロの長・短編小説も,また遅れて長編《山猫》一作を書き残したランペドゥーサGiuseppe Tomasi Di Lampedusa(1896‐1957)も,〈ベリズモ〉の周縁に位置している。 20世紀前半のイタリア文学は,一気に近代化をはかろうとして,〈未来派〉や〈魔法のリアリズム〉などいわゆるモダニズムの運動が顕著で,これらの文学運動はファシズムに同化していった。…

※「山猫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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