古代律令制(りつりょうせい)下、国郡制の郡全体を神宮・神社の領地とされていたその郡のこと。伊勢(いせ)の神宮では創建当初よりその周辺の地を神地(かんどこ)としていたが、大化改新による国郡制の施行とともに、その地を度会(わたらい)・多気(たき)の2郡とし、それを神郡と定めて、その郡よりの収入は国庫に入れるのではなく、すべて神宮に納め、その用途にあてることとし、のち平安末期までに伊勢国8郡が神郡とされていた。ほかに723年(養老7)の時点で、安房(あわ)神社に安房国(千葉県)安房郡が、出雲(いずも)大社に出雲国(島根県)意宇(おう)郡が、宗像(むなかた)大社に筑前(ちくぜん)国(福岡県)宗像郡が、鹿島(かしま)神宮に常陸(ひたち)国(茨城県)鹿島郡が、香取神宮に下総(しもうさ)国(千葉県)香取郡が、日前(ひのくま)・国懸(くにかかす)神宮に紀伊国(和歌山県)名草郡が定められていたが、律令制の崩壊とともに消失した。
[鎌田純一]
社領の一種で,貢納と奉仕の任をもつ神戸(かんべ)が一郡にわたって存在し,郡全体が神領となったもの。伊勢神宮では古くから伊勢国多気,度会郡を神領として寄せられ,その後飯野郡を加えて特にこれを神三郡(しんさんぐん)と称した(のち神八郡)。このほか,安房神社の安房国安房郡,鹿島神宮の常陸国鹿島郡,香取神宮の下総国香取郡,出雲大社の出雲国意宇(おう)郡,宗像神社の筑前国宗像郡,日前国懸(ひのくまくにかかす)神宮の紀伊国名草郡などがある。中世以降神領としての実質的な機能はなくなっていったが,名目上は明治維新まで続いた。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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