卒都婆小町(読み)そとばこまち

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

卒都婆小町
そとばこまち

能の曲名。四番目物 (→雑物 ) 。各流現行。観阿弥作。ところは摂津の国阿倍野。ときは9月 (不定とも) 。高野の聖 (ワキ) が,都へ上る途中,卒都婆に腰掛けた乞食の老女 (シテ〈老女の面,縷水衣,女笠,杖〉) に会い,問答の末に,逆に説き伏せられる。老女は小野小町のなれの果てと名のり,身の上を語るうち,深草の少将怨霊がとりついて物狂いとなり,物着 (ものぎ) で,風折烏帽子長絹を着け,少将の百夜通いの様子をみせ,やがて本心に立返り,悟りの道に入ることを願う。小書 (こがき) に一度之次第,彩色 (いろえ) ,習留の演出がある。老女物の一つで,『玉造小町壮衰書』などを典拠とする。

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デジタル大辞泉の解説

そとばこまち【卒都婆小町】

謡曲。四番目物観阿弥作。卒都婆に腰を掛けて高野山の僧にたしなめられた老女小野小町が、狂乱の体となり、百夜通いのありさまを再現する。そとわこまち。
(卒塔婆小町)三島由紀夫戯曲をモチーフとする1幕の近代劇。昭和27年(1952)「群像」誌に発表。同年、長岡輝子の演出により文学座アトリエにて初演。「近代能楽集」の作品のひとつ。

そとわこまち【卒都婆小町】

そとばこまち

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百科事典マイペディアの解説

卒都婆小町【そとばこまち】

能の曲目。四番目物五流現行。観阿弥作。シテは100歳に及び乞食(こじき)となって放浪する小野小町。高野山の僧との舌戦,昔の述懐,百夜通いの果て死んだ深草少将の怨霊(おんりょう)にとりつかれての狂乱と,老女物ながら劇的緊迫感のある変化に富んだ能。

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世界大百科事典 第2版の解説

そとばこまち【卒都婆小町】

能の曲名。流派により〈そとわこまち〉〈そとわごまち〉とも読む。四番目物。老女物。観阿弥作。シテは老後の小野小町。高野山の僧(ワキ)が,道端の朽ちた卒都婆に腰をおろしている老婆(シテ)を見て,ほかの場所で休むように諭し,卒都婆は仏体そのものであるとその功徳を説いて聞かせる。ところが老婆は,僧の言葉に一つ一つ反論を加え,迷悟は心の問題で,世界は本来無一物と気付けば仏も衆生(しゆじよう)も隔りはないのだと論破するので,僧は恐れ敬う(〈問答・掛合・上歌(あげうた)〉)。

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大辞林 第三版の解説

そとばこまち【卒都婆小町】

そとわこまち【卒都婆小町】

能の一。四番目物。観阿弥作。年老いてみすぼらしい姿でさまよう小野小町が、鳥羽のあたりで卒都婆そとばに腰を下ろしていると高野山の僧がとがめる。小町は禅問答のあげくに錯乱する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

卒都婆小町
そとばこまち

能の曲目。四番目物。五流現行曲。観阿弥(かんあみ)の作。劇的な波瀾(はらん)に満ちた狂女物で、老女物として重く扱われる。高野山(こうやさん)の僧(ワキとワキツレ)が、津国(つのくに)(大阪府)安倍野(あべの)に着く。そこへ百歳に及び乞食(こじき)の境涯に落ちぶれた小野小町(シテ)が登場、人目を恥じつつ都を出てきたが、苦しいからと朽ち木に腰をおろす。僧は、それが仏体を刻んだ卒都婆であることに気づき、ほかで休むように説得するが、小町は逆に居直り、仏教論争のすえに僧を言い負かしてしまう。こうした会話のおもしろさを描いて、観阿弥は比類ない作家である。小町は「極楽の内ならばこそ悪(あ)しからめ、そとは(卒都婆に掛ける洒落(しゃれ))何かは苦しかるべき」と僧を嘲笑(ちょうしょう)する。名を尋ねられた彼女は、小野小町のなれの果てであることを語り、いまの身の上を嘆くが、突如狂乱状態となる。小町が課した百夜通いの、その最後の夜に死んだ深草少将の怨霊(おんりょう)が取り憑(つ)いたのである。少将の姿となってその苦難と死のありさまが再現されるが、やがて小町は仏道に心を寄せ、後世を願う態で終曲となる。昔は後半が違う展開であったことが、世阿弥(ぜあみ)の芸談『申楽談義(さるがくだんぎ)』によって知られる。なお三島由紀夫の『近代能楽集』の「卒塔婆小町」は、第二次世界大戦後の優れた戯曲の一つとされる。[増田正造]

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世界大百科事典内の卒都婆小町の言及

【小野小町】より

…《通(かよい)小町》は,小町に恋した深草少将が,100夜通えば望みをかなえてやるという小町のことばを信じて,通いつめた99夜目にはかなくなったという話で,美女の薄情・驕慢な性格を描いている。《卒都婆小町》は,朽ちた卒都婆に腰かけた乞食の老女が仏道に入る話であるが,その老女は深草少将の霊にとりつかれた小町のなれの果てであったという筋。また《関寺小町》は,関寺の僧が寺の近くに住む老残の小町から歌の道を聞くという物語であり,《鸚鵡小町》も,新大納言行家が関寺近くに老いた小町を訪ねるという筋になっている。…

【論義】より

…このうち最も例の多いのは中入に際して自分の正体を告げるもので,《高砂(たかさご)》《井筒(いづつ)》《野宮(ののみや)》《八島(やしま)》など全体の2割強を占めている。次いで,《通(かよい)小町》《松風》などの中心部にある物尽しが多く,本来の論義の形は《鵜飼》《卒都婆(そとば)小町》に見られる程度である。【松本 雍】。…

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