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意識の流れ いしきのながれstream of consciousness

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

意識の流れ
いしきのながれ
stream of consciousness

W.ジェームズの言葉で,"The Principles of Psychology" (1890) で用いられた。彼によれば,意識は絶えず変化していながら同一の人格的意識を形成しており,そのなかでは意識もしくは思惟は連続したものと感取されている。この変化しつつ連続している状態を彼は意識 (あるいは思惟) の流れと呼んだ。この流れには,われわれの思考の主題をなす停止した実質的部分のほかに,流れの力動性を支配する推移的部分と暈 (かさ) もしくは辺縁があり,暈の有無によって意識状態は感情と思惟とに区別される。彼の意識の流れの思想はやや遅れて発表された H.ベルグソンの純粋持続や E.フッサールの体験流の思想と深い近似性をもっている。文学では,従来の古典的小説の筋,性格,時間の枠を無視し,絶えず流動変化する人間の意識を根源的リアリティと考え,それを表現しようとする 20世紀小説の手法をいう。 J.ジョイスの『ユリシーズ』 (1922) の最後の部分は登場人物の一人ブルーム夫人の意識の流れ,内的独白を 40ページ以上にわたり句読点のない文章で表現したものとして有名である。この手法を用いたおもな作家には,D.リチャードソン,V.ウルフ,W.C.フォークナーらがいるが,すでに 18世紀の中期に L.スターンが『トリストラム・シャンディ』 (1759~67) で同種の試みを行なっており,19世紀末に E.デュジャルダンの『月桂樹は伐られた』 (1888) がある。

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デジタル大辞泉の解説

いしき‐の‐ながれ【意識の流れ】

stream of consciousness》米国の心理学者W=ジェームズの用語で、とどまることなく絶えず流動していく人間の意識の動きのこと。文学上では、人間心理を解明する新しい鍵として、20世紀初頭の作家ジョイスウルフプルーストらの描写の対象となった。

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百科事典マイペディアの解説

意識の流れ【いしきのながれ】

流動する心理の統一的把握(はあく)を説くW.ジェームズの用語。stream of consciousnessの訳。20世紀の作家が人間の内的現実を追求して,生起する心象,記憶をそのまま描写する手法として用いた。
→関連項目意識王蒙心理小説響きと怒りミラーリチャードソン

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世界大百科事典 第2版の解説

いしきのながれ【意識の流れ stream of consciousness】

アメリカの心理学者ウィリアムジェームズ造語で,意識を静的,要素的なものとする考え方を否定し,意識を〈流れ〉としてとらえるべきことを主張した。19世紀末から20世紀初めにかけて,人間意識の深層に対する興味が強まり,西欧文学の手法としての〈意識の流れ〉が用いられはじめる。ウィリアムの弟ヘンリー・ジェームズの小説には,この手法の片鱗がみとめられる。それは19世紀の心理主義小説とは異質のものである。たとえば恋愛心理の複雑な屈折陰影をいくら精密に分析・表現しても,それは〈意識の流れ〉の文学にはならない。

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大辞林 第三版の解説

いしきのながれ【意識の流れ】

ウィリアム=ジェームズの心理学の用語。常に生成・変化する意識を統一的な流れとして総合的に把握すべきだとする説。文学上では、 J =ジョイス、 V =ウルフ、 W =フォークナーなどにみられる内面描写の手法。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

意識の流れ
いしきのながれ
stream of consciousness

文学用語。作中人物の心理の動きをできる限り直接的に表現しようとする実験的な手法をさす。主として20世紀モダニズム文学の作家たちが用いた。名称の由来は、ウィリアム・ジェームズが『心理学原理』(1890)のなかで、人間の意識は断片的な塊(かたまり)をつなぎ合わせたものではなくて、いつも切れ目なしに流れているのだから、「思考、意識、または主観的生命の流れ」とよぶのがいいと主張したことによる。イギリスの女流作家メイ・シンクレアMay Sinclair(1863―1946)が、ドロシー・リチャードソンの連作『巡礼』(1915~1938)を評してこのことばを用いたのが定着した。作中人物の独白体を用いる点では内的独白(internal monologue, monologue intrieur)の一種であるが、思考を劇的にまたは論理的に整理して説明するのではなく、知覚、印象、感情、記憶、連想、知的思考など、意識の働きのいっさいを、生成消滅のままに、論理的な脈絡にとらわれずに表現する。文頭の大文字、句読点などの表記上の約束や、統語法はしばしば無視される。
 心理の動きを正確に写実的に表現しようとする点では、リアリズム小説が到達した一つの帰結であるといえるが、ことばによって整理される前の意識の状態を提示しようとする点では、本来表現しえないものを表現する試みであり、リアリズムを超えるものを目ざしている。ことばが意味伝達の役割から解き放たれて、独自の機能を営み始める動機がここに生じる。この手法を用いた代表的な作家には、前記リチャードソンのほか、エドゥワール・デュジャルダンdouard Dujardin(1861―1949)、バージニア・ウルフ、ウィリアム・フォークナーらがいるが、もっとも典型的な例としては、ジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』(1922)最終章における、人妻モリーの夢うつつの独白をあげることができる。[高松雄一]

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