常願寺川(読み)ジョウガンジガワ

デジタル大辞泉 「常願寺川」の意味・読み・例文・類語

じょうがんじ‐がわ〔ジヤウグワンジがは〕【常願寺川】

富山県中央東部を流れ、富山湾に注ぐ川。長さ56キロ。中新川なかにいかわ立山千寿せんじゅヶ原で、川と称名しょうみょう川が合流した地点からの名称。真川は立山連峰薬師岳西斜面に源を発し、称名川山(標高3003メートル)に源を発する。下流で和田川小口おぐち川を合流する。上流から中流は段丘が発達、下流は扇状地となっている。

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日本歴史地名大系 「常願寺川」の解説

常願寺川
じようがんじがわ

上新川かみにいかわ郡と中新川郡の境を西流、立山町岩峅寺いわくらじ付近で流れを北に変え、立山町と大山おおやま町の境、富山市東部を北流して富山湾に注ぐ。約四八の支流をもち、県南端の寺地てらじ(一九九六メートル)に源を発する川が立山カルデラを流れてきた川と合流して常願寺川本流となる。その後北西に流れ、千寿せんじゆヶ原で立山西麓に源を発する称名しようみよう川と合流して西流し、さらに和田わだ川・小口おぐち川を合流する。流域面積三六八平方キロ、幹川流路延長五六キロ。一級河川。

〔流域とその地形の特徴〕

大山町上滝かみだき付近から上流両岸には段丘が発達し、下流では典型的な大扇状地を形成し、神通川扇状地とともに富山市街地をのせる平野を形成する。上流の称名川・湯川・真川の各流域は非常に崩壊しやすい地形・地質で、とくに湯川谷が著しい。これらの崩壊地より流出した土砂が下流に押出され、上滝より下流富山市にかけて天井川を形成している。流域の地質は、河口より上滝地点までは第四紀沖積層の砂礫で扇状地を構成している。上滝から立山町千垣ちがき周辺までは、第三紀中新世の八尾層群の砂岩・礫岩・泥岩・凝灰岩および安山岩などからなり、千垣より千寿ヶ原周辺までは中生代ジュラ・白亜紀の手取層の礫岩・砂岩・頁岩からなる。上流部は立山火山活動による五色ごしきヶ原・弥陀みだヶ原などの溶岩台地と立山カルデラがあり、カルデラ壁は急峻で崩れやすく、カルデラ内部の岩石は変質し、常願寺川最大の土砂生産地となっている。立山の西はずれを走る跡津あとつ川断層は活動的な横ずれ断層で、一度に二―三メートルも動く。この断層によって引起された安政五年(一八五八)の大地震は大鳶おおとんび小鳶ことんび両山の大崩壊を引起し、四億一千万立方メートルにも達する崩壊土砂を生み、カルデラ周辺には、なお約六億立方メートルの崩壊残土が残る。

〔河道・名称〕

千寿ヶ原から上滝までの中流部では、平均河床勾配六〇分の一を下らず、ひとたび洪水が起こると、巨岩や土砂を含んだ濁流が激しい勢いで流下し、過去に数多くの災害が繰返された。下流扇状地では神通川と白岩しらいわ川の間を幾つもの支流により網川を形成して広範囲にわたって流れていたが、近世に入りほぼ現在の流路となり、貞享二年(一六八五)には鍬崎くわさき山の一部が崩壊し、流路は西に転じたとされる(水橋町郷土史)。最終的には下流は現在の富山市水橋柴草みずはししばくさ水橋中村みずはしなかむらを経て、JR北陸本線鉄橋付近で白岩川に合流して固定した。しかし明治二四年(一八九一)大洪水後の改修工事で白岩川との分離が図られ、直接富山湾に流入するようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「常願寺川」の意味・わかりやすい解説

常願寺川 (じょうがんじがわ)

