精選版 日本国語大辞典 「引回・引廻」の意味・読み・例文・類語
ひき‐まわ・す ‥まはす【引回・引廻】
〘他サ五(四)〙
① 引いてまわす。つかんで振りまわす。また、ひっぱって連れていく。あちこちとひっぱり歩く。ひきずりまわす。
※発心集(1216頃か)三「眼をいからして太刀を引まはせば」
③ 幕、布などをまわりに張りめぐらす。また、屏風などをまわりに引きめぐらす。
※蜻蛉(974頃)中「幕ひきまはしてとかくするほどに」
④ 身をつつむように着る。からだにまく。
※申楽談儀(1430)能の色どり「女能には、小袖をもながながとふみくくみ、はだぎのねりなどをも、ふかぶかと引まはし」
⑤ まわりを囲む。とり囲む。とりまく。
※曾我物語(南北朝頃)五「その山の鹿は、〈略〉渚にくだりて、数をつくしてならびふす、そのひまに、山へせこをいれて、夜ちうにひきまはし」
⑥ 思いのままにする。自分のものにする。取る。
※史記抄(1477)一九「東から南の中すぎまでは、越が引まわしたぞ」
⑦ 人を指導する。指図して動かす。とりはからう。
ひき‐まわし ‥まはし【引回・引廻】
〘名〙
① つかんで振りまわすこと。ひきずりまわすこと。
※歌舞伎・桜姫東文章(1817)大詰「おれが内の前は引廻(ヒキマハ)しの立場(たてば)よ」
③ 指導して世話をすること。指図すること。とりはからうこと。
※醍醐寺文書‐(年月日未詳)(室町後)僧堯済カ書状「小法師無二御心許一存候。可レ然様御引廻専一候」
④ 身にまとうこと。まわりにめぐらすこと。また、そのもの。
※太平記(14C後)一六「懸る敵の馬の平頸、むながひの引廻(マハシ)、切ては刎ね倒し」
⑤ 「ひきまわしガッパ(引回合羽)」の略。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五「こんじまのせんたくしたる、ひきまはしをきて」
※電車の窓(1910)〈森鴎外〉「赤地に白く洗粉の名を出した引廻(ヒキマハ)しのやうな物を着てゐる」
ひき‐めぐら・す【引回・引廻】
〘他サ五(四)〙 引いてめぐらす。まわりにぐるりと引く。ひきまわす。ひきめぐらかす。
※源氏(1001‐14頃)須磨「いとおろそかに、軟障許をひきめぐらして」
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