帳台(読み)チョウダイ

デジタル大辞泉 「帳台」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐だい〔チヤウ‐〕【帳台/帳代】

寝殿造りの母屋内に設けられる調度の一。浜床はまゆかという正方形の台の上に畳を敷き、四隅に柱を立ててとばりを垂らしたもの。貴人の寝所または座所とした。御帳台みちょうだい。帳。
塗りごめ納戸の類。
帳台の試み」の略。
主人居間寝間にあてる室。

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精選版 日本国語大辞典 「帳台」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐だいチャウ‥【帳台・帳代・丁台】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 寝殿造の宮殿内に敷設する調度の一つ。浜床(はまゆか)の上に畳を敷き、四隅に柱を立て、帳を垂れ、中央を巻き上げて出入り口とする。貴族の寝所とした。御帳台(みちょうだい)。帳。斗帳。
    1. 帳台<b>①</b>〈春日権現験記絵〉
      帳台〈春日権現験記絵〉
    2. [初出の実例]「かかる人は、丁たいのとのゐなどしてこそ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  3. 寝殿の母屋(もや)に設けた貴族休寝用の台。天皇用の特に高くしたものは高御座(たかみくら)という。浜床。
    1. [初出の実例]「件御帳不帳台〈天〉平敷立之」(出典:殿暦‐嘉承三年(1108)七月二五日)
  4. 塗籠(ぬりごめ)・納戸(なんど)の類をいう。
    1. [初出の実例]「塗籠の口までせめ入けれども、美濃・尾張のならひ、用心きびしき故に、帳台のかまへしたたかにこしらへたれば、力なく長田父子を討ちえずして」(出典:平治物語(1220頃か)中)
  5. ちょうだい(帳台)の試み」の略。
    1. [初出の実例]「ちゃうたいの夜、行事の蔵人のいときびしうもてなして」(出典:枕草子(10C終)九二)
  6. 主人の居間・寝間にあてる室。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「すでに寺へ込み入てちゃうだい、眠蔵(めんざう)を捜しければ」(出典:御伽草子・ささやき竹(室町末)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「帳台」の意味・わかりやすい解説

帳台 (ちょうだい)

古代に貴族の住宅で使われた組立式の寝室。個室のようにも使われた。正しくは斗帳(とちよう)という。寝殿造の建物で使われた帳台は,方1丈,高さ1~2尺くらいの台(これが斗帳の台,つまり本来の帳台で,浜床(はまゆか)ともいう)の上に,柱高約7尺の骨組みを立て,天井をのせる。天井は格子状の両面に白絹を張った明障子(あかりしようじ)で,この四周に,冬は平絹,夏は生絹(すずし)製の帳帷(ちようかたびら)をかける。帳帷は四幅仕立てのもの4枚と五幅仕立てのもの4枚からなり,四幅のものを四隅にL字形にかけ,ついで四方の中央部に五幅ものをかける。この上にさらに帽額(もこう)とよぶ横布を一条張りめぐらす。帳の骨は通常は黒漆塗だが,神事や出産用には白木が用いられた。南が正面で,昼間は南,西,東の3方の帳は巻き上げ,かわりに几帳きちよう)を立てる。前後の両柱にはそれぞれ魔除けのための懸角(かけつの)と八稜鏡をかけ,中には畳を2枚,南北に敷く。平安後期になると下の台(浜床)が省略されて畳だけの地敷(じしき)となる。また帳台には障子帳(しようじちよう)もある。これは帳帷のかわりに障子で囲んだものである。平安後期に使われ,これが後の帳台構(ちようだいがまえ)の原型になった。

執筆者:

大規模な書院造住宅の主室を飾る座敷飾要素の一つで,押板(床の間),違棚(ちがいだな),付書院(つけしよいん)と組み合わせる。主室に隣接して帳台(納戸)が位置し,その主室に面する側に設けた出入口の建具装置を帳台構(納戸構)とよぶ。主室の床面より一段高く敷居を構え,内法(うちのり)高を低くつくり,中央に開口部,左右に袖壁を設け,両者の境に方立(ほうだて)を立てる。開口部には左右に引き分ける襖障子2枚を装置し,敷居,鴨居,方立を黒漆塗に仕上げ,飾金具で装飾。襖障子の引手を通常の金具にかえて総(ふさ)つきの組紐につくる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帳台」の意味・わかりやすい解説

