日本大百科全書(ニッポニカ) 「徳地」の意味・わかりやすい解説
徳地
とくぢ
山口県のほぼ中央部、佐波郡(さばぐん)にあった旧町名(徳地町(ちょう))。現在は山口市の東部を占める地域。旧徳地町は、1955年(昭和30)出雲(いずも)、八坂(やさか)、柚野(ゆの)、島地(しまじ)、串(くし)の5村が合併して成立。2005年(平成17)山口市と合併。これにより佐波郡は消滅した。佐波川の中・上流を占め、農林業が盛んな地域。中世「得地(とくじ)」と称した国衙(こくが)領で、東大寺再建の用材を伐(き)り出した杣(そま)山地帯として知られた。当時杣人(そまびと)が利用した「野谷(のたに)の石風呂(いしぶろ)」、木材搬出用の「佐波川関水(せきみず)」は国の史跡に指定されている。近世は防長和紙の主産地であった。現在では滑山(なめらやま)国有林が良質のアカマツ材を産出する。島地にある月輪寺薬師堂(がちりんじやくしどう)は県下最古の平安末期の建造物で国の重要文化財。佐波川と島地川の合流部にある堀(ほり)は旧町時代は役場が置かれ、現在は山口市徳地総合支所の所在地で、ここを国道376号が東西に通じ、国道489号が分岐し、さらに中国自動車道の徳地インターチェンジも設置されている。佐波川中流の大原湖や長者ヶ原一帯は県立自然公園。長者ヶ原には国立青少年自然の家がある。
[三浦 肇]
『『徳地町史』(1975・徳地町)』