国宣(読み)コクセン

デジタル大辞泉 「国宣」の意味・読み・例文・類語

こく‐せん【国宣】

国司知行国主がその所領内に公布する文書
「いかでか―をばそむき申さん」〈今昔一六・一八〉

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精選版 日本国語大辞典 「国宣」の意味・読み・例文・類語

こく‐せん【国宣】

  1. 〘 名詞 〙 古文書様式の一つ。国司あるいは知行国主の意をうけて出す奉書鎌倉時代南北朝時代に多く、書留めに「国宣所候也」「依国宣、執達如件」などの文言がある。平安時代以来の国司庁宣に比較して、書出しに定まった文言がなく、また事書もなく、文書の袖に国司あるいは知行国主花押袖判)のあるものが多いなどの特徴がある。
    1. [初出の実例]「何でか国宣をば背き申さむ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一六)

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改訂新版 世界大百科事典 「国宣」の意味・わかりやすい解説

国宣 (こくせん)

知行国主が国務に関して発給する御教書(みぎようしよ)。本来は口頭命令をいうが,転じてこれを奉った家司(けいし)が国司(受領(ずりよう))に代わって発給する奉書を意味するようになる。知行国制は11世紀前半から現れはじめるが,国主が受領の国務に介入するようになるのは12世紀になってからである。はじめ国主は,受領等国務を沙汰する者に家司の奉ずる御教書を発し,国司庁宣等を発給させた。この御教書が文書としての国宣であるが,この場合は正式の国務文書を発給させるための内部手続文書にすぎない。12世紀末になると国主はさらに国務に対する権限を強め,みずから国衙を指揮するため,目代にあてる御教書を発したり,国裁によって権利を得る者に直接御教書を書き与えたりするようになる。これが内部手続文書から一人前に自立した国宣である。国宣の様式は,一般の奉書と共通するが,奉者は国主の家司(多くは前国司)であり,国主の袖判をもつものが多い。結び文言が〈国宣所候也〉となるのが特徴で,永続的効力を有する国宣の日付には書下(かきくだし)年号が用いられた。国宣は鎌倉時代を通じて用いられ,建武政権下で再評価されて盛んに通交したが,南北朝時代,南朝後退とともに姿を消す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国宣」の意味・わかりやすい解説

国宣
こくせん

国務に関して知行国主(ちぎょうこくしゅ)が発給する御教書(みぎょうしょ)。12世紀前半ごろから受領(ずりょう)(国司(こくし))にかわって知行国主が国務を握る傾向が現れ、後半には大半の国々に及ぶが、その徴証となるのが、在京の国司の発給する庁宣(ちょうぜん)の袖(そで)(文書の右端)に国主が花押(かおう)を据えること、あるいは庁宣に国主の御教書を添えることである。その御教書が国宣である。鎌倉時代には、国主から目代(もくだい)への国務を指令する文書として独立に使用され、南北朝時代(とくに南朝の国司が使用)まで見受けられる。

富田正弘]

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