弄る(読み)イジル

デジタル大辞泉 「弄る」の意味・読み・例文・類語

いじ・る〔いぢる〕【弄る】

[動ラ五(四)]
指先や手で触ったりなでたりする。「ネクタイを―・る」
物事少し変えたり、動かしたりする。「編成を―・る」
趣味として楽しむために、あれこれと手を加えたり、操作したりする。仕事などを趣味のように扱っていう場合もある。「盆栽を―・る」「会社では、毎日パソコンを―・っています」
おもしろ半分に、いじめたり、からかったりする。「先輩が新入社員を―・って楽しむ」
「何にても芸をせよ、と―・る」〈浮・一代男・四〉
[補説]自分のことをいう場合には、軽い自嘲や謙遜気持ちを、相手のことでは、小ばかにした気持ちを含むことがある。
[可能]いじれる
[類語]まさぐるひねくるもてあそぶいじくる

ま‐さぐ・る【弄る】

[動ラ五(四)]手先であちこち探す。指先でいじる。もてあそぶ。「バッグの中を―・る」「数珠じゅずを―・る」
[類語]いじるひねくるもてあそぶいじくる探る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「弄る」の意味・読み・例文・類語

いじ・るいぢる【弄】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 弱い者を困らせたり、苦しめたりする。からかったり、いじめたりする。ちょっとしたことをこせこせ言う。
      1. [初出の実例]「きはめのごとくはろふべしといぢるきゃくあり。もとより此いろ代のきわめなし」(出典:茶屋諸分調方記(1693)二三)
      2. 「公家衆倒し、百姓虐(せた)げ、町人いぢり」(出典浄瑠璃大塔宮曦鎧(1723)一)
    2. 無理に求める。強要する。ねだる。
      1. [初出の実例]「なれこ舞、何にても芸をせよといじる」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)四)
    3. 指先でなでたり、ひねったりする。
      1. [初出の実例]「唐辛をおっつぶして、尻から足の爪さきまでぬれば、凍ゑないもんだぞ。〈略〉とっぱづして目なんどをいじった時、血目玉ががいにうずくべいぞ」(出典:雑兵物語(1683頃)上)
      2. 「糖(あめ)をいぢって、其指をなめては」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
    4. なぐさみに、収集物や器械などをもてあそぶ。ちょっとした物事を手先で扱う。自分の場合は謙遜の気持をこめていう。「庭をいじる」
      1. [初出の実例]「寝床の上に据わりながら機械をいぢるぐらゐの事は出来たのである」(出典:異端者の悲しみ(1917)〈谷崎潤一郎〉)
    5. はっきりした方針や目的もなく、または、部分的に、物事にあれこれと手を入れて変えたり、動かしたりする。
      1. [初出の実例]「あわてて塀なんか、いじったりすると、何もかも台なしになる」(出典:抱擁家族(1965)〈小島信夫〉二)
      2. 「噂を手がかりにして人事をいじるわけにはゆきません」(出典:笹まくら(1966)〈丸谷才一〉六)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 むずかる。
    1. [初出の実例]「泣けば勦(いた)はり、意地(イヂ)れば歉(すか)し」(出典:信仰之道(1894)〈松村介石〉安心立命)

弄るの語誌

[ 一 ]類義語として「もてあそぶ」「いらう」「なぶる」がある。「もてあそぶ」は奈良時代に見えるが、後世には、感情などの抽象的なものをも対象として表現するようになる。「いらう」は室町時代以降に見られ、現在は関西、中国地方で「いじる」の意で使われている。「なぶる」は、平安時代初期から現代まで「からかいもてあそぶ」意味で使われている。


ま‐さぐ・る【弄】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 手でいじる。てなぐさみにする。もてあそぶ。
    1. [初出の実例]「琴を臥しながらまさぐりて」(出典:落窪物語(10C後)一)
  3. 手または足先をしきりに動かして、あたりを捜し求める。
    1. [初出の実例]「懐膨らし草履をまさぐり貌は後ろを振返り」(出典:細君(1889)〈坪内逍遙〉二)
  4. 心の中をあれこれとたどってみる。思いめぐらす。思いまわす。
    1. [初出の実例]「それは誰しも少年期の涯もない憂愁のなかで一度は自身のなかにまさぐってみた最初の疑問に違いない」(出典:死霊‐三章(1946‐48)〈埴谷雄高〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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