山窩(読み)サンワ

デジタル大辞泉 「山窩」の意味・読み・例文・類語

さん‐わ【山×窩】

さんか(山窩)

さん‐か〔‐クワ〕【山×窩】

山地河原などを移動して、竹細工や狩猟などを業としていた人々。さんわ。

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精選版 日本国語大辞典 「山窩」の意味・読み・例文・類語

さん‐か‥クヮ【山窩】

  1. 〘 名詞 〙 定住しないで、山奥川原などに天幕を張ったり小屋がけをしたりして、漂泊しながら生活を送っていた人々。竹細工・狩猟などを業とした。さんわ。

さん‐わ【山窩】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「わ」は「窩」の正音。「か」は慣用音 ) ⇒さんか(山窩)

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改訂新版 世界大百科事典 「山窩」の意味・わかりやすい解説

山窩 (さんか)

日本の山間部を生活の基盤とした,漂泊性の強い少数集団であったが,第2次大戦あたりを境にして不明となった。サンカは散家,山稼,山家などとも書かれてきたが,民間ではポン,ノアイ,オゲ,ヤマモンなどと呼んでおり,とくに平地の住民からは異端的に見られていた。その生活の実体は十分につかめてはいないが,現在までによるべき民俗学的研究は,柳田国男《“イタカ”及び“サンカ”》(《人類学雑誌》第27巻第6号,第8号,第28巻第2号。《定本柳田国男集》第4巻所収,1967),後藤興善《又鬼と山窩》(1940),三角寛《サンカの社会》(1965)などであろう。その種族的系統については,渡来人説や落人(おちうど)説,中世傀儡くぐつ)の後裔説などがあり一定していない。生産技術や社会関係,信仰といった生活様式が平地民とやや異なるために,そのいくつかの要素には注目すべきものがある。まず住居は山では洞窟に住み,移動のときには小屋とかテントを張って家族単位に生活し,その住居をセブリと呼んでいた。言葉のいくつかは集団固有のものを用い,それを兵庫県地方ではサンショコトバといっていた。サンショとは中世の散所(さんじよ)にあたり,芸能や宗教などにたずさわった者と根をひとつにすると推定されている。生産物としては細工物が多く,箕,籠,簑や笠,下駄などを作り,里におりては食料その他と交換した。移動には冬は南の暖かいところ,夏は北の涼しいところに居をかまえたといい,川漁にたずさわる集団も多かったようである。なかには九州のミツクリカンジン(箕作勧進)のように,戸籍を持たぬ者が多く,集団から脱落して平地におりた者がはじめて戸籍を持った例もある。集団ごとに統一的組織があって,頭目とか親分のようなリーダーが統率し,掟も強固であったようで,それが平地の人間に奇異な印象を与えた。平地の者と交渉するのは,物々交換のときや病人の出たときなどで,継続的に深い交際を持つことはなかった。

 第2次大戦後に急に姿を消したのは,日本経済の工業化にともなって彼らの生産物の需要が減少したことと,山間部の開発が進んだためらしい。しかし今日にいたるまで山窩の生活の本拠であった山間に,その墓場らしいものも見いだされておらず,また宗教的施設も確認されていないが,中国地方の山地のように,箕作(みつくり)の末裔と称する者が墓に石塔を立てないで,平たい石を1枚ほど置くのみという伝承もあるので,平地の生活に混入した山窩の文化要素の追究は可能であろう。また医療にしたがう人のなかには,山窩に請われて病人を助けた経験や伝承を持つ者もあり,その結果として山の幸を恵んでもらったとか,医術が急に上達して名医になったとかの話もあるので,異郷人としての山窩を通して,日本人の異人観をさぐるいとぐちとなりうる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山窩」の意味・わかりやすい解説

山窩
さんか

定住することなく,山間水辺に漂泊生活をした日本の漂泊民。九州以東,関東にかけて居住した。セブリと呼ばれる,テントまたは仮小屋に住みながら移動生活をおくり,男はすっぽん,うなぎなどの川魚の漁獲を,女は箕,ざる,籠などの竹細工製造を生業とした。かつてはオゲ,ノアイ,カンジン,ポンス,あるいは河原乞食などと呼ばれた。山窩の称もその由来は明らかではないが,前身が中世の傀儡師 (かいらいし) であるとする説が有力である。人口も調査困難のため明確にされておらず,1949年9月の全日本箕作製作者組合結成時には約1万 4000人とされたが,実数はこれを上回ったと考えられる。 (→箕作り )  

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百科事典マイペディア 「山窩」の意味・わかりやすい解説

山窩【さんか】

少数集団で山間を漂泊して暮した民。散家・山稼などとも書かれ,ポン,ノアイ,オゲ,ヤマモンなどとよばれた。居住地は東北地方と北海道を除く日本全域にわたった。通常〈せぶり〉と称するテント生活を営みながら川魚をとったり,箕(み)や箒(ほうき)・籠(かご)作りなどを生業とし,人里に出て売ったり米などと交換したりした。その社会は厳重な〈はたむら〉(おきて)の下に統制され,独特の習俗を伝えるほか,仲間だけに通用する隠語を多用したことが知られている。第2次大戦後,急速に姿を消した。柳田国男や三角寛による研究が知られる。

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普及版 字通 「山窩」の読み・字形・画数・意味

【山窩】さんわ・さんか

山奥、その人。

字通「山」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の山窩の言及

【箕作】より

… 一般に箕作の者は下り職とみられたが,茨城県では集落に土着するものを箕作と呼び,村々を移動するものは箕直(みなおし)といって区別した。しかし関東では広く箕直は山窩(さんか)のことをさし,箕を作りまた修繕するところから出た名であった。諸地方にみられる箕作山,箕作翁の伝説も,おそらく彼らの漂泊生活と無縁でない。…

※「山窩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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