知行国主が国務に関して発給する御教書(みぎようしよ)。本来は口頭命令をいうが,転じてこれを奉った家司(けいし)が国司(受領(ずりよう))に代わって発給する奉書を意味するようになる。知行国制は11世紀前半から現れはじめるが,国主が受領の国務に介入するようになるのは12世紀になってからである。はじめ国主は,受領等国務を沙汰する者に家司の奉ずる御教書を発し,国司庁宣等を発給させた。この御教書が文書としての国宣であるが,この場合は正式の国務文書を発給させるための内部手続文書にすぎない。12世紀末になると国主はさらに国務に対する権限を強め,みずから国衙を指揮するため,目代にあてる御教書を発したり,国裁によって権利を得る者に直接御教書を書き与えたりするようになる。これが内部手続文書から一人前に自立した国宣である。国宣の様式は,一般の奉書と共通するが,奉者は国主の家司(多くは前国司)であり,国主の袖判をもつものが多い。結び文言が〈国宣所候也〉となるのが特徴で,永続的効力を有する国宣の日付には書下(かきくだし)年号が用いられた。国宣は鎌倉時代を通じて用いられ,建武政権下で再評価されて盛んに通交したが,南北朝時代,南朝の後退とともに姿を消す。
執筆者:富田 正弘
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