三重県南東部、度会郡にある町。1955年(昭和30)内城田(うちきだ)、小川郷(おがわごう)、一之瀬(いちのせ)、中川の4村が合併して度会村となり、1968年町制施行。JR参宮(さんぐう)線・近畿日本鉄道山田線伊勢市駅からバスがある。伊勢自動車道玉城(たまき)インターチェンジが近い。町名は古代からの郷名を引き継ぐ。紀伊山地の東端にあたり、伊勢(いせ)湾に注ぐ宮川の中流に位置する農林業の町。宮川とその支流一之瀬川沿いにわずかに平地と耕地があるほかは80%以上が山林。木材、茶、シイタケなどを産出するが、とくに茶の栽培が盛んであり、良質で度会茶として知られる。川筋はアユの好漁場。1996年(平成8)宮川沿いに大規模公園「宮リバー度会パーク」が開園した。注連指(しめさす)の正法(しょうほう)寺にある木造十一面観音(かんのん)立像は国指定重要文化財。面積134.98平方キロメートル、人口7847(2020)。
[伊藤達雄]
『『度会町史』(1981・度会町)』
三重県中央部,度会郡の町。人口8692(2010)。大部分が山地で,大台ヶ原山に発する宮川が北部を東流し,北流してきた一之瀬川が町域北東端で合流する。古くは伊勢神宮の御厨(みくりや)や御薗が置かれており,大野木,棚橋など一帯には,平安時代,神宮祭主大中臣氏が開発したという大橋御薗があった。鎌倉時代には棚橋の蓮華寺が同御薗の地頭職を有していた。蓮華寺はのちに大神宮法楽寺と称され,多くの寺領をもち公武御祈禱所として栄えた。南北朝初期には北朝方の拠点ともなっている。一之瀬川上流左岸の脇出には南朝方愛洲氏の一之瀬城があった。江戸時代は紀州藩領で,薪炭を産し,宮川,一之瀬川では鵜飼いやアユ網漁が行われた。現在は農林業を中心とし,山腹傾斜地での茶栽培が盛んで,〈伊勢わたらい茶〉として出荷される。また杉,ヒノキ材の生産,シイタケ栽培も行われる。注連指(しめさす)にある正法寺の木造十一面観音立像は国の重要文化財。棚橋には正月の御頭神事が伝わる。
執筆者:上田 雅子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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