狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵,和泉両流にある。太郎冠者は,清水(きよみず)に参籠(さんろう)する主人の太刀を預かって供をするが,不覚にも眠ってしまう。その隙に都のすっぱが,太刀を青竹とすり換えてしまう。翌朝目を覚ました冠者は驚きあわてるが,青竹を隠し持って帰る道中,〈嫁が姑,小犬が親犬,渋柿が熟柿,山芋がウナギになるのを世上で成り上がりという〉と話し,主人の太刀もこのように青竹に成り上がりましたと示して,主人に叱られる。以上で終わるのが大蔵流の筋で,和泉流は,そこへ昨夜のすっぱが太刀を持って通りかかるので,主人が捕らえよと命ずると,冠者は悠々と縄をない,まちがって主人に縄をかけ,すっぱに逃げられるという筋。参籠の場所,成上りの話の実例などに小異もある。登場は主人,太郎冠者,すっぱの3人で,太郎冠者がシテ。太郎冠者のとぼけた話が聴きどころ。大蔵流はその部分だけで一曲を構成し,和泉流は後半が《太刀奪(たちばい)》《真奪(しんばい)》と同工異曲の筋立てになっている。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人が太郎冠者(シテ)に太刀(たち)を持たせ、鞍馬(くらま)へ参籠(さんろう)すると、冠者が眠っている間にすっぱ(詐欺師)が太刀を青竹にすり替えてしまう。目を覚まし驚いた冠者は竹を隠し持って帰途につき、山芋が饅(うなぎ)、蛙(かえる)が兜虫(かぶとむし)、燕(つばめ)が飛魚(とびうお)、嫁が姑(しゅうとめ)になるのを世間では成り上がるというなどと話しておき、この太刀も青竹に成り上がったと主人にみせる。主人はそれは盗人のしわざだと叱(しか)り、待つところへ、昨夜のすっぱが通りかかる。主人が捕まえ縄を命ずると、冠者はそれから悠々と縄を綯(な)い、いわれるままに後ろから主人にかける。喜んで逃げるすっぱを主従が追い込む。以上は和泉(いずみ)流の筋(すじ)で、大蔵(おおくら)流では太刀が竹杖(たけづえ)に成り上がったという冠者を主人が叱って終わる。成り上がり話をする冠者のとぼけた味わいが見どころである。
[小林 責]
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