富山県南東部,立山連峰に源を発し,富山平野東部を流れ,富山湾に注ぐ川。富山市と中新川郡の境界をなす。幹川流路延長56km,全流域面積368km2。源流は二つに分かれ,一つは岐阜県境の寺地山に発する真(ま)川で,立山カルデラ内を流れてきた湯川と合流して常願寺川となる。立山西斜面に源を発して西流するもう一つの源流称名(しようみよう)川は,途中壮大な称名滝をつくり,千寿ヶ原で合流する。上流部には段丘が,下流部には富山平野東部を占める大扇状地が発達している。急流で上流に崩壊地が多いことから古来暴れ川として著名であった。1858年(安政5)2月の大地震で鳶(とんび)山のカルデラ壁が崩壊し,その後の融雪期に崩壊した土石を伴った大洪水が発生して下流一帯に大被害をもたらした。91年にも大水害が発生,これを契機に本格的な改修工事が始められ,1906年以降はカルデラ内部の砂防工事も続けられているが,土砂の流出が多く,下流部では河床を高め天井川となっている。

 一方,急流であることから電源開発もすすんでおり,常願寺川水系には8ダム,27発電所が設けられ,最大出力の総計は81万2500kW(1997)に及ぶ。とくに支流和田川上流の開発は大規模で,37年富山県電気局が着手,第2次世界大戦による中断ののち55年北陸電力が再開し,59年堤高140mの有峰(ありみね)ダムが完成,堪水面積5km2有峰湖が生まれた。常願寺川の雪どけ水は下流扇状地の農業用水源として重要であるが,かつては両岸につくられた小用水は出水ごとに決壊し,また渇水に悩まされる状況を繰り返した。1891年の大洪水を機に用水の合口化がすすめられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「常願寺川」の意味・わかりやすい解説

常願寺川
じょうがんじがわ

富山県中央東寄りを流れて富山湾に注ぐ川。一級河川。延長56キロメートル、流域面積368平方キロメートル。上流は真川(まがわ)と称名川(しょうみょうがわ)の二つに分かれる。本流の真川は立山(たてやま)連峰の薬師岳(やくしだけ)西斜面に発し、途中立山カルデラから流れ出る湯川と合流する。称名川は立山の雄山(おやま)直下では浄土沢とよばれ、称名滝となって落下し、立山町千寿ヶ原(せんじゅがはら)で真川と合流して常願寺川となる。下流で和田川と小口(おぐち)川をあわせて両岸に段丘を形成し、富山市上滝(かみたき)で典型的な扇状地を形成する。1858年(安政5)の大地震で大鳶(おおとんび)山のカルデラ壁が大崩壊し、上流の谷壁の崩壊もあり、融雪期には下流一帯は泥水の海と化した。大雨ごとに砂礫(されき)の流出が激しく、1906年(明治39)以来カルデラ内部の砂防工事が続けられている。常願寺川下流では毎年100万トン近い土砂の流出があり、河床が高くなり、富山市と立山町を結ぶ大日(だいにち)橋付近では水田面より約8メートルも高い天井(てんじょう)川となっている。常願寺川水系のダムは有峰(ありみね)ダムなど8か所、発電所は27か所、最大出力は、約80万キロワット(2005)に達する。

[深井三郎]

『『常願寺川沿革誌』(1962・建設省北陸地方建設局富山工事事務所)』


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百科事典マイペディア 「常願寺川」の意味・わかりやすい解説

常願寺川【じょうがんじがわ】

富山県中部の川。長さ56km。立山カルデラ内の湯川を源流とし,真川,称名(しょうみょう)川,和田川などを合わせ,富山市上滝で大きな扇状地を形成,富山平野を北流して富山湾に注ぐ。土砂の流出が著しく,下流部は天井川をなす。電源開発が進み,和田川には有峰ダムがある。称名川には称名滝がかかる。
→関連項目大山[町]立山[町]天井川富山[県]富山平野

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「常願寺川」の意味・わかりやすい解説

常願寺川
じょうがんじがわ

富山県北東部を流れ富山湾に注ぐ川。全長約 56km。上流は立山に発する称名川で,薬師岳に発する真 (ま) 川を千寿ヶ原で合せ常願寺川となる。大山町上滝付近からは数段の段丘面をもつ広い扇状地を形成している。源流部が立山のため土砂の流出が激しく,扇状地面では天井川を形成し,しばしば水害を引起した。水系には有峰ダムをはじめ 45ヵ所の発電所があり総発電力約 80万 kW。

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