急ぐ(読み)イソグ

デジタル大辞泉 「急ぐ」の意味・読み・例文・類語

いそ・ぐ【急ぐ】

[動ガ五(四)]
早く目的を達するように行動する。早くやろうとする。「完成を―・ぐ」「解決を―・ぐ」「―・いで仕上げる」
早く行き着こうとする。早く進む。「帰宅を―・ぐ」
気持ちがせく。「功を―・ぐ」
準備する。用意する。
「このごろはよろづ忘れて、このことを―・ぐ」〈かげろふ・中〉
[可能]いそげる
[用法]いそぐ・せく――「せくな、いそぐな、あわてるな」は意図的に類義の語を対比させた表現。◇「いそぐ」は、短時間で何かをしようとする意で、時間に重点があり、「せく」は、「あわてる」「あせる」に近く、気持ちに重点がある。だから「心せくままに帰路をいそぐ」の文では、両語の入れ替えは出来ない。◇「いそがば回れ」は、行動の早さを示す「いそぐ」の用法。「せいては事を仕損ずる」は、心が落ち着いていない状態を示す「せく」の用法。◇類似の語に「あせる」がある。思い通りに事が運ばなくて落ち着かない、焦慮する、いらいらする、の意。
[類語]急く急かす急き立てる追い立てる追いまくる

また・ぐ【急ぐ/速ぐ】

[動ガ四]待ちかねて急ぐ。はやる。
「いつしかと―・ぐ心をはぎにあげてあま河原を今日や渡らむ」〈古今雑体

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「急ぐ」の意味・読み・例文・類語

いそ・ぐ【急】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ガ五(四) 〙 早く目的を果たそうと心掛ける。
    1. したいこと、しなければならないことに早くとりかかる。また、早くしとげようとする。せいて事を行なう。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
      1. [初出の実例]「『いそぎ物へまかる』ときこえ給ひて」(出典:多武峰少将物語(10C中))
    2. 目的地に早く到着しようとする。
      1. [初出の実例]「からくいそぎて、いづみのなだといふ所にいたりぬ」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月三〇日)
      2. 「ウマニ ムチウッテ 〈略〉 isoida(イソイダ)」(出典日葡辞書(1603‐04))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ガ四段活用 〙 目的を果たすために処置や対応を早める。
    1. その目的を早く果たそうとする気持を態度行為に表わす。
      1. [初出の実例]「あかつきにはとく下りなんといそがるる」(出典:枕草子(10C終)一八四)
      2. 「ゆるくすべきことをいそぎて」(出典:徒然草(1331頃)四九)
    2. 物事を行なう準備を進める。用意する。したくする。
      1. [初出の実例]「正月の御さうぞくいそぎ給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)

急ぐの語誌

( 1 )形容詞「いそし(勤)」と同根。せっせと怠らず物事をすすめる意から、[ 二 ]の準備をする、用意をする意が生じた。
( 2 )「いそぐ」と「せく」は、何事かを早くしたいと思う気持を持つことにおいて共通するが、「いそぐ」はそれが具体的な行為に現われる意志的な行為であるのに対して、「せく」は、その気持を持つこと自体を指す。


また・ぐ【急・速】

  1. 〘 自動詞 ガ四段活用 〙 時を待ちかねて心がせく。心がはやる。あせる。
    1. [初出の実例]「何しかも 心も万多以(マタイ)けむ 百合花の さ百合花の 今朝咲いたる」(出典:催馬楽(7C後‐8C)高砂)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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