翻訳|parity
金本位制のもとでは,各国通貨一単位は一定量の金で表示され,通貨の金価値保証が行われた。中央銀行は,その国の通貨をいつでもその定められた比率での金との交換を保証した。この一定交換比率のことを法定平価mint par(mint par of exchange),または金平価gold parという。第2次大戦後のIMF体制のもとでは,この法定平価は1オンス=35ドルであった。これは,法律によって定められた金とドルとの交換比率,ドル表示の金の公定価格である。一般に,公式に決められた通貨と金,通貨と通貨の間の交換比率を平価とよぶ。戦後IMF体制のもとでは,各国通貨は一定比率でドルと交換されるように決められていたが,この公式に決められたドルとの交換比率は為替平価またはIMF平価とよばれた。固定相場制のもとにおける各国通貨の固定為替レートがこの為替平価である。
自国通貨の平価が公式に決まっている場合におきることであるが,なんらかの理由によって,その平価を変更しなければならないときがある。その場合,たとえば1オンスの金が35ドルである状態から,38ドルへ変更されたならば,ドルの法定平価は切り下げられたという。これは金のドル表示の公定価格が3ドル高くなったということである。したがって,法定平価(金平価)の切下げというのは,中央銀行(アメリカの場合は連邦準備銀行)が売却または買取りするときの金のドル表示価格が上昇するということと同じである。自由取引の行われている金市場において,金のドル表示価格が値上がりしてもそれを法定平価の切下げとはいわない。また,逆に1オンスの金が35ドルの状態から33ドルに変更されたならば,それは法定平価(金平価)の切上げとなる。この場合には,金のドル表示の公定価格が2ドル安くなったということである。法定平価を2ドルだけ変更したことにより,中央銀行である連邦準備銀行は金の売却または買取価格を引き下げる。これは,金を基準にしてみるときに,ドルの金価値が下落したことを意味している。それだけドルの金価格がゆらぎ,ドルへの認識が弱まったことになる。逆の場合には法定平価が切り上げられ,ドルの金価値が上昇し,ドルへの信認は強まるであろう。
もちろん,どのような法定平価であっても,金との交換が中央銀行によって保証されなければ意味がない。たとえば,1971年12月ワシントンのスミソニアン博物館で国際通貨会議が開催され,アメリカのドルは金に対して7.89%切り下げられた(スミソニアン合意)。その結果,金のドル表示公定価格は1オンスあたり35ドルから38ドルに上昇した。また73年2月には,ドルは金に対してさらに10%切り下げられ,1オンスの金の公定価格は42.22ドルに上昇した。これは戦後行われたドルの法定平価の切下げの例である。しかし,1968年3月の段階において,アメリカは金とドルとの法定平価による兌換(だかん)を事実上停止していた。それは,ドルに対する信認が薄らいでいたため,自由金市場では金需要が急激に増大し,金のドル表示価格は公定価格を超えて上昇してしまったからである。この金価格の上昇がおきた理由は,いずれアメリカの法定平価によるドルと金との兌換が困難となり,ドルの平価切下げが行われるであろうとの見方が支配的になったことによる。したがって,71年12月,73年3月のドルの法定平価の変更は実質的な意味はなかった。
各国通貨のドルとの一定交換比率はドルの各国通貨表示の公定価格を意味しているが,この為替平価の切下げ(平価切下げ)は,ドルに対する自国通貨の価値を下落させることであり,為替切下げ(デバリュエーションdevaluation)ともいわれる。逆の場合は為替切上げ(リバリュエーションrevaluation)であり,ドルに対する自国通貨価値の上昇をもたらす。戦後,最も劇的な為替平価の切下げの例は,1967年におけるイギリスのポンドの切下げである。イギリスの国際収支の悪化とイギリス経済の不振を背景にして,ポンドの対ドル為替相場(対ドル為替平価)を維持することは困難との見方が強まり,ポンド売りドル買いが激しくなり,ついに平価は1ポンドに対して2.80ドルから2.40ドルに切り下げられた。また劇的な切上げの例は,ドルと同じく71年12月の日本円にみられた。このとき円は1ドル360円から308円へと戦後はじめて16.88%((360-308)÷308で算出)切り上げられた。なお,78年4月1日,IMFの新協定が発効し,金平価は正式に廃止された。
執筆者:渡部 福太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
各国が通貨の対外価値を示すために定めた、金や一定の金量目を有する外貨(たとえば米ドル)、あるいはヨーロッパの共通通貨単位ECU(エキュ)といった共通の価値基準との交換比率を平価という。さらに、そこから間接的に計算される各国通貨間の交換比率を為替(かわせ)平価(parity)というが、一般にはこれも含めて平価とよんでいる。
第二次世界大戦前の金本位制の下では、一定量の金と結びつけることで、金平価が設定された。戦後の旧IMF体制においては、金または米ドル(純金1オンス=35ドル)に対して設定し、IMF平価が定められた。同様に、EMS(ヨーロッパ通貨制度)の下では、共通通貨であるECUに対してセントラル・レートである平価が設定され、そこから参加国通貨間の為替平価が計算された。
1973年に、主要国が変動為替相場制に移行して以来、平価概念は後退した。しかし、開発途上国を中心に、現在でも米ドル、ユーロ、SDR、独自の通貨バスケットに対する平価を設定し、自国通貨の安定を図っている国は相当数に上る。
なお、平価にはその国の通貨のあるべき価値(均衡為替相場)という意味も含まれており、変動為替相場制の今日も、購買力平価、金利平価という為替相場の均衡値、理論値として使用されている。すなわち、均衡為替相場は各国の通貨の購買力(裏返せば、物価水準)の比率である購買力平価によって決まるという主張(購買力平価説)、各国の通貨の直物相場と先物相場の開きは、各国間の金利差にほぼ等しくなるように決まるという主張(金利平価説)である。
[中條誠一]
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