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慢性副鼻腔炎(蓄膿症) まんせいふくびくうえんちくのうしょうChronic Sinusitis

家庭医学館の解説

まんせいふくびくうえんちくのうしょう【慢性副鼻腔炎(蓄膿症) Chronic Sinusitis】

◎くり返される感染で慢性化
[どんな病気か]
 鼻腔(びくう)は常に外気にさらされているため、感染がおこりやすい状態にありますが、人間の鼻は、このような感染がおこらないようにするしくみをもっています。鼻の粘膜(ねんまく)の上には粘液層(ねんえきそう)があって、細菌などの侵入を防いでいます。
 しかし、かぜなどのウイルス感染症によって粘膜が障害されると抵抗性がなくなり、そこに細菌が二次的に感染し、炎症がひどくなります。
 そして、炎症による反応がおこり、副鼻腔(図「副鼻腔のいろいろ」)に膿(うみ)がたまってきます。
 副鼻腔の炎症は、急性期に治療すれば、ほとんどは治癒(ちゆ)しますが、治療しないで放置すると、慢性副鼻腔炎となります。
 炎症にともなう分泌物(ぶんぴつぶつ)、細菌、死んだ細胞からは、組織を障害する多くの物質が放出されるので、ますます粘膜は障害されていき、より高度の副鼻腔炎となります。
 また、副鼻腔粘膜の病的な変化が長期間続くと、鼻茸(はなたけ)(鼻ポリープ(「鼻茸(鼻ポリープ)」))が発生します。
[症状]
 鼻炎(びえん)をともなっていることが多く、また鼻茸などで空気の通り道が塞(ふさ)がれるため、鼻閉(びへい)(鼻づまり)がもっとも出現しやすい症状となります。
 さらに、炎症の持続によって粘膜からの分泌も過剰(かじょう)な状態になり、鼻汁(びじゅう)(鼻漏(びろう))、後鼻漏(こうびろう)(鼻汁がのどのほうに降りる)などが現われます。
 人によっては、嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)(においがわからない)、頭痛、頭重感(ずじゅうかん)などがおこることもあります。
 長期間、慢性副鼻腔炎が続くと、慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)、気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)などの下気道(かきどう)の病変をひきおこすことがあります。これを副鼻腔気管支症候群(ふくびくうきかんししょうこうぐん)(「副鼻腔気管支症候群」)といい、副鼻腔炎の症状のほか、せきやたんで苦しむことにもなります。
[原因]
 副鼻腔は、非常に狭い孔(あな)(自然口)を介して鼻腔と通じているので、炎症がおこってこの孔が閉鎖(へいさ)されると、副鼻腔内の細菌感染は長期化して、膿汁(のうじゅう)が停滞(ていたい)し、副鼻腔内の粘膜が炎症性の変化をおこします(急性副鼻腔炎)。
 この急性副鼻腔炎の多くは自然に、また治療で軽快しますが、一部は、感染がくり返され、粘膜の炎症性変化が慢性化し、非可逆的(ひかぎゃくてき)(再び元の状態にもどらなくなる)なものになっていきます。このようにして慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症(ちくのうしょう)がおこってきます。
[検査と診断]
 通常のX線検査である程度の診断はつきますが、病変の部位や程度をさらに詳細に知るためにCTが必要です。
 近年、アレルギーをともなう慢性副鼻腔炎が増加しているので、ぜんそくを含めたアレルギー傾向の有無も調べておきます。これは、アレルギーの有無が、手術後の治癒過程に大きな影響を与えるからです。
 また、鼻腔の通り具合(通気度(つうきど))の検査、嗅覚検査などを行ない、自覚症状と総合して診断します。
◎重症度により治療法が異なる
[治療]
 軽度の場合や、中等度でも症状が比較的軽かったり、発症してからの経過期間が短いようなら、鼻汁の吸引や上顎洞洗浄(じょうがくどうせんじょう)、ネブライザー(噴霧器)で抗生物質などの薬を鼻に噴霧する局所治療、薬を内服する薬物療法などの保存的治療を行ないます。
●薬物療法