帳台
ちょうだい

寝殿の母屋(もや)内で、風を避け寒さを防ぐため、四方に帳(とばり)を巡らし、このなかで座ったり寝たりする屏障具(へいしょうぐ)を兼ねた座臥具(ざがぐ)。御帳台(みちょうだい)、斗帳、ただ帳ともいう。構造は、土居(つちい)というL字形の台に六尺七寸(約200センチメートル)の柱3本を立て四隅に置き、その間を横木の鴨居(かもい)で渡し、上面に枠組みの明(あか)り障子をのせ、四方に帳を八枚垂らし、上部に帽額(もこう)を巡らしている。帳は、夏は生絹(すずし)に花鳥、冬は練(ね)り絹に朽木形を描いている。帳の紐(ひも)は、黒と紅とを中央で縫い合わせたもので、帳を巻き上げてくくる。巻き上げるときは、木端(こはし)という木の細い板を入れている。帳台内部には、板床の上に土敷(つちしき)という繧繝縁(うんげんべり)の畳二畳を敷くが、皇后の住む常寧殿(じょうねいでん)に置く帳台では、浜床(はまゆか)といって、高さ九寸(約27センチメートル)、幅八尺六寸(約260センチメートル)四方の黒漆塗りの台を畳の下に置く。畳の上に同じ畳を一枚置く。さらに表莚(うわむしろ)という綾地(あやじ)に錦(にしき)の縁(へり)をつけた敷物、さらに五色に染めた藺(い)製の花莚の竜鬢(りゅうびん)を敷き、茵(しとね)を重ね、沈(じん)木でつくった枕(まくら)などが置かれている。前方の柱左右に、湿けを避く呪(まじな)いとして、沈か桑でつくった御角(みつの)を1個ずつかける。元来は犀(さい)の角で、手に入りにくいので木製の模造品となった。また後方の柱に魔除(まよ)けの意味の八稜(はちりょう)鏡を一面ずつかける。天皇・皇后の御帳台に限って、右に黄色の口を開く獅子(しし)、左に白色の角があり口を閉じた狛犬(こまいぬ)を置くが、これは、帳が風に吹かれるのを防ぐ重石(おもし)(鎮子)で、守護の威の役目をもつようになる。

[郷家忠臣]

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「帳台」の解説

ちょうだい【帳台】

古代の貴族住宅で使われた組み立て式の調度で、縦横2m程度の台の上に、高さ2m強の木の骨組みを作り、周囲に布を張り巡らせて畳を敷き、中を寝所としたもの。昼間は座所としても用いた。寝殿造りをはじめとする古代の貴族住宅には間仕切りがなく、風を防ぎ人目を隔てるために用いられたが、鎌倉時代に部屋の間仕切りができて、寝室が生まれ、帳台は寝室を意味するようになる。また、民家では寝間や納戸をいった。◇「浜台」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の帳台の言及

【寝室】より

…アイヌの住居では炉端の席が決まっており,各人の後ろの空間が寝場所になっていたので,おそらくそのような使われ方をしたのであろう。平安時代には上層の公家は寝殿内に御帳(帳台)という寝台を置いた。畳2枚ほどの台の上に4本の柱を立て,天井を張り,四方に帳を垂らしたもので,台の上に畳を置き,茵(しとね)を重ね,衾(ふすま)を掛けて就寝した。…

【寝殿造】より

…そして日常生活に必要な樋殿(ひどの)(便所)や湯殿(浴室)などの設備もそれぞれ別個に設けられ,食事さえ別々に行われた。寝殿の内部(母屋)には塗籠(ぬりごめ)と呼ばれる寝室のみが部屋として間仕切られていたが,これもしだいに形骸化し,寝殿の中央近くに置かれた帳台が寝所となった。帳台の近くには畳を敷き,上に茵(しとね)を置いて昼の居所とし,その周囲には厨子棚や二階棚を置いて日用品を収納した。…

【寝間】より

…当時の〈ねま〉がこのような形状になった理由ははっきりしない。飛驒の白川郷や八丈島に〈ちょうだ〉の語が残っているのをみると,平安時代の伝統を受け継いでいるようにみえるが,平安時代の帳台(ちようだい)は周囲に帳を垂れた部屋であり,民家の寝間は《春日権現験記》に描かれた納戸の形式に類似している。納戸は本来は貴重品を収めておく所であるが,納戸が寝室として使われた事例が室町時代後期から散見するようになるので,おそらく戦国時代の不穏な世相が納戸を寝間にする習慣を作りだしたものと考えられ,寝間という機能の一致から〈ちょうだ〉という言葉が当てられたと考えられる。…

※「帳台」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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