(読み)チツ(英語表記)zhì

デジタル大辞泉 「帙」の意味・読み・例文・類語

ちつ【×帙】

[名]書物損傷を防ぐために包む覆い。厚紙しんとし、表に布をはって作る。文巻ふまき文包ふみづつみ
[接尾]助数詞。帙入りの本を数えるのに用いる。「和本

ちつ【帙】[漢字項目]

[音]チツ(漢)
本を包むおおい。「書帙巻帙

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精選版 日本国語大辞典 「帙」の意味・読み・例文・類語

ちつ【帙】

[1] 〘名〙 書物の損傷を防ぐためにおおい包むもの。紙、布、竹、板などを材料とするが、普通は厚紙に布をはって作る。奈良時代には、細い竹で簀(す)のように編み、裏に絹・錦などをはり、紐をつけて、巻子本(かんすぼん)を巻き包む竹帙が多い。畳紙(たとうがみ)一種の帙。書帙。ふまき。また、書物。
※大和法隆寺文書‐天平宝字五年(761)一〇月一日・法隆寺縁起并資財帳「帙五枚秘錦領」
食後の唄(1919)〈木下杢太郎自序縫箔もよごれたる帙の中から古い板本を取り出して」 〔梁元帝‐答劉縮求述制旨義書〕
[2] 〘接尾〙 書物を(一)に入れ、それを単位として数えるのに用いる。
菅家文草(900頃)四・客舎書籍「来時事事任軽疎、不身十帙余」 〔白居易‐偶吟詩〕

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改訂新版 世界大百科事典 「帙」の意味・わかりやすい解説

帙 (ちつ)
zhì

中国で用いられた書籍整理の用具。袠,袟などとも書く。後漢の許慎の《説文解字》には〈書衣なり〉と説明するのを,清の段玉裁は〈用いて書を裹(つつ)む者を謂う〉と敷衍し,また梁の顧野王の《玉篇》には〈小囊なり〉という。おそらく袋状のものであったと思われる。本の形が今のいわゆる和とじの体裁に固定するようになって以後,まもなく,厚紙に布を貼ったものを5枚に折り,重ねた書物の上下左右の4面を保護した形となり,特に上部は厚紙2枚が重なる今の体裁になったと思われる。布には濃紺,書物そのものには黄ばんだ紙が用いられることが多かったので,書庫に積み上げられた蔵書の山を〈黄巻青帙〉と形容することがある。帙でおおわれると,本が横になってその上下の黄色い面が露出するためである。上等な帙では普通は露出するその上下両面をもおおったり,布の色もとりどりの鮮やかなものにしたりすることもある。〈書套〉〈函(かん)〉,また〈書衣〉といわれることもある。単位名として全何帙,全何函などと呼ばれることも多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帙」の意味・わかりやすい解説


ちつ

書物を保護するために包む覆い。書帙(しょちつ)、書套(しょとう)ともいう。『源氏物語』などには「帙簀(ちす)」(または「ぢす」)とある。巻子本(かんすぼん)を巻き包むためにつくられたのが初めで、中国では、古くは絹や麻布で帙をつくった(『後漢書(ごかんじょ)』など)。わが国の奈良・平安時代の帙は、細い竹を芯(しん)にして、絹糸で模様を編み出し、錦(にしき)で四周を縁どり、裏には白絹や緋綾(ひあや)を張るなど華麗である。正倉院には「最勝王経帙(さいしょうおうきょうのちつ)」など、天平(てんぴょう)時代のものが伝存している。巻子本から発展して冊子本(さっしぼん)が現れてからは、帙の形は厚紙を芯として、布張りした折り畳み式になったが、このほか、書物よりやや大きい板二枚の間に書物を挟み、紐(ひも)で結ぶ板帙(いたちつ)(または「夾板(きょうばん)」)もある。

[金子和正]

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百科事典マイペディア 「帙」の意味・わかりやすい解説

帙【ちつ】

唐本,和本を保存するためのおおい。中国における最初の形態は明らかではないが,冊子本になってからは厚紙に布を張り書物の形に応じて折り曲げ,爪(つめ),紐(ひも)などで留める形式になった。また本の分量の単位名として,全何帙などと使われる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【巻子本】より

…《延喜式》の巻十二には,巻の前2行と末1行あけて書名を書くことが定められている。これらの巻子は細織の竹簾(すだれ)様の内側に絹布をはった帙(ちつ)で5巻あるいは10巻を包んだ。《源氏物語》の〈賢木(さかき)〉〈若菜〉の巻にも帙簀(ぢす)とあるのはそれである。…

【製本】より

…標題紙の幅は,本の大きさによって一定しない。
[帙(ちつ)のつくり方]
 和本類を保存するには,上等のものはすべて帙入れ(ちついれ)とする。帙には,〈無双帙〉(丸帙ともいう)という標準型のほか,半袖,鏡帙,四方帙などがあり,ほかに〈つばくろ〉とか〈たとう〉のような簡単なものもある。…

※「帙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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