忌み(読み)いみ

精選版 日本国語大辞典 「忌み」の意味・読み・例文・類語

いみ【忌・斎・諱】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「いむ(忌)」の連用形の名詞化 )
    1. 神聖に対する禁忌。心身を清浄に保ち、けがれを避け慎むこと。斎戒
      1. [初出の実例]「卿等(いましたち)、天皇の世(みよ)に、仏殿・経蔵を作りて、月ごとの六(むより)の斎(イミ)を行へり」(出典:日本書紀(720)持統五年二月(北野本室町時代訓))
    2. ( から転じて ) 忌み避けるべきだとされていること。遠慮があること。はばかるべきこと。
      1. [初出の実例]「いかで対面給はらん、いみなき身なりせば、そのわたりにこそは物せめ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
      2. 「事のいみあるは、こたみは奉らじ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
    3. 死のけがれに対する禁忌。人の死後、喪にこもるべき一定の期間。喪中。喪。服(ぶく)
      1. [初出の実例]「故中務の宮の北の方うせ給ひてのち〈略〉御いみなどすぐしては」(出典:大和物語(947‐957頃)九四)
    4. 出産のけがれ、月経のけがれ等の血のけがれに対する禁忌。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    5. 陰陽道などに基づく方角や日の禁忌。方たがえ。物忌。
      1. [初出の実例]「いとつれづれなるを、いみもたがへがてら、しばしほかにとおもひて」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    6. いみだけ(斎竹)」の略。
      1. [初出の実例]「今日祭る神の恵はかねてより卯月のいみのさして知りにき〈藤原季経〉」(出典:六百番歌合(1193頃)夏上)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 けがれを清めた。神聖な。「忌服屋(いみはたや)」「斎殿(いみどの)」など。

忌みの語誌

「物忌み」「方忌み」などの語が平安時代から見られ、陰陽道の浸透によって、日常生活においてもさまざまな「忌み」が行なわれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「忌み」の意味・わかりやすい解説

忌み
いみ

穢(けがれ)を避け身を慎むことをいう。忌みには大別して二つの場合がある。一つは神事に関する忌みであり、他は死の忌みや女性の月事に対する忌みで穢とされているものである。清浄の忌みは他のものが近づくのを警戒して避けるが、穢の忌みのほうは、人々がそれに接触しないように注意する。神祭に携わる頭屋(とうや)の役を務める人などは禊(みそぎ)によって身を清め、他の人と合火(あいび)をしないように気をつける。昔は触穢(しょくえ)といって穢の忌みにかかったものは宮廷に入ることを許されなかった。火事にあった人なども焼亡の忌みといって穢とされていた。

 忌みに服する場合、その種類によってそれぞれ期間が決まっていた。村の祭りなどはそれが済めば一般の村人は忌みがはれるが、頭屋など神役につく者は任期期間1年なり半年なり忌みを守らねばならない。出産の忌みは以前産婦は75日とされていたが、のちには21日ぐらいの忌みにすることになった。そして生児は30日前後で忌み明き宮参りをした。男にも1週間か3日ぐらいの忌みがかかり、狩猟炭焼きまた漁労にも1週間従事しなかった。死の忌みは今日でも四十九日(しじゅうくにち)または三十五日に忌み明きをするのが普通となっている。

[大藤時彦]

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