永正一三年(一五一六)九月二八日、武田信虎は扇山での駿河勢との合戦に敗れて恵林寺に引籠り、翌月帰陣した(高白斎記)。武田晴信(のち信玄)は当寺再興のため名僧の招聘に努めた。快川紹喜(大通智勝国師)は天文二二年(一五五三)頃「甲州大守」の招きで同門の天桂玄長が住持であった当寺に下向、その後住持となって弘治二年(一五五六)頃美濃
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山梨県甲州市にある臨済宗の寺。山号は乾徳山。1330年(元徳2)甲斐牧ノ庄の領主二階堂貞藤が,夢窓疎石を開山に招いて創建した。夢窓は隠遁を好む傾向があり,当地に隠棲したのである。夢窓は恵林寺在住2年にして鎌倉へ帰るが,後住者には古先(こせん)印元,竜湫(りゆうしゆう)周沢,絶海中津等多くの名僧が歴住したため,甲斐の中心的臨済宗寺院に発展した。室町時代には,五山十刹に次ぐ諸山の寺格を与えられていた。しかし1520年代に荒廃し,のち妙心寺派の明叔(みようしゆく)慶浚によって復興され,臨済宗妙心寺派寺院となった。その後同じ妙心寺派の禅に帰依していた武田信玄が,64年(永禄7)当寺に快川紹喜を招いて住持とした。この時信玄は,当寺を菩提寺にすると共に寺領300貫文を寄せ寺基を固めた。しかし武田氏が滅んだ82年(天正10),快川が織田信長に抗したため,寺は織田軍により焼き払われた。この時快川は山門に逃れたが,当寺に難を避けていた僧や老若100余人と共に焚殺された。炎の中で自若として禅定に入った快川が〈心頭滅却すれば火も自ずから涼し〉と唱え火定(かじよう)したことが伝えられている。武田氏滅亡後,徳川家康は恵林寺の復興を計り,快川の弟子末宗に命じて再興。江戸時代の朱印地は59石5斗である。現在,境内には武田氏の遺宝を集めた宝物殿があり,庭園は夢窓疎石の作と伝えられる池泉回遊式の名園。
執筆者:山本 世紀
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山梨県甲州市塩山(えんざん)小屋敷(おやしき)にある臨済(りんざい)宗妙心寺派の寺。乾徳山(けんとくざん)と号し、1330年(元徳2)甲斐(かい)牧ノ荘(しょう)の領主二階堂貞藤(さだふじ)が自邸を禅院に改め、夢窓疎石(むそうそせき)を招いて開山としたのに始まる。1582年(天正10)この寺が織田信長軍によって焼打ちを受けたとき、武田信玄(しんげん)に招かれて住持をしていた快川紹喜(かいせんしょうき)は、100余人の僧侶(そうりょ)とともに炎に包まれた三門楼上で「安禅不必須山水(あんぜんかならずしもさんすいをもちいず)、滅却心頭火自涼(しんとうをめっきゃくすればひもおのずからすずし)」と唱え、焚死(ふんし)した。そのとき四脚門を残して大部分の堂宇を失ったが、のち徳川家康により再興され、領主柳沢吉保(よしやす)にも保護を受けて復興した。1905年(明治38)ふたたび火災にあって焼失、現在の伽藍(がらん)は1913年(大正2)に再建したもの。境内には両袖(りょうそで)桜、横月梅、恵山水などの恵林十勝や、夢窓疎石作と伝える庭園(国指定名勝)がある。また四脚門(国指定重要文化財)、機山会(柳沢吉保)廟所(びょうしょ)、武田不動尊などのほか、重要文化財の太刀(たち)、短刀など寺宝も多い。
[菅沼 晃]
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山梨県甲州市塩山にある臨済宗妙心寺派の寺。乾徳山と号す。1330年(元徳2)二階堂貞藤が夢窓疎石(むそうそせき)を開山として建立。後住に絶海中津(ぜっかいちゅうしん)ら名僧があいついだため,甲斐臨済宗の中心として発展した。1564年(永禄7)には,武田信玄が快川紹喜(かいせんしょうき)を招いて菩提寺としている。武田氏滅亡時には,織田軍の攻撃によって快川ら100余人の僧が山門楼上で焼死。のち徳川家康により復興された。安土桃山時代の四脚門は重文。「恵林寺領検地日記」をはじめ,多数の文書を所蔵。
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…中世の甲斐は文化の面でも鎌倉と関係が深く,著名な禅僧が入国したり,日蓮が身延山を開いたりした。臨済宗は13世紀の後半,二度にわたって甲斐に流された鎌倉建長寺開山宋僧蘭渓道隆(らんけいどうりゆう)によって基礎が築かれたが,1330年(元徳2)夢窓疎石が笛吹川上流牧荘に恵林寺(塩山市)を,その半世紀後抜隊得勝(ばつすいとくしよう)が塩山のふもとに向嶽寺(同)を建て,ますます繁栄におもむいた。また日蓮は,1274年(文永11)甲斐源氏の一族波木井実長の招きを受けて身延の地に久遠寺(くおんじ)を建てた。…
※「恵林寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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