御斎会(読み)ゴサイエ

デジタル大辞泉 「御斎会」の意味・読み・例文・類語

ご‐さいえ〔‐サイヱ〕【御斎会】

正月8日から7日間、大極殿だいごくでん(のちに清涼殿)に高僧を集め、金光明最勝王経を講義させ、国家の安泰と五穀豊作を祈願した法会結願けちがんの日には、御前内論議うちろんぎが行われた。奈良時代に始まり、平安時代に盛行したが、室町時代に中絶した。御斎講。みさいえ。
天皇が僧を集めて斎食ときを与える法会。
九月九日奉為おほみための―の夜」〈・一六二・題詞

み‐さいえ〔‐サイヱ〕【御斎会】

ごさいえ(御斎会)1

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精選版 日本国語大辞典 「御斎会」の意味・読み・例文・類語

ご‐さいえ‥サイヱ【御斎会】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 正月八日から七日間、大極殿(のちには清涼殿、御物忌の時は紫宸殿)に、衆僧を召して斎食(とき)を設け、国家安寧、五穀豊饒の祈願をした法会。盧遮那仏(るしゃなぶつ)を本尊として読経供養し、金光明最勝王経を講じた。神護景雲二年(七六八)以来、年中行事となったもので、のちに興福寺維摩会(ゆいまえ)、薬師寺最勝会とともに三大会の一つに数えられた。御斎講。おおみおがみ。さいえ。《 季語・新年 》
    1. 御<a href=斎会〈年中行事絵巻〉" />
      御斎会年中行事絵巻
    2. [初出の実例]「経律論疏第四〈略〉一部〈官御斎会時〉在彌勒堂」(出典:西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780))
    3. 「かたのやうにても御斎会(ごサイヱ)はあるべきにて、僧名の沙汰有しに」(出典:高野本平家(13C前)六)
  3. 衆僧に斎食を供養する法会。
    1. [初出の実例]「天皇崩之後八年九月九日奉為御斎会之夜夢裏習賜御歌一首」(出典:万葉集(8C後)二・一六二・題詞)

みさい‐え‥ヱ【御斎会】

  1. 〘 名詞 〙 正月八日から七日間、大極殿(のちに清涼殿)で、国家安穏、五穀豊穰の祈願をする法会。ごさいえ。

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改訂新版 世界大百科事典 「御斎会」の意味・わかりやすい解説

御斎会 (みさいえ)

〈ごさいえ〉〈おさいえ〉とも呼ぶ。宮中御斎会のこと。南都三会の一つ。新春の宮廷仏事として毎年1月8日から7日間,大極(だいごく)殿に斎(とき)を設けて本尊盧遮那仏,観音・虚空蔵の2菩薩,四天王像を安置し,《金光明最勝王経》を講説して国家の安寧を祈願した法会。創始については766年(天平神護2)説と768年(神護景雲2)説があるが,以後年中行事として恒例化し,〈年中行事第一の大事〉とさえいわれた。講師には前年興福寺維摩(ゆいま)会の講師を勤めた僧を充てることが839年(承和6)12月の勅で決まり,恒例化した。《延喜式玄蕃寮の項に詳細な規定があり,講師・読師・咒願師各1人,法用僧4人,聴衆25人のあわせて請僧32人と従僧34人によって構成されたという。読師は内供奉十禅師や智行具足の僧,聴衆は南都六宗の学僧を主体として,諸寺の学僧を請じて行われた。813年(弘仁4)には結願の14日に高徳学僧11人を紫宸殿に招いてさらに論義を行わせたが,これが恒例化していわゆる内論義(うちろんぎ)と称せられた。鎌倉時代以後,南北朝の抗争などで衰微し,室町時代に至って中絶した。当会に請ぜられた僧の衣躰の詳細については《延喜式》縫殿寮の項に規定がみえ,《雲図抄》には道場図が収められて盛儀のほどがうかがわれるが,僧に対する布施も莫大なものであったらしく,〈布施物を以て,殆ど一堂を建つ。近代の陵夷なり〉とさえ批判された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御斎会」の意味・わかりやすい解説

御斎会
ごさいえ

「みさいえ」ともいう。宮中で行われた法会。正月8日から14日までの7日間、国家安寧(あんねい)、五穀豊穰を祈って大極殿(だいごくでん)で僧に斎食(さいしょく)を供養(くよう)し、『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』を講ぜしめたもの。経の講始は680年(天武天皇9)と早いが、斎会の成立は768年(神護景雲2)称徳(しょうとく)天皇のときである。813年(弘仁4)にはこの法会の結願(けちがん)の日に天皇の御前で経文の論議を行う内論議(うちろんぎ)が設けられた。新年恒例の宮中行事であったが、室町時代に中絶した。維摩会(ゆいまえ)、最勝会(さいしょうえ)とともに南京(なんきょう)三会の一に数えられた。真言秘密の法会(ほうえ)である後七日御修法(ごしちにちのみしほ)と顕密(けんみつ)相対する。

[西山蕗子]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「御斎会」の解説

御斎会
ごさいえ

「みさいえ」とも。南都三会(さんえ)の一つ。また宮中の重要な年中行事の一つ。正月8日から7日間,宮中に僧を招いて大極殿(だいごくでん)などで「金光明(こんこうみょう)最勝王経」を講じて国家の安穏などを祈る。奈良時代に始まり,9世紀に入ると恒例の行事となり,内論義(ないろんぎ)と称する同経をめぐる問答形式の論義を加えた。また南都三会の講師(こうじ)を勤めた僧を已講(いこう)と称し,僧綱(そうごう)に任命される慣例もできた。室町時代になって途絶えた。

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世界大百科事典(旧版)内の御斎会の言及

【御斎会】より

…〈ごさいえ〉〈おさいえ〉とも呼ぶ。宮中御斎会のこと。南都三会の一つ。…

【御斎会】より

…〈ごさいえ〉〈おさいえ〉とも呼ぶ。宮中御斎会のこと。南都三会の一つ。…

【最勝会】より

…著名なものに毎年正月8日から14日の7日間にわたって行われた宮中大極殿の最勝会がある。これは宮中最勝会とか御斎会(みさいえ)と称せられ,《初例抄》では766年(天平神護2)より恒例化し,宮中での年中行事中,第一の大会といわれた。また薬師寺の最勝会は830年(天長7)6月薬師寺仲継の発議により当寺の教学興隆に資するため,檀主直世王の上奏により始められた。…

※「御斎会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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