 消炎作用や膿を溶かして排出(はいしゅつ)させる作用のある消炎酵素剤(しょうえんこうそざい)のほか、最近では、免疫(めんえき)機能を向上させたり、鼻からの分泌物を抑制する効果のあるマクロライド系抗生物質がよく用いられています。
 マクロライド系抗生物質は、少量を3~6か月間ほど長期間使用します。この薬の登場で、副鼻腔炎の薬物療法がかなり向上したといえます。
 そのほか、粘膜の線毛(せんもう)のはたらきを活性化させ、膿の排出を促す線毛機能改善剤なども使用されています。
 これらの効果的な薬があるため、軽度の慢性副鼻腔炎なら3~5か月程度で症状が改善します。
●手術
 中等度でも症状の強い場合や病変が高度の場合は、手術が必要になります。また、病変が中等度でも、保存的治療を半年間続けても治らない場合には、手術を行ないます。
 従来は慢性副鼻腔炎に対しては、経上顎洞的副鼻腔手術(けいじょうがくどうてきふくびくうしゅじゅつ)が主流で、現在でも行なわれていますが、後遺症(こういしょう)の問題もあって、理想的な手術とはいえません(コラム「経上顎洞的副鼻腔手術の後遺症」)。
 一方、鼻の孔(あな)から行なう鼻内的副鼻腔手術(びないてきふくびくうしゅじゅつ)は、経上顎洞的副鼻腔手術と比べると、手術を受ける人にかかる負担が軽く、慢性副鼻腔炎を生理的な治癒(ちゆ)へと導く、より自然な治療といえます。この手術は、現在では内視鏡(ないしきょう)を使って行なうので内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ないしきょうかびないふくびくうしゅじゅつ)と呼ばれます。
 実際には、鼻の孔から内視鏡と鉗子(かんし)類を挿入し、篩骨洞(しこつどう)を開放し、さらに上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞(ぜんとうどう)と大きく交通をつけるとともに病変を切除します。外切開(がいせっかい)をしないので、術後に顔が腫(は)れることもありません。全身麻酔(ぜんしんますい)でも局所麻酔(きょくしょますい)でも行なえ、どちらにするかは、手術を受ける人が決めます。
 入院期間は、両側の手術を行なって10~12日間ですが、病変が軽度であったり、小さかったりする場合は、日帰りの手術も可能です。
 この手術は、粘膜をすべて取り去るのではなく、多少、肥厚(ひこう)している箇所が残っても空気の通り道を確保し、加湿(かしつ)、集塵(しゅうじん)、嗅覚(きゅうかく)などの鼻腔・副鼻腔の機能を温存して回復させるように工夫されています。病変のある副鼻腔の孔を広げ、通気の改善と膿などの排泄(はいせつ)をはかり、副鼻腔内の粘膜を正常化することを目的とした手術です。
 実際には鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)(「鼻中隔弯曲症」)などをともなうことが多く、この場合は弯曲の矯正術(きょうせいじゅつ)も同時に行ないます。
[予防]
 慢性副鼻腔炎を治癒に導くためには、術後治療も重要で、これが適切でないと副鼻腔炎の再発の可能性が高くなります。
 とくに鼻内的副鼻腔手術は、副鼻腔粘膜をできるだけ保存し、通気の改善と膿などの排出を促し、粘膜を正常に導く保存的な手術法なので、術後、感染などのいろいろな原因が加わって治癒が障害される危険性が大きく、術後に症状が改善したからといって、術後治療を怠ると再発の原因になります。そのことを念頭にいれて手術を受ける必要があります。
 術後は、少量のマクロライド系抗生物質を長期服用します。
 これで再発を予防でき、手術の成績も向上しました。
 なお、子どもの場合はまだ副鼻腔が発育期にあるので、できるだけ保存的な治療を行ないます。それでも効果のないときは、アデノイドの切除と鼻茸の切除を行なったうえで、保存的治療を継続します。このようにしてもなお症状が強い場合には、鼻内的な手術が行なわれます。
 子どものうちに副鼻腔炎を治しておけば、おとなになって再発しても、手術を受けなくてすむことが少なくありません。ですから、幼児・小児期での鼻の保存的治療は非常にたいせつです。

出典|小学館家庭医学館について | 情報