成上り(読み)ナリアガリ

デジタル大辞泉 「成上り」の意味・読み・例文・類語

なり‐あがり【成(り)上(が)り】

成り上がること。また、その者。多く軽蔑の気持ちを込めるなどしていう。
[補説]狂言曲名別項。→成上がり
[類語]出世利達立身功名立身出世成り上がる栄進昇進昇格昇任栄達昇級昇段栄転累進特進格上げ進む身を立てる

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改訂新版 世界大百科事典 「成上り」の意味・わかりやすい解説

成上り (なりあがり)

狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵,和泉両流にある。太郎冠者は,清水(きよみず)に参籠(さんろう)する主人の太刀を預かって供をするが,不覚にも眠ってしまう。その隙に都のすっぱが,太刀を青竹とすり換えてしまう。翌朝目を覚ました冠者は驚きあわてるが,青竹を隠し持って帰る道中,〈嫁が姑,小犬が親犬,渋柿が熟柿,山芋ウナギになるのを世上で成り上がりという〉と話し,主人の太刀もこのように青竹に成り上がりましたと示して,主人に叱られる。以上で終わるのが大蔵流の筋で,和泉流は,そこへ昨夜のすっぱが太刀を持って通りかかるので,主人が捕らえよと命ずると,冠者は悠々と縄をない,まちがって主人に縄をかけ,すっぱに逃げられるという筋。参籠の場所,成上りの話の実例などに小異もある。登場は主人,太郎冠者,すっぱの3人で,太郎冠者がシテ。太郎冠者のとぼけた話が聴きどころ。大蔵流はその部分だけで一曲を構成し,和泉流は後半が《太刀奪たちばい)》《真奪しんばい)》と同工異曲筋立てになっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「成上り」の意味・わかりやすい解説

成上り
なりあがり

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人が太郎冠者(シテ)に太刀(たち)を持たせ、鞍馬(くらま)へ参籠(さんろう)すると、冠者が眠っている間にすっぱ(詐欺師)が太刀を青竹にすり替えてしまう。目を覚まし驚いた冠者は竹を隠し持って帰途につき、山芋が饅(うなぎ)、蛙(かえる)が兜虫(かぶとむし)、燕(つばめ)が飛魚(とびうお)、嫁が姑(しゅうとめ)になるのを世間では成り上がるというなどと話しておき、この太刀も青竹に成り上がったと主人にみせる。主人はそれは盗人のしわざだと叱(しか)り、待つところへ、昨夜のすっぱが通りかかる。主人が捕まえ縄を命ずると、冠者はそれから悠々と縄を綯(な)い、いわれるままに後ろから主人にかける。喜んで逃げるすっぱを主従が追い込む。以上は和泉(いずみ)流の筋(すじ)で、大蔵(おおくら)流では太刀が竹杖(たけづえ)に成り上がったという冠者を主人が叱って終わる。成り上がり話をする冠者のとぼけた味わいが見どころである。

[小林 責]

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